弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

元IMF専務理事ストロス・カーンの性犯罪、公訴棄却

2011年08月26日 | 海外法律、トレビア

8月23日、ストロス・カーンの起訴は棄却になりました。

すっきりしない幕切れです。

アメリカの捜査は時間との戦いですから、こういうこともあるのでしょうか。

この起訴は、大陪審といって陪審員の評決で決まったものです。
しかし、そこに持ち込んだ検察側は当然有罪を確信していたはずです。
今回の、棄却は、検察側の申出によるものです。
24頁にわたる書面を提出していますが、
サマリーの部分をみると、被害者が信用できないの一言に尽きます。

過去に何かについて嘘を言ったからと言って、今回の事件も嘘というわけではない、
としながらも、やはり信用できないというのです。

やはり、決定的なのは、今回の事件についての供述がころころと変わり、
その他の証拠との矛盾があるということでした。
暴力の痕跡は間違いないようですが、暴力があるというだけでは犯罪の証明には
なりません。合意のうえだと犯罪にはなりませんし、いつできか傷害かも
問題になります。

検察側としては、被害者の供述から、当日何があったのかがさっぱりわからない
というのです。そして、法廷で証言台に立った時にどういう説明をするのかも
見当がつかないというのです。
検察が自信がもてないことについて、陪審員を説得することなどできないという
わけです。
性犯罪は重罪ですが、それでも、冤罪を作りたくはないというのです。
検察側が訴訟を継続したくない気持ちよくわかります。

最初は、被害者の供述は確実に見えたということです。
被害者はアフリカからの移民ということです。
習慣の違いもあったでしょうし、アフリカでは生きるためには嘘など当たり前
かもしれません。法律のルールなど、関係のないところで生きていたでしょう。

私の推測ですが、法律のルールなど知らないアフリカの移民、それを
法律の下で生きている先進国の我々と同じ
土俵にいる者として扱ったことにそもそも問題があったではと思います。

リビアやシリアを見ていると、全く別の世界だとわかります。

ニューヨークの検察もいい勉強をしたのではないでしょうか。

 


判事ディード法の聖域 トレビア、法廷で写真撮影は許されるか?、ツィートはどうか?法廷侮辱罪か

2011年07月19日 | 海外法律、トレビア

18話は、テレビのリアリティーショー放映中の殺人事件がらみですから
マスコミの注目度が大きく、傍聴席にも記者たちが詰め掛けています。
証言中の証人の写真が、各社の新聞の第一面を大きく飾っています。

ディードは怒って、マスコミ関係者全員を起立させ、写真を撮影した者は
申し出るように命令しますが、全員黙秘です。
責任は一蓮托生ということで、全員、下の拘置室に拘留してしまいます。
何度か申出で謝罪をするよう促します。結局、一人が認めました。

イギリスでも写真撮影は禁止であり、違反すれば法廷侮辱罪にあたります。
日本での写真撮影は禁止です。日本でも違反は法廷侮辱罪になります。
ただ、日本では、開始前の法廷(裁判官、検事、弁護人が着席した)の撮影は
認めていますが、イギリスではそういうことはありません。

なお、法廷での禁止事項ですが、イギリスでは、写真撮影については、絶対的禁止
です。録音については、原則禁止ですが、裁判官の裁量で許可させることも可能です。
携帯電話は絶対禁止です。

ツィターなどのテキストベースの通信については、今のところ既定のルールは
ありませんが、暫定的な実務ガイダンスが2010年12月20日に出され、
裁判官の許可があれば認められています。
裁判公開の原則にそうものですから、マスコミ関係者が念頭にあるようです。

法廷侮辱に当たる場合、ディードは謝罪を要求するし、下の拘置室に入れてしまい
ますが、実際の法廷ではどうなのか、若干疑問に思っていました。

ジュリアン・アサンジ氏のスウェーデンに対する引き渡し裁判の控訴審(7月13日)で
実際に記者が写真撮影をし、見つかるというハプニングがありました。
カーディアン誌から、ライブブログの該当部分を以下にコピーしました。

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4.24pm: The Italian journalist taking a photo in court earlier provoked a warning from the judge that members of the media and the public attending court can "tweet – but not snap", the Press Association reports.

Alessandro Carlini, a freelance writer, had his mobile phone confiscated and was told that he had committed contempt of court and under normal circumstances would be taken down to the cells until legal representation could be provided and the matter dealt with.

Alessandro apologised in court and said later he had mistakenly pressed "the wrong button" on his mobile.

Lord Justice Thomas ordered him to stand up in the crowded court after the midday break and warned him he was committing contempt of court.

Thomas said the media were now allowed to use mobiles and other technology to keep the public informed of court proceedings, but "it has always been made very clear photographs are not to be taken".

The judge said he understood Alessandro may not have been entirely to blame, but the case should serve as a warning to everyone that in future such conduct would lead to contempt proceedings.

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どうやら、イタリア人ジャーナリストが携帯のカメラで撮影したようです(ディードの件も
同じです)。裁判長は、傍聴人でいっぱいの法廷で記者を起立させています。
そして、携帯電話は取り上げられ、法廷侮辱に該当すること、
通常の場合であれば、taken down to the cells にするところだと警告しています。
彼は謝罪し(apologised )しています。
そして、裁判長は、ツィートは許されるが、撮影は許されない
(can "tweet – but not snap")と警告しています。そして、写真については
 "it has always been made very clear photographs are not to be taken".
と言っていますから、原則なしで禁止なのです。
今回は、一方的に非難できないといってcell送りにはならなかったようです。
(間違ってカメラボタンを押したと後で釈明したようです)

これは実際に起こったことですが、
ディード判事、法の聖域のドラマと同じです。
起立させる、謝罪させる、そして場合によればdown to the cells にするのは
ドラマの世界だからではなく、法廷侮辱をしたものに対する標準的な対応なのですね。