自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

2024年11月30日 | ⇒ニュース走査

  プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。けさのNHKニュースによると、プラスチックによる環境汚染の防止に向け初めてとなる国際条約の案をまとめる政府間交渉委員会が、今月25日から韓国・プサンで行われている。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万トンと20年で2倍以上に増えるなど深刻なことから、各国はプラスチックによる環境汚染を防ぐため国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議し、今回の政府間交渉委員会で条文案の合意を目指している。

  交渉委員会のバジャス議長は29日に新たな条文の素案を示した。この中で、生産量の規制については2つの選択肢を示した。1つはプラスチックの生産量を持続可能なレベルにするため世界的な削減目標を設け、各国が生産量や、目標達成のために行った対応を報告するというもので、もう1つはプラスチックの原料となる石油を産出する産油国などが規制に強く反対していることを踏まえ生産量の規制については条約に盛り込まないとしている。そして、プラスチック製品についてゴミとして散乱したり環境中に流出したりしやすいものや再利用やリサイクルが難しいものは各国が削減や禁止などの対応をとるといった内容も盛り込まれている。プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向では一致している。

  以下は、日本海側に住む一人としての希望だ。沿岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。(※図は、日本海の海流の流れ。能登半島に沿岸国からの漂着ごみが流れ着く)

  データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。2022年にはロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の不法投棄は国際問題だ。(※写真は、海の環境問題をテーマにしたインドの作家スボード・グプタ氏の作品「Think about me」=2021年・珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」)

  なので、日本海の沿岸国である日本、ロシア、韓国、北朝鮮、中国の5ヵ国で汚染対策条約がつくれないだろうか。

⇒30日(土)午後・金沢の天気   あめ

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☆冬の訪れは雷鳴と氷あられ  子どものSNS環境めぐり規制の動き

2024年11月29日 | ⇒ドキュメント回廊

  けさ雷鳴とともに叩きつけるような氷あられが降ってきた。屋根にあたる音がバシバシと強烈だった。しばらくして雨になった。氷あられが降ったのは午前6時すぎ、その後、午前9時40分ごろに自宅の庭に出ると、氷あられがところどころに残っていた=写真=。見ると、1㌢四方の大きさのものもある。午前6時に降ってきたのはそれより大粒だったろう。歩行者にけがはなかっただろうか、農家のハウスは大丈夫だったのか、などと考えてしまった。その後も金沢では雨が降り続き、いまも大雨警報が出されている。

  話は変わる。NHKニュース公式サイト(29日付)によると、オーストラリアの議会は、16歳未満の子どもがSNSを利用することを禁止する法案を可決した。アルバニージー首相は29日朝、記者会見を行い「今回の法律で親と子どもの会話が変わり、その変化はオーストラリアの子どもたちにとって害を少なくし、より良い結果をもたらすことになる」として、子どもと保護者のための法律だと述べた。この法律は、SNSの運営会社に16歳未満の子どもが利用できないような措置を講じることを義務づけるもので、違反した場合は最大で4950万オーストラリアドル、日本円でおよそ49億円の罰金が科される。保護者や子ども自身への罰則はない。

  オーストラリアでは近年、子どもたちがSNSにのめり込み、日常生活や心の健康に悪影響が出ることへの懸念が高まっているほか、悪質ないじめにあったり、性被害にあったりする事態が相次ぎ、保護者を中心に規制を求める声が高まっていた。

  オーストラリアだけでなく。フランスではSNSの運営会社に対して、保護者の同意がないかぎり、15歳未満の子どものアクセスを制限するよう義務づける法律が制定している。また、アメリカの一部の州でも、未成年のSNS利用を規制する法律を制定していて、ユタ州などでは未成年がSNSを利用する際には保護者の同意が必要となる(29日付・NHKニュース)。

