自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★震災の関連死131人に 現場対策を看護師のプロ目線で

2024年08月30日 | ⇒ドキュメント回廊

  台風10号の進路図をみると、予報円のサイズは後半になるほど大きくなっている。これを見ると、台風が北東に進むほど暴れまくるのかと思ってしまうのだが、そうではないようだ。日本気象協会「tenki.jp」の解説によると、台風の強さや大きさとは無関係で、位置の誤差が大きくなることを示しているという。ということは、予報円のサイズが大きい台風10号はどこに進むのかよく分からない、気象予報士泣かせの気まぐれな台風だ。気象庁によると、石川県ではあす31日から9月2日にかけて大雨となる恐れがあり、台風の進路や勢力、雨雲の発達によっては警報級の大雨になるとの予報だ。

  このブログで何度か取り上げている能登半島地震で亡くなった人たちの「直接死」と「関連死」について。関連死かどうか判断する石川県と被災自治体による6回目の合同審査会(医師・弁護士5人で構成)が今月26日に開かれ、輪島市や珠洲市など5市町の21人を新たに認定するよう答申することを決めた。答申を受けた各市町の首長が正式に認定する。県内の関連死はこれで131人となり、家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死229人と合せて、震災の犠牲者は360人となる。(※写真は、能登半島地震の被災地と金沢の病院を往復する救急車=1月5日撮影)。

  地元メディアの報道によると、今回の関連死の事例として、入所施設で被災し断水や停電で十分な介助が受けられなかったり、自宅で被災し避難先での生活でストレスがたまり体力が低下して死に至ったケースがあったという。関連死の場合は相当な肉体的、精神的な負担をともなった場合が多い。熊本地震の場合、関連死の原因として▽地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的な負担▽避難所生活での肉体的・精神的な負担、が死亡の原因の69%を占めている(内閣府公式サイト「防災のページ」関連死について)。

  関連死を防ぐ対策はできないものだろうか。能登地震でこれまで問題となった、避難所における衛生的なトイレ利用や、避難者がストレスなく就寝できるスペースの確保など、高齢者が安心して暮らせる避難所の運営をプロの目線で配置できる人材が必要だろう。地元メディアの報道(30日付・北國新聞)によると、石川県は9月補正予算案に、県立看護大学が災害への対応力を備えた看護師の育成をする専門講座を開設する経費を盛り込んだ。

  看護の知識をベースに避難所運営や感染症予防や健康管理を関わるプロを養成する。関連死を防ぐ、まさに「災害看護師」だ。

⇒30日(金)午前・金沢の天気   はれ   

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☆まもなく2学期 新たな「仮設校舎」で学ぶ能登の子どもたち

2024年08月29日 | ⇒ドキュメント回廊

       「ノロノロ台風」なのか「グズグズ台風」なのか。当初の気象庁の予想では、台風10号が石川県に最接近するのは今月27日だったが、最新情報では遅れて31日から9月1日の見込みとなっている。さっさと日本列島から立ち退いてほしいものだ。

  それにしても、気が気でないのは能登半島地震の被災地の人たちではないだろうか。地盤沈下が起きた能登町宇出津港の周辺では、満潮を迎えると海面と道路の高さがほぼ同じになる状態が続いている=写真・上、7月9日撮影=。これに台風10号による高潮が発生したらどうなると地域の人たちは不安を抱えていることだろう。

  能登半島地震の復旧・復興の一つのステップとして、仮設住宅と仮設商店についてこのブログで取り上げた。被災地で必要な仮設住宅は6804戸で、うち6262戸は今月中に完成する予定。残り542戸は9月以降となる。仮設店舗は七尾市では今月、手始めに4店舗が営業を始めた。輪島市では9月をめどに3ヵ所で32店舗、珠洲市でも8店舗が開業に向け準備が進んでいる。もう一つの仮設が学校の校舎だ。

  石川県教委の調査(2月13日時点)によると、公立学校(小中高など)344校のうち、292校が地震で被害を受けた。全体の85%に相当する。地元メディア各社の報道によると、輪島市に隣接する穴水町の穴水小学校は柱が破損するなど、文科省による被災度区分判定で「半壊相当」の被害となった。このため、小学校の校庭に軽量鉄筋造り2階建ての仮設校舎の建設が進められていた。授業は直線距離で700㍍ほど離れた中学校に間借りするカタチで行われていた。

