小説を作っていると、どうしても、文体という問題と比喩に技巧という問題に当面する。比喩が豊かであれば小説も膨らみ、ある面で深化し、イメージも豊かになる。
文体は作者の視点を決めたり、複数の視点を作ったり、世界視線をも表すようにでもできる。
これまでは読む側だけにいたので、書く側について、内容やストーリー以外のことはあんまり考えていなかった。
比喩力で言えば、夏目漱石と村上春樹は群を抜いている。かれらを越える比喩などあるものだろうか、と思う。それは、超人技であって、誰でもできるわけではない。東大にいくより難しい至難の技のように思える。
テレビ番組で、芸能人が作った「俳句」を添削するコーナーがある。見ていると、添削する人の解説と添削して削ったり、加えたり、助詞を替えるだけで、印象が一段とよくなる。それは生け花も同じで、プロがちょっといじると、花や草や枝がなんとも言えず、勢いとバランスと締まりを見せる。
その道のプロというのはすごいものだ。僕もこれから十年も続ければ、プロになれるだろうか。とりあえず、ひとつひとつ仕上げていくしかない。毎日4、5時間書いているのだが、脳が意外にも疲れるものだ。