いよいよウチのヤタも寝たきりになった。目は見えず、嗅覚も今やない。聴覚も衰えきっている。わずか触覚だけがあるのは水を飲む時にひげで感じるのか、水に浮いた大きな埃を除いて飲んでいるのでわかる。
まだ食欲はある。水は大量に飲む。
この頃は鳴き声で何をも求めているのか、わかるようになった。小さな鳴き声は「水」である。やや大きくなると「餌」である。びっくりするほど悲鳴の声が続く場合は、必死でうんちがしたいのである。
横になって、もがくように、腕で床をこするのは、たちあがりたいのだろうが、自分はたちあがれないという自覚がないからである。
毎晩真夜中に悲鳴が続くとこれまではこちらも起きてなんとか鳴き止むのをあれこれして介抱していたが、この頃は、放っておくことにした。
犬が老衰のようになっていくのは初めての経験なので、初め、どうしたらよいものかと思ったが、サインがわかってくると楽になった。
いつも犬を飼ってきたが、おそらくこれで終わりだろう。
未来はまだ長いが、ヤタが生きた年月をいきられるかわからない。こういうことにも決意 、覚悟がいるのかと改めて思う。