  仮設校舎は2学期に間に合わせるように今月下旬に完成した。先日(今月24日)奥能登を訪れた折に、仮設校舎に立ち寄った=写真・下=。外観はプレハブ校舎だが、入り口の戸が開いていたので入ると、玄関や教室はよく見る小学校の雰囲気だった。各クラスのほか、理科室や音楽室、保健室なども設けられていた。

  穴水小学校はきょうが登校日で、来月2日に始業式。仮設校舎とは言え、児童たちにとっては「母校」に戻った気分ではないだろうか。行政とすると、教育環境を整えると同時に新校舎の建設に向けてのスタートだろう。町では復旧・復興に向けてことし12月までに復興計画を、来年3月までに整備計画を策定する段取りだ。それまでに新校舎の立地場所などを決定することになる。

  能登地震の復旧・復興プロセスが穴水小学校のケースに凝縮されているようにも思える。

⇒29日(木)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

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★台風迫る 稲刈り前倒し、なぜ3割高い新米価格

2024年08月28日 | ⇒ドキュメント回廊

  金沢から能登方面を往復する自動車道路を走っていると、金沢など4市町にまたがる河北潟周辺に水田が広がっている。薄黄色に色づいた稲穂が風に揺れていた。稲刈りのコンバインが走っていた=写真・上、27日撮影=。ほかに数台走っていた。ふと思ったのは、コメが早生品種であったとしても、稲刈りとしてはちょっと早いのではないかと。そうか、台風10号の接近で収獲を前倒ししているに違いないとようやく気がついた。

  暴風雨となると、田んぼ全体で稲の倒伏が起きる。稲が倒れると、収穫作業が困難になり、収穫量や品質の低下を招くことになる。倒伏して穂が水につかった場合、籾(もみ)が発芽しまうからだ。台風が迫り、農家の人はいろいろと気を揉んでいるに違いない。

  いくらなんでも、3割アップは高すぎる。先日(25日)近所のスーパーに行くと、石川県産の品種「ゆめみづほ」の新米の販売コーナーが設置されていた。このコメは早生品種でいわゆる新米のトップランナー、例年この時期に店頭に並ぶ。今回は値段に驚いた。10㌔袋で4580円(税抜き)だ=写真・下=。何度か買ったことがあるのでこれまでの値段は覚えている。10㌔袋で3480円(同)だった。それが、1100円、3割も高くなっている。

  メディアも報じている。コメの卸売業者によると「ゆめみづほ」の出荷量は例年並みだが、全国的にコメが品薄になり、肥料も高騰していることから、価格が3割ほど高くなったという(今月24日付・NHKニュースWeb版)。言葉は適切ではないかもしれないが、これは先を見越した便乗値上げではないかと思ってしまう。非常に強い勢力の台風10号が間近に迫っている。冒頭で述べたように、稲の倒伏などが全国的に起きるとコメ不足に陥り、価格は上昇するだろう。それを見越した値上げではないか、と考え込んでしまう。

  9月上旬からは県産のコシヒカリなどもスーパーの店頭に並ぶので価格表には注視したい。さらなる値上げになるかもしれない。そうなると、まさに「令和の米騒動」だ。

⇒28日(水)夜・金沢の天気   くもり

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☆全半壊の家屋解体が正念場 見込より1万棟増え、台風の影響は

2024年08月27日 | ⇒ドキュメント回廊

  前回ブログの続き。石川県庁はきのう(26日)能登半島地震で全半壊した家屋の解体を加速させる、「公費解体加速化プラン」を公表した。これまで県は解体棟数を2万2499棟と想定していたが、9911棟多い3万2410棟に見直しをしたからだ。本来ならば、来年2025年10月で解体作業を完了するとのスケジュールも同時に見直すことになるが、それはせずに「加速化」を推進することで、帳尻を合わせるようだ。

