手にしたのは何となく。
VLTIMASの『EPIC』。「ウルティマス」と読み、2ndアルバムに当たる。
結成としては2016~2017年辺りで、元MAYHEMのルネ❝ブラスフェマー❞エリクセン、元MORBID ANGELのデイヴィッド・ヴィンセント、そしてCRYPTOPSYのフロ・モーニエの3人が中心メンバー。
もうこのメンバーが名を連ねているだけで、スーパーブルータル且つテクニカルなデスメタルとなるんじゃないか、と思ってしまうのは無理からぬことだと思うし、1stアルバムリリース時点では実際オレもそうじゃないかと思っていた。
申し訳ないが、オレは1stはちょっと試聴した時に、「う~ん、なんかパッとしねェな」という印象にしかならず、手を引っ込めてしまった。
デス/ブラックメタルシーンのスーパーグループであるのは確かだが、だからといってそのメンバーが集まっても心惹かれるものが必ず出てくるとは限らない、というのが偽らざる感想だったね。
で、
今回5年振りのアルバムで、このバンドに対しての印象がほぼほぼ消え失せていた(苦笑)状態であったので、最新作をリリースしたCRYPTOPSYに準ずる様な音楽であるならまァ・・・という感覚で入手した次第。
いや~、これが良い意味で予想を裏切るものであった。
バンドとしちゃ、ルネがメインソングライターであり、彼を中心にバンドで発展させて曲にしていくという作曲方法を採用しているみたいなのだが、その時のルネの感覚によって、その表現表情が変化すると考えられる。
ルネは自身のルーツにあたるものを今回影響源として掘り下げたようで、1970~80年代HR/HMの様式を感じながら、そこから順当に進化していったスラッシュ/デス/ブラックメタルの要素を取り入れた楽曲となっている。
実際、曲ごとの雰囲気はハッキリとしていて、その曲に於ける決めてとなるフレーズがちゃんと存在しているのは大きい。それだけで、バラエティに富んでいると感じられるし、そこから傾倒することを可能とさせている。
加えて、ルネの持ち合わせているブラックメタルとしての音楽的「黒い」要素。
デスメタルでは凡そ出てくる事が少ない荒涼さを備えた響きが、リフに於ける刺激となっている。
こういった要素に関しては勿論各メンバーの貢献も平等に大きく、フロのドラミングもCRYPOPSYよりもストレートなドラミングを披露。
ギター、ヴォーカルをメインに押し立てる様な演奏となっているのは、彼が中心となって創り上げるCRYPTOPSYのスタイルとは明らかに異なっているので、個人的にはアホスピードで展開するハイパードラミングを披露しない彼は新鮮に思える(とは言うが、VLTIMASでの演奏もとても常人が捌ける様なものじゃないが:笑)。
あとはデイヴィッドの歌唱。ここが何よりも、VLTIMASの音楽を決定づけるものとなっていると言える。
MORBID ANGEL、特に初期の頃に轟かせていたデスヴォイスは、所謂デスメタルの中でもバンドの風格/威厳を感じさせるに相応しい声質であり、オレにとってデスメタルの声の理想の一つに、当時の彼があった(あとはVADERのピーターだね)。
現在の彼は、その声の野太さはそのまま、妙なこけおどしになるような角を削った様な歌唱となっており、雄々しいと言う他ないくらいに魅力的な中低域を軸にした声質。
MORBID ANGELに再加入した際に取り入れていたシンガロングは、ファンからはかなり否の声が上がっていた様に思えたが、VLTIMASでは特にくどく感じさせないし、彼の歌いまわし如何によって、バンドの曲への印象や影響が左右されるほどでもあると、個人的には思う。
正直、今回のアルバム内容がただただデスメタル的であるならば、すぐ聴き流して終わっていただろう。
ブラックメタルのフィルターに因るところも大きいだろうが、所謂このメンバーで期待される特定概念を越えた音楽形態を提示してきてくれた事で、個人的には刺激を与えてくれるものが出てきたと感じている。
エクストリームメタルの範疇であるが、極端な苛烈さを単に叩きつけるものではない、もっと広い範囲でその存在を知らしめるだけのバランスを備えた、ユニークなバンドと成り得ている。
時期尚早ではあるが、現時点で一番の番狂わせな存在となったな。