  一方、イギリスBBC公式サイト日本語版(11月7日付)によると、オーストラリア最大の子供の権利擁護団体のひとつ、「オーストラリア子供の権利タスクフォース」は、この禁止措置を「あまりにも乱暴な手段」と批判している。同団体は10月に政府に公開書簡を送付。100人以上の学者と20の市民団体が署名したこの書簡はアルバニージー首相に対し、禁止措置に代えてSNSに「安全基準」を課すことを求めた。同団体はまた、国連の助言を引用し、オンライン空間を規制するための「国家政策」は、「子供たちがデジタル環境と関わることで利益を得る機会を提供し、その安全なアクセスを確保することを目的とすべきだ」と指摘した。

  政府が子どもたちのSNS環境そのものを規制するのか、あるいは規制せずにSNSに安全基準を課すことでアクセスを確保するのか。デジタル化が進む世界の情報環境にあって、争点として浮上している。

⇒29日(金)夜・金沢の天気     あめ

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★震源は能登半島を南下してくるのか 連動する活断層の不気味さ

2024年11月28日 | ⇒ドキュメント回廊

  前回ブログの続き。今月25日付のブログ『☆能登地震による液状化で電柱同士が接触し発火 これはレアケースなのか』を読んでくれた金沢の知人から、きのうメールがあった。「(26日の)震度5弱の地震で傾いて今にも倒れそうになっている電柱が内灘にある。危なっかしくて道路を通るのも不安になる」と。知人は内灘町の企業に勤めている。きょう現地を見に行った。

  危なっかしい電柱がある場所は内灘町室地区の県道沿い。同町では元日の能登半島地震による震度5弱の揺れと液状化被害で全半壊の住家が686棟にも及んでいる。今月25日付ブログは、傾いた道路の電柱が地盤の液状化でさらに傾き、隣接する工場敷地内の電柱との電線が接触して発火したと書いた。危なっかしい電柱は発火した電柱と同じ県道沿いにあり、わりと近い。その傾き加減は素人目線で15度から20度はあるかもしれない=写真=。傾きが以前より大きくなったのは、ここ数日の雨と26日の地震の影響なのだろうか。この周囲の電柱もこれほどではないが軒並み傾いている。このまま倒れば人身事故になりかねない。

  それにしても気がかりなのは、今月26日の震度5弱の揺れなど、このところ能登で頻発している地震の震源が元日の半島尖端から南下していることだ。地元メディアの報道によると、地震学者のコメントとして、元日の地震で動いた断層とは別の「羽咋沖西断層」が震源の可能性があるとしている。元日の震源は半島尖端の珠洲市だったが、このところの地震は半島の真ん中の羽咋市の沖に位置する。さらに南下すると金沢に限りなく近いづいてくる。

  金沢には「森本・富樫断層」がある=図=。国の地震調査研究推進本部の「主要活断層」によると、切迫度が最も高い「Sランク」が全国で31あり、その一つが森本・富樫断層だ。断層は全長26㌔におよび、今後30年以内の地震発生確率が2%から8%とされる。金沢市の公式サイトに掲載されている「平成24年度(2012)被害想定調査結果」によると、この森本・富樫断層で金沢市内中心部に直下地震が起きた場合、マグニチュード 7.2、最大震度7と想定されている。地震は連動する。連動しながら南に降りてくるのか。じつに不気味だ。

⇒28日(木)夜・金沢の天気    あめ 

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☆能登の地震いつまで続く 震度5弱、四国から東北まで揺らす

2024年11月27日 | ⇒ドキュメント回廊

  昨夜は午後10時00分過ぎに帰宅。アルコールが入っていたせいもあり、ゆったりと寝ようか思っていた矢先の午後10時47分ごろ、スマホの緊急地震速報が鳴り響き、同時にグラグラと揺れが来た。あわててリビングに行き、テレビのNHK速報をチェック。「能登地方で最大震度5弱を観測する地震」「震源地は石川県西方沖で、震源の深さは10㌔、マグニチュードは6.4と推定」のテロップが流れていた。自宅がある金沢は震度3だった。その後、速報値は更新され、震源の深さは7㌔、マグニチュードは6.6となっている。

