弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

勝敗は訴えるもの一つに絞れるかによる

2022年06月12日 | 裁判・法律

マスクなしを意識的に実践しているが、
思いのほか勇気がいる。
マスクなしの歩行者はほとんどいないからである。

通常なら勝つのは難しいような場合で、
しかし、実際は見かけとは異なり通常ではない場合であり、
だから勝たなければおかしい、社会正義に反する場合に、裁判で勝つためには、
具体的事実関係を基に、いかにシンプルで説得的な理論構成ができるかによる。

閃いた。

スタート地点についたというだけであるが。

 

 

 


優秀な弁護士とは、ストーリーテラー?

2022年06月04日 | 裁判・法律

一日、週明けの訴訟の準備で過ごしている。
弁護士の仕事、役割って何だろうと考えこんでしまう。
訴訟は、勝ちか負かの勝負である。
しかし、審判はいるが、行動で誰にも瞬時に結果がわかる野球や相撲とは違う。
また、将棋のような頭を使うゲームとも違う。長考してもその結果として駒を動かさなければならない。
駒の連続の動き(目に見える)で勝敗が決まる。

裁判は違う。行動そのものとは無関係。中味が問題。
そういう意味では、小説のようなものかもしれない。でも小説の場合は、直接の勝負相手はいない。
また、良し悪しは、不特定多数の読者等が何となく決める。
裁判は通常は、一人又は三人の裁判官が判断し決定する。
建前は公開ではあるが、実際は、当事者・関係者しか知らないところで行われる。
しかも法律という厳格なルールがある。

優秀な弁護士かどうかは、与えられた材料・ルールの範囲内でいかに説得的・魅力的な物語を
裁判官に提示し判断させるかではないかと、ずーっと考えている。
そして、そういう弁護士は、本当は極めて少ないと思う。

最近の新聞記事に、藤井聡太五冠の
「将棋の盤上の物語の価値は不変である、自分としてはそういう価値を伝えていきたい」
と話したとあった。(3日のヒューリック杯棋聖戦の初戦を落としたのは残念である)

物語という点では、将棋の盤上も、裁判の法廷も同じではないかと思う。
同じ将棋の駒で、同じ将棋のルールに従い、最近では誰もが利用可能なAIを使って研究しても
藤井聡太もいれば、タイトルと縁のない棋士もいるだろう。

そんなことを考えてながら、物語の完成度を高めるべき、一日を過ごした。

「吸血鬼ドラキュラ」の居城のモデルとなったブラン城(ルーマニア)の中庭の写真である。
ヨーロッパ中世の城としては、どうということはないかもしれない。
でも、「吸血鬼ドラキュラ」の城と思ってみると、やはり、そういう雰囲気も感じる。
これも「物語」のなせる技とでもいうべきであろう。
そして、ブラン城への連想は、5月31日のブログでルーマニアのコウノトリを想いだし、
ドラキュラ大集合のニュースここを見たからであろう。

物語は「起承転結」で展開される。当然ルールには従わなくてはならない。
一見無関係なような弁護士の仕事と優れたストーリーテラーであるが、藤井聡太五冠の言葉のとおり
訴訟における「物語の価値は不変」なのである。
日々研鑽あるのみである。

 


阿武町誤送金騒動のまとめ

2022年06月02日 | 裁判・法律

6月1日のマスコミ報道によると、5月30日に以下のような事情により9割の約4300万円を
回収したとのこと。
以前の説明は間違っていたことになる。

まとめをしたい。

1 誤送金を起さないような態勢づくりを整備しておくこと
2 仮に、誤送金をした場合には、速やかに回収の法的手続きをすること(取下げはいつでも可能)
3 手続きの各段階で、取り得る最善の法的措置を講じておくこと

行政は法を執行する機関である。
その機関が、手違いが生じた場合に、法を執行するためにいかなる法的手段を講ずるべきかについて
実効性のある方法をとる態勢にないことは、住民に対する裏切りである。

お粗末の一言に尽きる。


誤送金の顛おおよそ分かった?