  公費解体加速化プランによると、その加速化の中心となるのが「自費解体」だ。これまでメインで進めてきたのは「公費解体」だったが、自費解体との両輪で進めることで全体の作業のピッチを上げる。自費解体は全半壊の家屋を所有者が事前に自治体に届け出を行い、独自で解体作業を行う。かかった経費(解体費、運搬費、処分費)は各市町の算定基準で後日、償還される。(※写真は、輪島市の家屋解体現場=今月24日撮影)

  今回の公費解体の見込棟数の大幅な見直しは、県では2月に空中撮影と現地調査で被害状況の確認を行い、解体見込み数を2万2499棟と算定していた。ところが、4月末から受け付けた申請件数はすでに2万6774棟(8月19日時点)と大幅に上回ったことから、県は被害状況の見直し行っていた。

  県が想定する解体棟数を9911棟上乗せしたことで、災害廃棄物の量をこれまで244万㌧と推計していたが、これも大幅に上回る見込み。このため、廃棄物を一時的に置く仮置き場は現在、12の市町で計16ヵ所あるが、暫定的に6ヵ所増設し、追加の設置も検討しているという。

  話は飛ぶが、非常に強い勢力の台風10号が29日に九州に上陸し、石川県内は30日午後から31日午前にかけて最も近づく見込みだ。このため、輪島市は30日に予定していた市内の小・中学校あわせて12校の2学期の始業式を9月2日に延期することを決めた(26日付・NHKニュース)。この台風が解体作業の現場などにどのような影響をもたらすのか。

⇒27日(火)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

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★能登の被災現場 空調ベストで暑さしのぎ、マスクでアスベスト除去

2024年08月26日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震以来、初めて知った言葉は「公費解体」だった。全半壊した家屋については所有者の申請に基づいて、自治体が費用を負担して解体ならびに撤去をする。申請棟数は2万6003棟(8月12日時点)に上っていて、4月末から始まった公費解体の完了棟数は2594棟(同)、率にしてほぼ10%となる。石川県庁では2025年10月までに解体を完了する予定だが、あと1年2ヵ月で終えることができるのか、どうか。先日(8月24日)奥能登に所用があり公費解体の現場を何ヵ所か見ることことができた。

  日中は33度の真夏日だった。輪島市内で見た民家の解体現場での光景は、作業員が暑いにもかかわらず、ベストのようなものを着用していた。空調ファン付きの衣服だ=写真・上=。屋外工事の作業服として着用されている。空調服は背面にある半径5㌢ほどの2個のファンで風を取り入れ、汗が気化する際に体温を下げて冷涼感を生む仕組み。バッテリー付きだ。作業員の男性に着心地を尋ねると、「一度着たらやめられないね。空調服なしに夏場は仕事ができないよ」と、すがすがしそうな声で返事が返って来た。

  珠洲市内ではパワーショベルで半壊住宅の解体作業が行われていた。すごくホコリが舞っていた。2階の天井付近だろうか、黄色のアスベスト(石綿)がむき出しになっていた=写真・下=。作業員はアスベストを防ぐマスクや目を守るフェースガードを装着していた。また、粉じんが舞うのを防ぐために水をまきながら住宅の解体を行っていた。

  アスベストに関しては、厳しい規制がある。解体現場では石綿が建物に含まれているかどうかの事前調査や、含まれていた場合はマスクをしたり、飛散防止のための水まきが法律で義務付けられている。かつて、アスベストは耐火材や断熱材、防音材として家屋のいたるところで使用されていた。しかし、人の健康に被害をもたらす危険性があることから、1975年に一部使用が禁止されるなど法的な制限がされるようになり、2012年以降は全面的に使用禁止となっている。
 
  逆に言えば、1975年以前の建築物には大量のアスベストが使われていたわけで、解体現場の一線に立つ作業員のほか、近隣の住人も注意を払うべきだろう。そして、行政の注意喚起は行き届いているだろうか。
 
⇒26日(月)夜・金沢の天気    くもり
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☆奥能登ここに「現代集落」 衛星ネットでビレッジDXさらに進化

2024年08月25日 | ⇒ドキュメント回廊

  日本海を望む能登の山の中腹に「現代集落」はある。元日の能登半島地震で背後の山の一部は崩れてはいるものの、緑に囲まれた集落だ=写真・上=。半島の尖端・珠洲市真浦(まうら)地区で、いわゆる「限界集落」を「現代集落」へと再生するプロジェクトが進んでいる。きのう(24日)に久しぶりに現地を訪ねた。