  揺れの中心にあたる震央が志賀町にある志賀原発と向き合っている位置にあり、津波は大丈夫か、原発施設への被害はないかなどと案じていたが、「北陸電力によると、停止中の志賀原発1、2号機に異常は確認されていない。また、敷地外の放射線量を監視するモニタリングポストの値に変化はみられない」「沿岸で若干の海面変動があるものの、津波被害の心配はない」とのコメントが流れていた。

  ただ、元日の地震では午後4時6分ごろにマグニチュード5.5、震度5強の揺れがあり、その4分後の4時10分にマグニチュード7.6の地震が2回連動して起きて震度7の大きな地震となったので、今回もそのケースで前触れの地震後に本震がくるのではないかとしばらく身構えていた。1時間余り経って、ようやく寝付いた次第。

  けさのメディア各社の報道をチェックすると、昨夜の地震で震度1以上の揺れは四国から東北へと広範囲で観測されている(※各地の震度図は気象庁公式サイトより)。能登半島で震度5弱以上を観測したのは、ことし6月3日の5強の地震が発生して以来となる。気象庁は元日の地震以降も周辺では地震活動が活発になっていて、今後も強い揺れが起きる可能性があるとして、注意するよう呼びかけている。

  もう一点、今回の地震で気になっていることがある。最大震度5弱は輪島市門前町走出と志賀町香能で観測された。この2地点は海岸沖の震源から20㌔ほどと近くだった。ところが、この2地点は元日の地震で最大震度7が観測された地点でもある。震源の半島の尖端、珠洲市からおよそ45㌔離れていたにもかかわらず、最大震度だった。震源地の珠洲市や近隣の能登町は震度6弱から6強だった。震源地から遠方のポイントが揺れが大きくなる。このメカニズムはどうなっているのだろうか。

⇒27日(水)午前・金沢の天気    くもり時々あめ

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★国史跡の「利家とまつ」前田家墓所の石灯篭など100基倒壊 本格復旧へ調査始まる

2024年11月26日 | ⇒ドキュメント回廊

  グラグラと金沢の自宅が揺れた。午後10時47分ごろ。NHK速報によると、輪島市門前町走出と志賀町香能で震度5弱、金沢で震度3だった。震源は能登半島の西方沖でマグニチュードは6.4だった。輪島市門前町走出と志賀町香能 は元日の地震で震度7を観測した地点だ。

              ◇

  前回ブログの続き。元日の能登半島地震の影響はさまざまな場所で起き、そしてさまざまなケースがある。金沢には野田山墓地があり、山頂から山腹にかけて墓石が並ぶ。年代物と思われる古いものや最近のものまでさまざまだ。金沢の山沿いは震度5弱だった。野田山墓地を見渡す限りでは、地震で崩れている墓石はさほどないよう見える。ただ、よく見ると墓石がズレていたり、石塔の一部が欠けたりしているものも多くある。                                  

  中でも目立って石灯篭などが倒れていたのが、国の史跡でもある「加賀藩主前田家墓所」だった。加賀百万石の礎を築いた前田利家の墓碑や、横にある正室まつの墓碑は無事だったが、両墓碑の入り口などにある石灯篭の笠の部分が崩れたりしていた=写真、1月14日撮影=。金沢市文化財保護課の調査によると、前田家墓所全体では石灯篭を中心に100基余りの石像物が倒れたり、割れたする被害が確認されている(26日付・地元メディア各社の報道)。このうち、まつや2代藩主利長などの墓にある石灯篭6基については5月末に石工職人が滑車で起こするなど復元作業を終えている。

