自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆能登の寺社は地域コミュニティーの中心 再建への道筋はつくのか

2024年07月22日 | ⇒ドキュメント回廊
  きょう22日は二十四節気の一つ「大暑」にあたる。この時節は、金沢でも花火大会やスイカ割りなどの行事、風に揺れる軒下の風鈴が風物詩でもある。その大暑が近年は「猛暑」となり、「熱中症警戒アラート」がTVメディアなどで鳴り響くようになった。きょうの金沢の予想最高気温は34度、名古屋は38度だ。熱中症警戒アラートが東海北陸全域に出されている(環境省熱中症予防情報サイト)。
 
  もう22年も前の話だが、NHK大河ドラマ『利家とまつ』がヒットして話題を呼んだ。加賀百万石の礎を築いた前田利家と正室まつ、その夫婦愛を軸に家族の視点から、戦国の乱世を描いたドラマだった。まつの遺灰がまつられている輪島市門前町の菩提寺「芳春院」に先日行くと、本堂などが崩れて全壊状態だった=写真は7月6日撮影=。芳春院を訪れるのは元日の発災以降で3回目だったが、半年経ってもまったく手が付けられていない。すぐ近くの曹洞宗の大本山・総持寺祖院は山門(国文化財)などは無事だったものの、33㍍の廊下「禅悦廊」(同)が崩れるなどブルーシートがあちこちに被せてあった。
   
  芳春院や総持寺だけではない。能登では寺院が相当に傷んでいる。能登で一番多い寺院は浄土真宗で、真宗大谷派東本願寺のまとめ(6月19日時点)によると、能登地域にある寺院353ヵ寺のうち、被害があったのは331ヵ寺で、そのうち本堂の倒壊など大規模被害は72ヵ寺、庫裏は69ヵ寺に上る。これに他宗派の寺院や神社も加えると相当な数に及ぶだろう。
 
  能登では、寺院は地域コミュニティーの中心の一つでもある。寺で毎月28日に「お講」が開かれる。浄土真宗の宗祖とされる親鸞上人の月命日にあたり、地域の年寄り衆や子どもたちが集い、お経の後に山菜や海藻の精進料理が供される。人々は会話を交わし、情報交換の場ともなっている。その寺でのコミュニティーが元日の能登半島地震で絶たれた状態になっている。
 
  本来ならば、寺院の本堂や庫裏などに損壊があれば檀家の人たちが中心になって修繕へと動き出す。ところが、地震で檀家の人たちも多くが被災した。輪島市と珠洲市だけでも住家6000棟が全壊、一部損壊を含めれば2万1500棟にもなる。住家の全半壊は公費解体の対象となるが、では寺院や神社はどうか。これは憲法上での政教分離の原則があるため、寺院や神社などの被害に対する国の公的支援は難しい。
 
  今月16日に石川県が開いた「復興基金(総額540億円)」の活用策を巡る意見交換会に七尾市以北の6市町の首長が参加した。復興基金は被災者支援のうち、国の事業でカバーできない部分を補う。意見交換会の中で馳知事に対して要望があったのは、地域コミュニティー施設の再建に向けた取り組みだった。中でも、6人の首長がこぞって要望したのは、能登の祭り文化や地域の絆(きずな)を絶やさないためも寺院や神社などの修繕費に手厚い補助をしてほしいということだった(16日付・地元メディア各社報道)。
 
  県では8月中に基金の活用方針をまとめ、9月以降で基金事業を進めることにしている。はたして、芳春院再建の道筋へとつながるのか、どうか。
 
⇒22日(月)午後・金沢の天気     はれ時々くもり

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