  このプロジェクトは、金沢市内で貸切宿「旅音/TABI-NE」を経営する林俊吾氏や建築家の小津誠一氏らが立ち上げた。水や電気や食を自給自足でつくる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を「ビレッジDX」と位置付けている。そのキーワードが「シコウ」。「思考」を凝らし、「試行」錯誤し、自らの手で「施工」もする、そして「至高」の現代集落を創るとのコンセプトだ。同地区の空き家を活用して手造りで改装し、風力発電や有機農業、そしてリモートワークを手掛ける、そんな生活スタイルを目指している。

  現地を訪れると、ある住家の庭に四角のテーブルのようなものがあった。近くの人に訪ねると、衛星インターネットの「スターリンク」とのことだった=写真・下=。あのアメリカの実業家イーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」のインターネット。光ファイバーによるネット環境が整った都市部や平野部などとは違い、真浦地区は回線環境が整っていない。そこで、アンテナを設置するだけで高速インターネットが利用できるスターリンクはリモートワークをする人たちにとっては実に便利だ。

  「現代集落 / 真浦フィールド」の公式サイトは以下のように述べている。「わたしたちの問題意識は、たとえば『行き過ぎた資本主義』であり『都市の一極集中』です。この潮流のなかで人は100年後も本当に豊かに暮らせるのか?と、懐疑と不安を覚えています。わたしたちは『都市生活のオルタナティブ(代替生活圏)』を考えます。そのために『水や電気や食を自給自足できる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を、先人の知恵とテクノロジーで実現したい』。そう本気で考え、プロジェクトを立ち上げました」  

  この家には季節限定の「納屋カフェ」もある。農家の納屋を小ぎれいに改装した喫茶店。2階は仕事をする若者たちのワークスペースになっていた。今回のスターリンクの導入で、リモートワークも可能になった。地震で断水状態が続いているが、山の水を濾過して生活用水とする設備もまもなく完成する。まさに「ビレッジDX」に向けて着々と進んでいる。庭のテーブル板が、震災に見舞われた能登にとって希望の光のようにも見えた。

⇒25日(日)午後・金沢の天気    くもり時々あめ 

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★明かりのないキリコ、ガレキの境内 それでも祭りの心意気

2024年08月24日 | ⇒ドキュメント回廊

  輪島大祭を見学に行ってきた。これまで何度か学生たちを連れて「能登スタディ・ツアー」と称して能登の祭り文化に触れてきた。今回は震災のあった輪島でどのように祭りを開催するのかと急に思い立って、きょう(24日)現地へひとりで車で出かけた。

  輪島大祭は毎年8月22日から25日までの4日間、キリコ祭りが連日開催され、同市の奥津比咩神社、重蔵神社、住吉神社、輪島前神社の順で地域の人たちがキリコや神輿を担ぐ。輪島大祭の中日となるきょうは住吉神社の大祭だ。同神社に行く前に、23日に祭りを終えた重蔵神社に立ち寄ると、若い人たち10人ほどがキリコを担いだときに使った法被を天日で干していた。重蔵神社では神輿とキリコ9基が例年より短いコースで巡行した。「ごくろうさまでした」と声がけすると、東京から参加した祭りボランティアの男子学生だった。「震災があった輪島でキリコが担げたことは一生の思い出」と顔をほころばせていた。

  震災の影響でことしの大祭でキリコが出るのは重蔵神社だけと報じられていた(23日付・地元メディア)。ところが、住吉神社に行くと、神社の氏子の人から「ことしはキリコは出ないと聞いていたのですが、さきほど何とか1本は出そうということで若い衆が頑張ってくれているようです」と聞いた。午後6時から祭りの神事が始まったが、キリコ担ぎが決まったのは午後3時ごろ。地域の若い衆が「やっぱりキリコが出んと祭りにならん」と、3時間前に急きょ巡行が決まったようだ。金沢の避難先や仮設住宅からキリコ担ぎの仲間たちが集まって来て、「やれる」と判断したようだ。