  現地の看板「野田山墓地由来記」によると、野田山墓所は天正15年(1587)に利家が兄・利久をこの地に葬ったことから墓地としての開発が進み、慶長4年(1599)には利家がまつられ、以降14代藩主と正室ら家族の墓地となった。前田家墓所の墳墓は84基あり、全体で敷地面積が8万6千平方㍍にもおよぶ。文化財の価値を保全するためには、建立当時と同じような石材や工法が求められるため、金沢市では文化庁の担当者らと協議を重ねながら、倒壊した石像物などの本格復旧をめざし調査を進める。このため、同市では12月補正予算案に3510万円を計上した。「利家とまつ」前田家墓所の復旧作業がこれから本格的に始まる。

⇒26日(火)午後・金沢の天気    あめ

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☆能登地震による液状化で電柱同士が接触し発火 これはレアケースなのか

2024年11月25日 | ⇒ドキュメント回廊
  元日の能登半島地震の影響はさまざまな場所で起き、そしてさまざまなケースがある。その典型がこの事例だろう。地元メディア各社の報道によると、今月23日午後7時20分ごろ、金沢市に隣接する内灘町の県道沿いの電柱から出火し、消防がまもなく消し止めた。周辺の10戸ほどが3時間ほど停電した。近くの住人から「家が突然停電し、外の電柱が燃えている」と110番通報があった。
 
  きょうその現場を見てきた。出火した電柱は地震による液状化被害が大きかった同町宮坂地区にある。出火した電柱は傾きが進み、近くにある工場敷地内の細い電柱との電線同士が接触して発火したようだ=写真・上=。この周辺ではこの電柱だけでなく相当数の電柱が傾いている。中には目算で20度ほども傾いているのではないかと思えるものもある。北陸電力の関連会社では、電柱の建て替え作業を進めているが、内灘町だけでなく能登でも相当数の電柱が傾いていて施工が間に合わないのだろうか。
 
  問題の電柱の下を見ると、黒と黄色の電柱標識板の一部が地面に埋まっている=写真・下=。日常で見る標識板は地面から40-50㌢上にあるので、これは電柱が地盤に沈下したのだろう。液状化がいまも進んでいるのではないだろうか。
 
  内灘町では地震の揺れは震度5弱だった。震源地の珠洲市からは直線距離で100㌔あまり、そして震度7が観測された輪島市からは直線距離で85㌔離れている。今回の地震で道路がいたるところで隆起したり陥没したりしている。地面がゆがみ、多くの住宅や電柱が傾いている。道路が15度ほど斜めになっているところもある。震源との距離は離れているが、全半壊の住家は686棟に及んでいる。ちなみに、隣接する金沢市では276棟だ(11月22日時点・石川県危機対策課まとめ)。なぜ、これだけ影響が大きかったのか。宮坂地区などは河北潟の西側に広がる。この地域は江戸時代から河北潟を埋め立てる干拓事業が進められてきた。もともと砂地だった場所なので液状化現象が起きたのだろう。これは憶測だ。
 
  冒頭で述べたように、予期せぬさまざまな出来事が起きている。今回のように傾いた電柱と電柱が接触しての出火。冬季に入れば雨量がさらに増え、時間とともに液状化した地盤が動き、同様のケースが連続的に発生するのではないだろうかと危惧する。
 
⇒25日(月)夜・金沢の天気   はれ
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★能登地震の被災者の語り 「長靴の恩返し」「ペチャンコの家」「DMATに感謝」

2024年11月24日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震で被災し、仮設住宅で生活している人たちから直接話を聴く機会がこれまで何度かあった。そのなかからリアルな話をいくつか。「家がペチャンコになった」から始まった話があった。ペチャンコは潰れて平になるとの意味。能登半島では2020年12月以降、地震が頻発するようになった。揺れに慣れてきて、「また地震か」という気持ちになっていた。この気の緩みのせいで、いざというときに持ち出す貴重品の置き場を定めておくのを失念していた。元日に大きな揺れが来て、貴重品どころか逃げ出すのがやっとだった。ペチャンコになった家からは貴重品を取り出せず、公費解体に立ち会うことにしていて、順番をひたすら待っている。

