11月21日に公開が予定されているガールズ&パンツァー劇場版の特報が、6月に公開されました。以前の予習PVの内容と繋がっている部分もありますが、大半は新たなシーンで占められ、ストーリーの全体像どころか、それぞれのシーンの意味すら予想するのが難しくなってきています。外見は分かるが内実はよく分からない、というシーンも少なくありません。
その最たるものが、上図の日本戦車道連盟でしょう。テレビシリーズでもその名称や存在は知られていましたが、具体的に建物や関係者が描かれるのは、劇場版の特報においてが初めてです。
上図に出てくる建物は、日本戦車道連盟会館となっています。つまりは日本戦車道連盟の本部施設であるのでしょう。その前庭には、第一次大戦時のイギリス陸軍戦車であったマークAホイペット中戦車が置かれています。こういったモニュメントは、その団体や施設にとっての記念的存在を形にする例が殆どですので、日本戦車道のルーツまたは黎明期において、マークAホイペット中戦車が何らかの重要な役割を果たしていたことを示唆しているのでしょう。
そういえば、大洗女子学園において必須選択科目の案内が戦車道メインで上映された際にも、戦車道の歴史をさらりと説明するなかでマークAホイペット中戦車が登場していましたね・・・。
さて、その日本戦車道連盟ですが、具体的にはどのような団体なのでしょうか。ガルパン公式設定の辞典ともいうべき「ガールズ&パンツァー エンサイクロペディア」の94ページに解説があり、日本における戦車道の活動を統括する組織、となっています。要するに、戦車道という武芸の全般において日本戦車道連盟が大きな指導力および権限を有している、と理解出来ます。
さらに、公益財団法人として認可されており、とあります。公益財団法人は、一般財団法人のうち、公益事業を主たる目的としている法人であり、この場合の公益事業が戦車道活動に相当します。公益事業とは、一般的には公衆の日常生活に欠くことのできない事業を指しますので、ガルパン世界では戦車道が一般市民の日常生活に普通に溶け込んでいる存在になっているようです。すごい設定だなあ、と改めて感心してしまいます。
また、公益財団法人は、所定の申請により民間有識者から構成される委員会等で公益性を認定されないと成立しませんので、一般財団法人よりは格上となります。税制においても優遇措置を受けられますので、資金や寄付金なども集まり易くなるという利点があります。
また、日本の国号を冠していますので、世界的に普及している戦車道の日本版を管轄していると解釈出来ます。戦車道には国際試合や世界大会もあるそうなので、そちらは国際戦車道連盟というような感じの団体が取り仕切ることになっているのかもしれません。オリンピックに例えると、国際戦車道連盟はIOC(国際オリンピック委員会)、日本戦車道連盟はJOC(日本オリンピック委員会)に相当するのでしょう。
こうした日本戦車道連盟のなかで、西住しほが率いる西住流戦車道はどのような立ち位置を占めているのでしょうか。西住流については、「ガールズ&パンツァー エンサイクロペディア」の94ページに解説があり、日本戦車道の中でも最大級の流派、とあります。したがって、日本戦車道に大きな比率と影響力を有している流派であることが理解出来ます。当然ながら、日本戦車道連盟の構成員にも連なっているものと見られます。が、日本戦車道連盟のトップであるとか、会長や理事長などのポジションにある、といった描写は無く、それらしき雰囲気も感じられません。
西住流は、おそらく日本戦車道連盟の重要な構成要素ではあるものの、連盟の機能や権限に深く関わるものではない、と考えるべきでしょうか。逆に考えると、日本戦車道連盟は、西住流より上位にあるということにもなるでしょう。
流派の名称は、原則として創始者の姓名にちなむケースが殆どです。西住流とは、西住を名乗る人物が創始し維持している流派であると解釈して良さそうですが、西住しほは、西住流においてどのようなポジションにあるのでょうか。
テレビシリーズの時点で、西住しほは師範であることが蝶野亜美のセリフから知られます。正確には、西住流師範、です。師範とは、武道においては指導者または資格をいいます。また師範の資格を有することで流派を名乗って門下生を集めることを許される場合が多いです。
これらをふまえると、ここでの西住流師範とは、二通りの解釈が得られます。一つは西住流戦車道の指導者であること、つまりは西住流戦車道の創始者でもあること、という解釈です。二つ目は、西住流戦車道における師範の資格を与えられたことによって門下生を集めることを許されている、という捉え方です。
西住流戦車道自体は、かなり古くからあるらしく、蝶野亜美の説明を借りれば、西住家は戦車道の由緒ある名門、という位置づけがなされているようです。これが西住しほの代からそうなったのか、西住しほ以前にそうなっていたのか、が問題になってきます。それによって、西住しほの師範という位置が初代であるのか、何代目かになるのか、に分かれてくるからです。
ですが、テレビシリーズから劇場版特報に至るまでの全ての映像においては、西住しほ以前の西住流戦車道のイメージは全く描かれていません。同時に、西住しほ以前に師範が居て戦車道を指導していた、というようなストーリーも語られていません。
一方、コミック版においては、「西住流現当主」という表現がみられます。これがテレビシリーズでも同様の設定であれば、西住流戦車道は西住しほ以前から存在していると位置づけられます。つまり、先代の師範として西住しほの母親、さらにその前に祖母クラスの人物がいて西住流を支え継承してきた、という流れが想像されます。
しかし、そういった人物のことは、テレビシリーズから劇場版特報に至るまでの全ての映像には描かれていませんので、現時点では、西住しほが西住流戦車道の全てを背負っているようなイメージが強いです。この場合の師範とは、先に挙げた一つ目の解釈、つまり西住流戦車道の指導者であること、つまりは西住流戦車道の創始者でもあること、と考えた方が良いのかもしれません。