  午後7時ごろ、若い衆が担ぐキリコが神社に到着した=写真・上=。ところが、キリコに明かりが灯っていない。周囲から暗くなったので明かりをつけてと声が上がった。世話役らしい人が「すみません。急に決めたものですから、キリコに備え付けるバッテリーの用意が間に合いませんでした」とわびていた。明かりのないキリコだったが、若い衆の威勢のよい掛け声が境内に響き渡っていた。

  住吉神社の境内は震災で本殿が全壊し、高さ7㍍もある総輪島塗の山車や曳山も倒壊、鳥居や石灯籠も倒れた。そんな中でも、若い衆がガレキの山をバックに祭り太鼓を披露していた=写真・下=。祭りを盛り上げる地域の若い衆の心意気が伝わって来た。

⇒24日(土)夜・金沢の天気     くもり   

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☆酷暑は続く37度 なぜ7階建てビルはゴボウ抜きで倒壊したのか

2024年08月23日 | ⇒ドキュメント回廊

  二十四節気の一つ「処暑」のころだが、暑さが和らぐどころか猛烈な暑さがきょうも続いている。金沢の自宅近くにある街路樹通りの気温計は「37度」を示していた=写真・上、午前11時51分撮影=。「暑さ寒さも彼岸まで」と伝えられているが、秋の彼岸の中日とされる秋分の日(9月22日)ごろまでに暑さが収まるのかどうか。

  元日の能登半島地震で、ある意味で震災のシンボルとなっているのが輪島市中心部で倒壊した漆器製造販売業「五島屋」の7階建てビルだろう。その倒れ方は壮絶だ。地面下に打ち込んで固定されていたビルの根っこ部分にあたるコンクリートと鉄による杭(くい)の基礎部分がまるでゴボウ抜きしたようにむき出しになっている。まったくの素人目線なのだが、バランスを崩して根っこから倒れた、そんなように見える=写真・下、2月5日撮影=。

  その五島屋ビルを解体する方向で動き出している。けさの新聞メディア各社の報道によると、公道の一部を塞いでいるビルの上層階部分から段階的に解体を進めていく。しかし、公費解体を進める輪島市役所によると、年内に着手はするものの、本格的な解体作業は年明け以降になるようだ。その遅れの理由となっているのが、ビルが倒れた原因についての調査だ。倒壊によってビルに隣接していた、3階建ての住居兼居酒屋が下敷きとなり、母子2人が犠牲となった。押しつぶされた店の男性店主はビル倒壊の原因の調査を国や市に求めていて、原因が明らかになるまでは撤去しないよう申し入れている。遺族の思いとすれば、ゴボウ抜きのような倒れ方に納得がいかないのだろう。

  一部報道によると、2007年3月25日の能登半島地震でもビルが揺れ、五島屋の社長は以来、ビルの耐震性を気にしていた。実際、地下を埋めて基礎を強化する工事も行っていた。それが倒壊したとなると、社長自身もビル倒壊に納得していないのではないか。

  7階建てのビルは築50年。なぜ、震度6強の揺れに耐えきれずに根元から倒れたのか。今後、調査によってビル倒壊の原因が分かってくれば、責任の所在もおのずと明らかになるだろう。現地では、国交省が外観や基礎部分の調査に着手し、近くボーリング調査などが始まる。

⇒23日(金)午後・金沢の天気   はれ

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★大統領選へダイナミックに「Yes、she can」 地味な人気争い自民総裁選

2024年08月22日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょう午後、金沢の天気は35度を超える猛暑日に。あすは37度になるとの予報も。このところ、近所の公園からは子どもたちの声が聞こえなくなった。猛暑続きで外出を控えているのか、それとも夏休みの宿題に追われているのか。

  アメリカのシカゴで開かれている民主党の全国大会の様子がきのう(21日)TVメディア各社で報じられていた。ハリス副大統領の大統領候補への指名が確定し、続いて元大統領のオバマ氏が演説。「ハリスこそが、国民のために力を尽くす候補者だ」と強調し、かつて自身の選挙戦でキャッチフレーズにしていた「Yes、we can」になぞらえ、「Yes、she can」と鼓舞し、会場を沸かせていた。大統領選に向けたアメリカ政治のダイナミックさを感じさせるシーンだった。(※写真は、カナダのテレビ「Global News」より)