  別の被災者の話。元日の夕方の揺れで、慌てて外に出た。「家にまだ人がいます。誰か助けてください」とひたすら叫んでいた。すると一台の車が止まった。小学生の子供ら家族が乗っていた。30代くらいの女性が車の中から出てきて、「これを履いてください」と長靴をくれた。靴を履かずに靴下で外に出ていたことに気がついていなかった。女性は「東京に帰りますので」と言い、そのまま去った。そのときお礼も十分にできずにいた。その長靴の恩はいまも忘れられない。色とりどりの円模様が入った黒長靴だ。「お礼をしたい」と繰り返し話していた。

  ほかにも地震にまつわるさまざまな話を聴いた。地震で家屋がきしむギシギシという音を思い出して、いまも身震いすることがある。地震で物が落ちると言うが、元日の震度7の揺れではじつに奇妙な落ち方だった。棚の上にあった電子レンジが一瞬、宙に舞うようにして落ちた。

  避難所生活の話。学校の体育館で避難生活を続けていた、もともと独り暮らしのシニアの話。体育館では、小さな子どもたちも一緒に避難所で生活していたので、走り回ったり、騒いだり、その姿にむしろ元気をもらった。困った話も。シニア層はトイレの回数が多く、夜中もトイレに何度か行く人もいる。トイレの帰りに手洗いをしない人も多く、問題になっていた。避難所にやってきたDMAT(災害派遣医療チーム)の看護師に相談すると、消毒液スプレーを配置してくれた。これをみんなが使うようになり、安心した。

  震災の環境での暮らしで被災者には新たな発見や悩み事などさまざまにある。これまで話を聴かせてもらい、むしろ被災者から元気をもらったり、知恵を授かったりすることが多い。これからも被災者の話に耳を傾けていきたい。

⇒24日(日)夜・金沢の天気    くもり   

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☆きょう二十四節季の「小雪」 凍結や積雪への心構えが問われる日

2024年11月22日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょうは二十四節季の「小雪」。寒さが進み、そろそろ雪が降り始めるころとされるが、金沢は朝から雨模様だが、最高気温は15度、最低気温は9度となっていて、寒さを感じるほどではない。例年、小雪のころから冬の訪れを告げるかのように雷が鳴り始める。きょう金沢では雷注意報が出ていて、午後6時前ごろに雷鳴がとどろいていた。今月28日と29日にも雷マークが出ている。北陸ではこの時季の雷を「冬季雷(とうきらい)」、能登では「雪だしの雷」と言ったりする。ブリが能登半島に回遊してくるころと重なる。

  きのう夕方、金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」を走っていると、「スノータイヤ 早めに装着」と電光掲示板が出ていた=写真=。ノーマルタイヤからスノータイヤへの履き替えを促している。寒波が吹き込むと、のと里山海道の路面は凍結や積雪におおわれる。海岸沿いの道路は凍結し、山沿いの道路は積雪となる。なので、スノータイヤへの交換は北陸の冬では必須だ。冬の時季、のと里山海道や北陸自動車道で事故が多いのが県外ナンバーの車だ。スタッドレスなど冬用タイヤを装着していなかったために追突やスリップ事故などに遭遇する。そもそも、凍結や雪道での運転に慣れていないせいもあるだろう。話が逸れた。

  元日の能登地震で奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)では、道路に敷設された消雪装置の大半が壊れたままとなっていて、その路線が延べ40㌔ににもおよぶと、地元メディアが報じている(21日付)。中でも、半島の尖端に位置する珠洲市では市内の国道、県道、市道の合わせて25㌔の消雪装置が壊れたままとなっている。消雪装置は市内のメイン道路に設置されていて、冬場の通勤や通学の道路には欠かせない。同市では上下水道の復旧を最優先で取り組んでいて、道路の消雪装置の修繕の見通しは立っていないようだ。車道に雪が残れば、スタッドレスタイヤを装着した車でもスタック(立ち往生)が格段に増える。