2022年05月26日 | 裁判・法律

約9割回収できたとのこと、まずは何より。

「税金の滞納」は口実。
口実が効を奏したようで、何より。
恐らく、滞納金はごくわずかのはず。
通常ならば、極々わずかの滞納金の回収はできても、滞納とは無関係の4000万円
以上の回収などあり得ない次元。
そもそも法的手段を検討さえしていない段階。
税が絡んだせいか、何か後ろめたいことがあったのであろう。
まさに奇跡に近い??

以下の図の「3」の当たりが効いたのであろう。
町の言い分とは異なり?、実質「示談」。
話合いによる解決も歴っとした法的解決である。
通常なら、三者(町、田口容疑者、決済代行会社)間の文書を作成するはず。
あとで、決済代行会社からの送金は「誤送金だった」などと言いがかりを付けられては
冗談にもならないからである。
あるいは、決済代行会社が、田口容疑者名または代理人名で振り込むなど、書面上の担保は
必須である。

気になることは、誤送金の経緯である。
正規の給付金の対象世帯に対する送金は4月1日行われている。
誤送金が行われたのは1週間後の8日(この図では6日となっているが、誤り)である。

町当局の説明はつぎのとおりという。
マーカーの部分、説明になっていない。
「出す必要のない書類」を出さないようにチェックすることこそ「上司」の仕事。
上司の言い分では、「横領」などし放題となる。

上司の弁解をみると、ますます疑惑が生じてくる。
⑴誤った「操作」で作成とは具体的になにか
⑵振込依頼書を作成し、銀行に出せば、振り込まれるのは当然。重複の認識はなかったのか?4630万円もの振込について上司の決裁や、報連相はないのか?
⑶きっかけはなにか
⑷1日と8日は同一人物か
⑸銀行の担当者も気が付かなかった?新人だったのか?
などなどである。
いずれにしても、本人から事情を聴取しているはず。
「なぜか出してしまった」というような説明ではなく、誠意ある事情説明があるべきと思う。世間・マスコミを騒がせた説明責任とでも言おうか。

この職場は問題がありそうである。
公金を扱う公務員の責任感は全く感じられない。
DX化以前の世界のようである。
再発防止に向けた努力が必要。

なお、今回の回収分の一部は滞納金の回収に充てるのだろうか?細かいことではあるが・・

 


4630万円誤送金問題のなぜ

2022年05月21日 | 裁判・法律

誤入金、誤送金なのか誤給付?なのか知らないが、
マスコミを賑わすようになってから、かなりの日が過ぎた。
なお、個人的には誤「送金」ではないかと認識する。
誰の問題と捉えるかによる。

私は、「町」の問題と考えている。
第一に、送金先463件を間違えて1か所に送るなどということが、なぜ起こり得るのか
正直理解できない。
第二に、なぜ、可及的速やかに、出金停止措置を講じなかったのかである。

これら新聞記事によると、4月8日に24歳男性の口座に誤送金した。
24歳男性は4月12日を最初に4月18日までほぼ毎日34回にわたって出金したという。
8日は金曜日なので、土、日を挟むが、仮差押なので、急げば11日(月)には裁判所に
申立てできたはず。そうすれば、この男性も犯罪を犯さずに済んだ。
(超特急の場合は、休日でも対応できた可能性もある。)

少なくとも、12日に400万円を決済代行業者に送金した段階では、仮差押えの手続きを
取るべきだったと思う。

最悪の場合、本件では最悪になったが、4630万円という金額を24歳の男性が弁償できるなど
常識的にはあり得ない。回収不能と判断すべきである。
そうすると、一刻も早く法的手続きをとることである。
仮差押えの理由の疎明に問題はない。
第三債務者は一応しっかりとした金融機関(給付金の受取口座なので、
問題にないところであるはず)のはず。

24歳男性に弁解の余地はない。いうまでもない。

しかし、誤送金の原因、なぜ保全措置を講じなかったのか、を知りたいものである。

過ちは起こり得る。
したがって、過ちが起きた場合にどう対応するか(被害を最小化する)が実務の世界ではより重要である。