自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★食品添加物の「がん加算説」

2013年09月02日 | ⇒ランダム書評
  医学界では発癌(がん)のメカニズムについての有力な学説の一つに、「がん加算説」がある。種々の誘因によって、生体の細胞内の遺伝因子が不可逆性変化をおこし、その変化の加算によって細胞が癌性悪変へ進む、という。医学の素人なりにその状況を考えると、食品添加物や農薬、化学肥料、除草剤、合成洗剤、殺虫剤、ダイオキシン、排気ガスなど私たちの生活環境にある化学物質が体の中に入り込んで、その影響が蓄積(加算)されてがんが発生するということだろう。

  中でも食品添加物は直接体に入ってくる。食品添加物には合成添加物と天然添加物があるが、合成添加物はいわゆる化学物質、431品目もある。スーパーやコンビニ、自販機、また一部の居酒屋や回転ずしなどで購入したり食する食品に含まれる。長年気にはなっていたが、その数が多すぎて「どれがどう悪いのかよう分からん」とあきらめムードになっていた。たまたま薦められて、『体を壊す10大食品添加物』(渡辺雄二著・幻冬舎新書)を読んだ。10だったら、覚えて判別しやすい、「買わない」の実行に移せる。

  著者は私と同じ1954年生まれ。著書で出てくる食品添加物にまつわる事件については世代間で共有されていて実に鮮明に思い出すことができる。以下、著書を読みながら記憶をたどる。国が認めた食品添加物で、初めて安全神話が崩れたのは1969年の中学生のとき。当時、「春日井のシトロンソーダ」などの粉末ジュースを愛用していたが、人工甘味料の「チクロ」が発がん性と催奇形性(胎児に障害をもたらす)があるとして突然使用禁止になった。突然というのは、国内で議論があったのではなく、FDA(アメリカ食品医薬品局)の動物実験で判明し、日本も追随したという経緯だ。その2年後にも事件が起きた。魚肉ソーセージだ。「AF-2」という殺菌剤は細菌の遺伝子に異常を起こし無力化するという効果があったが、同時に人の細胞にも作用し、染色体異常を起こすことが分かったのだ。粉末ジュースと魚肉ソーセージは当時の中学生のアイテム商品だった。その禁止理由がよく分からなかったので「こんなうまいもん。なんで禁止や」と理不尽さを感じたものだった。

  この著書を読みたくなったきっかけがある。大学の先輩教授が、過日、成田空港のすし屋でヒラメやエビ、アワビなど堪能した。「ちょっと消毒臭い」と感じたらしいが、味もよく食欲があったので10皿ほど積み上げた。ところが、「ホテルに帰って最近になく胃がもたれた」と話していた。その話を聞いて、食べ過ぎというより添加物かもしれない、それにしても生鮮食品になぜ添加物なのかと疑問に感じていた。本著ではまさに、すし屋の食材と消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムの下りがある。すし屋や居酒屋の場合、生食を扱うため、食中毒のリスクを恐れる。そのために、仕入れ段階から過敏になっている。そこをよく知っている魚介類の加工会社が次亜塩素酸ナトリウムを使って店に出荷する。ところが、すし店や居酒屋できっちりと洗浄して、在留がないようにすれば問題ないが、手抜きがあると「消毒臭い」となる。

  よかれと思ったことが、裏目に出る。あるいは企業の過剰な防衛意識が消費者の健康をむしばむ。外国からかんきつ類(オレンジやグレープフルーツなど)を空輸する場合、防カビ剤「TBZ」「OPP」が使われる。発がん性や催奇形性の不安が指摘されるが、厚労省は認めている。アメリカとの貿易に絡んでの圧力があるのではないかと本書で指摘している。ことし春には中国からの大気汚染「PM2.55(微小粒子状物質)」が問題となっている。「がん加算説」の現実味を感じる。

⇒2日(月)金沢の天気    あめ

  
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