  報道によると、同市では消雪装置が使えない分を除雪車を増やして対応する予定で、前の冬から10台増やし190台で対応する。また、国道では積雪5㌢で除雪車が出動するが、一部の県道でも国道と同じ基準で除雪を行う。雪道では車道、歩道問わず事故が発生しやすい。いよいよその季節がやってくる。

⇒22日(金)夜・金沢の天気    あめ

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★能登半島の尖端・珠洲市で見た坂茂氏の3作品 込められた建築家の美学と使命感

2024年11月21日 | ⇒トピック往来

  優れた芸術家に贈られる第35回高松宮殿下記念世界文化賞(日本美術協会主催)に建築家の坂茂(ばん・しげる)氏ら5人が選ばれ、今月19日に授賞式が東京で開催された。坂氏は建築作品をつくりながら、自然災害や戦争の被災者の住環境を改善する活動家でも知られる。報道によると、受賞者を代表してあいさつした坂氏は「受賞されたみなさんも美しいものを追求しているだけではなく、社会的な問題を批判したり、その解決策を提案しているアーティストだと思う」と述べ、「受賞を励みに世界中で社会貢献活動をしていきたい」と力を込めた。

  このニュースを見て、坂氏の受賞を喜んでいるのは能登半島の尖端、珠洲市の泉谷満寿裕市長ではないだろうかとふと思った。このブログで何度か取り上げたが、同市と坂氏の関わりは深い。自身が初めて坂氏の作品を見学したのは去年5月15日だった。その10日前の5日に同市で震度6強の地震があった。被災地を歩ていると、泉谷市長から声をかけられた。同市とは金沢大学の地域連携プロジェクトで協力関係にあったので、これまでも市長から何度か声をかけていただいた。

  立ち話で「バンさんのマジキリがすごいので見に行かれたらいい」と。「バンさんのマジキリ」の意味が最初は分からなかったが、とりあえず近くの公民館に見に行った。公民館は被災者の避難所になっていた。館内を見ると、マジキリは避難所のパーテーションのことだった。常駐スタッフの説明では、建築家の坂茂氏が被災した人々にプライバシーを確保する避難所用の「間仕切り」の支援活動を行っていて、同市に寄贈されたものだった。間仕切りは木製やプラスティックなどではなく、ダンボール製の簡単な仕組み。カーテン布が張られているが、プライバシー確保のために透けない=写真・上=。中にあるベッドもダンボールだ。環境と人権に配慮した建築家の工夫がそこに見えた。

  坂氏は1995年の阪神大震災を契機に災害支援に取り組んでいて、珠洲市での地震でもいち早く行動を起こした。これがきっかけで、坂氏の名前を初めて知った。(※マジキリはその後、公民館から撤去されている)

  再び坂氏の作品を目にしたのはその年の秋に珠洲市で開催された「奥能登国際芸術祭2023」だった。急な坂道を上り、丘の上に立つと眼下に日本海の絶景が見渡せる。海岸線に沿うように長さ40㍍、幅5㍍の細長い建物「潮騒レストラン」があった。一見して鉄骨を感じさせる構造だが、よく見るとすべて木製だ。公式ガイドブックによると、ヒノキの木を圧縮して強度を上げた木材を、鉄骨などで用いられる「トラス構造」で設計した日本初の建造物、とある。日本海の強風に耐えるため本来は鉄骨構造が必要なのかもしれないが、それでは芸術祭にふさわしくない。そこで、鉄骨のような形状をした木製という稀にみる構造体になった。まさにこの発想がアートだと感じ入った。

