「それじゃ、S子、『A』の役やってみて。」
うまく悲鳴をあげられないM子のかわりにS子がその役を演じることになった。
M子とS子の役をチェンジ。
M子が演じる『D』と、S子が演じる『A』は、絡みが多い。
そこへ、ラルくんの演じる『E』も絡むワケだが、テンションが落ちてしまって回復しないM子に引きずられてしまって、S子もとてもやりにくそうだ。
そして、ラルくんも、テンションが上がらない。
それを感じ取ってしまったM子は、さらにテンションを落とす。
負のスパイラルだ。
「すみません。ちょっと休憩ください」
M子は、泣き顔でレッスン室から出ていった。
周りの皆も、それを察して空気が重たくなる。
「それじゃ、このエチュードは、保留ということにして、今日のレッスンは終了します」
気まずい空気のまま、指導者が退室してしまった。
「M子、大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。今は一人で頭冷やしたいと思うよ。」
一部始終をみていた私たち先輩チームの冷めたやり取りだ。
「不正までして『A』を取ったのにね…」
仲間のひとりがポツンと言った。
…あ、私だけじゃなくて、皆気付いてたんだ…。