自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★白川郷でどぶろくを飲む

2011年10月17日 | ⇒トピック往来
 その酒のアルコール度は17度、ちょっと酸っぱさを感じる。杯(さかずき)で8杯飲んだ。足元が少々ぐらついた。16日(日)午後に訪れた岐阜・白川郷の鳩谷八幡(はとがやはちまん)神社の「どぶろく祭り」に参加した。

 世界遺産の合掌集落で知られる白川村。1300年続くとされる祭りは、秋の豊作を喜び、五穀豊穣を祈る祭り。酒造メーカーではなく、神社の酒蔵で造られるのがどぶろくだ。冬場に蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、春に熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁るため「濁り酒」とも呼ばれる。その年の気温によって味やアルコール度数に違いが生じる。暖冬だとアルコール度数が落ち、酸っぱさが増す。村内にはどぶろくを造る神社が鳩谷を含め3ヵ所あり、祭りは出来、不出来の品評会にもなる。だからつい飲み過ぎて、腰が立たなく人が多ければ多いほど、どぶろくを造る杜氏(とうじ)はほくそ笑むらしい。「杜氏みょうりに尽きる」と。どぶろく一升(1.8㍑)飲めば、間違いなく三日酔いだとか。そんな話をしてくれたのは、腰かけた境内の石段の隣に座った村の年配男性だった。

 午後3時半すぎ、参拝者がゴザに座って陣取る。神社の拝殿の軒下では、酒だるのふたが開けられ、「どぶろくの儀」がしめやかに営まれた。キッタテという酌用の容器にどぶろくが移されると、かっぽう着姿の地元女性が注ぎに回る=写真=。この白のかっぽう着がなんともまぶしい。つい、もう一杯と杯を差し出す。

 どぶろくが回り始めころ。境内のステージでは、「白川輪島」という芸能が子供たちによって披露された。「輪島出てから 今年で四年 もとの輪島へ 帰りたい 山で床とりゃ 木の根が枕 落ちる木の葉が 夜具となる・・・泣くな鶏 まだ夜は明けぬ 明けりゃお寺の 鐘が鳴る お前百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の 生えるまで」。哀調を帯びた労働歌なのだろう。もともとは素麺(そうめん)づくりの「粉ひき唄」が五箇山や白川に伝えられたといわれる。どぶろくの振る舞いは30分も経つと絶好調になった。

 浴衣を着こんで妙に日本語が上手なアメリカ人が斜め向かいに座った。顔を真っ赤にして、杯を重ねる。「ロッキー(山脈)でワインを飲んだ感じだ。オレはパッピーだ」とかっぽう着の女性に投げキッスをするほどテンションが高い。「相当ヤバイことになりそう」と周囲の案じる声が聞こえた。こうして天下の奇祭「どぶろく祭り」の終宴が近づいた。

⇒17日(月)夜・金沢の天気   くもり
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