   これに比べ、日本の総理を選ぶ自民党の総裁選(9月12日告示、27日投開票)はなんとも地味だ。立候補予定が11人という数になって、むしろ「小粒」感が否めない。かつて、派閥のトップが政策論争をけしかけて争った対立構図とは違う光景だ。そもそも、総裁選は衆院選で勝てる総理・総裁を選ぶという次なる大目標も控えているが、11人の立候補予定者はそれを意識しているだろうか。「人気候補選び」の総裁選のようなイメージだ。

  11人の中で、小林鷹之氏は19日に国会内で記者会見し、総裁選への立候補を表明した。メディアによると、政策面では経済政策を最初に挙げ、「世界をリードする戦略産業を育成する」と述べ、外交・安全保障政策では「日本にしかできない方法で世界をリードする」と訴えた。このほか、社会保障や憲法改正についても自らの政策を述べていた。では、「自然災害」「南海トラフ大地震」「能登半島地震」という言葉を発していただろうか。これは他人任せなのか。

  小林氏に限らず、ほか10人の立候補予定者にもぜひ日本の自然災害にどう国の政策として対応するのか、述べてほしい。具体的に言えば、今後30年以内に70%程度の確率で起こると推定されるマグニチュード7クラスの首都直下地震に対して、「災害緊急事態」を布告し、私権を制限する緊急政令を制定するのか、しないのか。この問いで、政治家としてのスタンスは大きく分かれるだろう。 

⇒22日(木)夜・金沢の天気    はれ

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☆「石垣の博物館」金沢城跡 サスティナブルな石垣修復

2024年08月21日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震の震源地・珠洲市と金沢市は直線距離にして120㌔ほど。揺れは能登で最大震度7、金沢は同5強だった。金沢での被災で目立つのは、石垣が崩落するなどした金沢城跡だろう。市街地の中心部に位置するので、なおさら目立つ。その金沢城跡の石垣の復旧作業が始まっている。

  兼六園の向かいにある国史跡の金沢城跡。県の調査では、地震で石垣の被害は28ヵ所に上り、うち江戸から昭和期にかけて造成された5ヵ所で崩落が起き、23ヵ所で壁面が膨らむなど変形した。崩れが起きた一つが、兼六園とつながる石川門の前の土橋石垣。高さ3㍍、長さ6㍍に渡って石垣が崩れた。損傷した箇所には足場などが組まれ、復旧作業の準備が進んでいた=写真・上、8月21日撮影=。

  落石した195個のうち、すでに165個を回収し、300㍍ほど離れた「いもり堀」園地に運ばれていた。地元メディアの報道によると、形状などから165個のうち、158個は元の配置場所を特定できたという。その場所を示す数字なのだろうか、回収した石にはナンバーが記されていた=写真・中、同=。

  別の所では、興味深い作業が行われていた。石川門とちょうど真反対にあたる、「数寄屋屋敷西堀縁」という場所。ここの石垣でははしごに上って5人の作業員が石と石の間に生えている草やツルなど抜いていた=写真・下、同=。看板には「石垣測量中」とある。読むと、「石垣復旧調査の測量をしています。3D計測及び写真撮影を行うため、石垣の掃除をしております。御協力をお願い致します。」とある。期間は「令和6年6月28日から令和7年3月7日まで」、発注者は「石川県金沢城調査研究所」となっている。

  以下は憶測だが、レーザーなどを使った精密な3D画像を撮影することで、今後石垣が崩落した場合でも石がどの配置場所にあったものなのかを特定するための作業なのだろう。期間が来年3月となっているので、金沢城跡の石垣をすべて3D計測するようだ。城郭は石の素材やカタチや大きさ、積み方、そして年代など実に多様性に富んでいて、「石垣の博物館」とも称される。文化財の保全、それは復旧を持続可能なカタチで行うことなのだろう。

  事業主体の石川県では、崩れた石垣の復旧に3年から5年、石垣のはらみなどの修正に少なくとも15年程度かかるとしている。

⇒21日(水)夜・金沢の天気    はれ

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