ラルくん 20

2022-01-05 08:26:13 | 日記
「それじゃ、S子、『A』の役やってみて。」

うまく悲鳴をあげられないM子のかわりにS子がその役を演じることになった。

M子とS子の役をチェンジ。

M子が演じる『D』と、S子が演じる『A』は、絡みが多い。
そこへ、ラルくんの演じる『E』も絡むワケだが、テンションが落ちてしまって回復しないM子に引きずられてしまって、S子もとてもやりにくそうだ。
そして、ラルくんも、テンションが上がらない。

それを感じ取ってしまったM子は、さらにテンションを落とす。

負のスパイラルだ。

「すみません。ちょっと休憩ください」

M子は、泣き顔でレッスン室から出ていった。

周りの皆も、それを察して空気が重たくなる。

「それじゃ、このエチュードは、保留ということにして、今日のレッスンは終了します」

気まずい空気のまま、指導者が退室してしまった。

「M子、大丈夫かな?」

「大丈夫でしょ。今は一人で頭冷やしたいと思うよ。」

一部始終をみていた私たち先輩チームの冷めたやり取りだ。

「不正までして『A』を取ったのにね…」

仲間のひとりがポツンと言った。

…あ、私だけじゃなくて、皆気付いてたんだ…。