  話は前後するが、5月の地震でのマジキリは、坂氏が芸術祭の作品の打ち合わせで以前から珠洲市の現地を訪れていたこともあり、設置の話がスピード感をもって進んだようだ。

  もう一点。元日の最大震度7の能登地震で、珠洲市に坂氏が監修した仮設住宅が整備された=写真・下=。木造2階建ての仮設住宅は木の板に棒状の木材を差し込んでつなげる「DLT材」を積み上げ、箱形のユニットとなっている。石川県産のスギを使い、木のぬくもりが活かされた内装となっている。観光名所でもある見附島近くあり、外装の色合いも周囲の松の木と妙にマッチしていて、まるで海辺の別荘地のような雰囲気を醸し出していた。

  能登の尖端で見た3作品から、世界中で社会貢献をしていきたいと提案型の作品をつくり続ける坂氏の建築家としての美学、そして使命感が伝わってくるようだった。

⇒21日(木)夜・金沢の天気    あめ

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☆能登半島の沖に連なる「178㌔の海域活断層」 原発にどう向き合うのか

2024年11月20日 | ⇒メディア時評

  能登地方では2018年から小規模な地震活動が確認され、2020年12月以降で活発化し、ことし元日にマグニチュード7.6、最大震度7の地震となった。震度7の観測地点は輪島市門前町走出と志賀町香能の2ヵ所。半島の中で隣接するこの輪島市門前町と志賀町はこれまでも大きな地震に見舞われている。自身の記憶にあるのは2007年3月25日に門前沖を震源とするマグニチュード6.9、震度6強の揺れ。過去には、1892年12月9日に志賀町沖を震源とするマグニチュード6.4の地震が起きている(政府の地震調査委員会資料より)。志賀町には北陸電力の志賀原発の1号機・2号機=写真=があり、現在は2機とも停止中なのだが、現地の人たちにとっては揺れが起きるたびに気が気ではないだろう。

  けさ(20日)の地元紙によると、北陸電力は元日の地震を受け、志賀原発2号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査(今月6日)で、能登半島北部に連なる海域の活断層をこれまでの96㌔から178㌔に修正して見直していることが分かった。活断層が連動する長さをこれまでの1.8倍とすることで、原発で想定する揺れや津波の大きさに影響することになる。

  この記事を読んで、電力側の対応が遅いのではないかというのが県民の一人としての自身の感想だ。今回の地震では、すでに政府の地震調査委員会は半島の北東から南西にのびる150㌔の活断層がずれ動いたことを指摘している。元日から4日間の揺れは、1日が358回、2日が387回、3日が135回、4日が65回の計945回におよんだ(気象庁の報道発表、図はウエザーニュース公式ホームページより)。半島の尖端部分で起きた主破壊は西と東に分かれ、それぞれ向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊しながら大きく成長していった様子が明らかになっている。また、研究論文「2024 年 Mw 7.5 能登半島地震における複雑な断層ネットワークと前駆的群発地震によって制御される複合的な破壊成長過程」(研究者代表:奥脇亮・筑波大学生命環境系助教、深畑幸俊・京都大学防災研究所附属地震災害研究センター教授)は、「長く静かに始まり、向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊した」と表現している。

  これまでの2号機の再稼働に向けた審査の中で、電力側は原発敷地内を通る10本の断層は「活断層でない」と主張し、これを受けて原子力規制委員会は2023年3月3日の会合でその主張を妥当と判断し、2号機再稼働への道を開いた。ところが、今回の地震で原発周辺の海域で活断層が連動することがはっきりした。実際、元日の地震では原発敷地の地下で震度5強を観測。変圧器が故障し、外部電源の一部が使えない状況が続いている。また、この日に4㍍の津波が周辺を押し寄せた。

  敷地内の断層が「活断層でない」から原発が安心安全なのではなく、半島の沖にある178㌔もの連動した活断層にどう対応するのか、揺れや津波想定をどう算出していくのか、この壮大な難問に向き合うことになるのだろう。正直、志賀原発が止まっていてよかったというのが県民の思いではないだろうか。

⇒20日(水)夜・金沢の天気     くもり

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