個人的には、西住流戦車道というのは古くから存在したが、師範という指導者または資格が成立したのは西住しほの代が初めてである、というようなイメージを抱きます。その契機となったのが、黒森峰女学園在学当時に戦車道チームを率いて連戦連勝を重ね、西住流戦車道の知名度を大きく広めて流派の拡大発展に寄与したことではないか、と想像しています。その実績によって、西住流戦車道における初の師範となり、現在に至る最大級の流派に育ててきたのが西住しほである、というのが私の抱いている基本イメージです。
が、それで正しいかどうかは、まだ何とも言えません。正直言って、単なる妄想の類に過ぎませんので・・・。
ここで気になるのが、この謎の新キャラクターです。日本戦車道連盟会館にて西住しほと対面するシーンがあるようで、共に応接シートに坐している点から、同じ日本戦車道連盟の構成員同士、または流派の師範同士、といったような同等の立場にあることが推測されます。
この新キャラクターの画面に「後継者」とありますので、日本戦車道連盟において、後継者問題が共通の認識として浮上していることがうかがえます。シーンの雰囲気からは、この新キャラクターによって後継者問題が持ち出されたような感じです。
というのは、西住しほの側でいうと、後継者問題はとくに考える必要が無いとみられるからです。西住流は最大流派として安定し、長女のまほは黒森峰女学園チームを率いて国際強化選手に選ばれて次期当主のポジションはほぼ約束されたも同然です。次女のみほも一時期は戦車道を避けたものの、転校先の大洗女子学園で戦車道チームをゼロから任され、初の全国大会で優勝を飾って西住流のDNAの凄さを証明しています。そのままの流れでもしほから見た娘たちの位置づけは変わらない、と予想されるので、余程のことが無い限り、しほの後はまほが継いで、これもおそらくは師範になるものと想像されます。
ですが、特報において「後継者」のテロップにて後継者問題が浮上したというのは、何か余程のことが起こったからでしょう。そもそも「後継者」とは何の後継者なのかが未だに明らかにされておらず、特報のシーンだけを見ていると「西住流戦車道の後継者」のように解釈出来てしまいますが、まだまだ分かりません。
ただ、何だかんだと大洗女子学園チームの不利な場面が示唆されていますので、これが後継者問題と関連があるのならば、それは大洗チームを率いている西住みほの立ち位置に一つの要因があるのかもしれません。それとは別に、予習PVにも特報にも西住まほが登場していないのが気になります。
ここで、師範について改めて考え直すと、それが戦車道における資格の一つである以上、その認可または授与は日本戦車道連盟が行う、という設定も有り得ます。西住しほの師範は、日本戦車道連盟から与えられた資格である、という捉え方です。
これでいくと師範は世襲制では有り得ず、日本戦車道連盟の認定が無ければ、西住しほの次の師範に西住まほがつくことも不可能となります。下手をすれば、西住家とは無関係の人物が師範となって西住流戦車道を受け継ぎ、実質的には乗っ取ることにもなりかねません。謎の新キャラクターが、そのキーパーソンにあたるのでしょうか。
実際の歴史においては、日本の武道武芸の系譜における後継者問題というのは、流派の存続か、改変または再編による新流派設立かで揉めるケースが殆どです。流派の実力者が師範にさからって脱退し別流派を興すケースも少なくありませんでした。
ガルパン世界においては、そうした陰湿な暗闘めいたストーリーは基本的に似合わないと思いますし、それをやったらテレビシリーズから培ってきたガルパンブランドとも言うべきイメージが崩壊してしまいますので、もっと別のストーリーが用意されているのでしょう。
いずれにせよ、この謎の新キャラクターは、何らかの形で「後継者」の問題に関わっていると見て良さそうです。別流派の師範なのであれば、流派同士の争いになるのでしょうが、それだとストーリー全体が陰鬱にも落ち込みかねませんので、もう少し別な視点を模索したほうがいいのかもしれません。
その場合に考えられるのは、同じく新登場の他校チーム(継続高校ではないかと噂されているが実態は不明)の存在が「後継者」の問題にも関係している、という見方です。
現時点で、西住流戦車道の関係者のなかで、全国大会での優勝を勝ち得たのは、期待されている西住まほではなく、黒森峰を飛び出して大洗に移った西住みほである、というのが一つのポイントです。西住まほは前大会でプラウダ高校に敗れ、今回の大会で妹率いる大洗女子学園に負けましたので、一年生の時点で隊長になっていなければ、黒森峰女学園の隊長としては全く優勝出来なかったことになります。それを倒したのが西住みほで、西住流戦車道の関係者ではあるけれど、その戦車道は本来の西住流戦車道とは異なっているもの、ということになれば、西住流戦車道そのものの存続が危ぶまれても仕方はありません。
そうしたなかで、西住みほ率いる大洗チームの次なる試合をわざわざ観戦にきているのであれば、この新登場の他校チームの存在は、大きな意味を持ってきます。
西住流戦車道が、西住みほの活躍によって変化の可能性を突き付けられたような状況において、西住流戦車道が従来からの思惑のままに西住まほに継承されることが果たして正解かどうかは、戦車道関係者ならば疑問を抱くのではないでしょうか。戦車道の最大の流派なのであれば、その今後の成り行きは戦車道全体に大きな影響を及ぼしますし、日本戦車道連盟とて無関心ではいられない筈です。
そのうえで、もし、新登場の他校チームが試合に参戦して大洗チームを撃破したらどうなるでしょうか。西住まほを倒した西住みほも敗れた、ということになりますので、結果論の一つとしては、西住流戦車道では勝てない、ということになります。
そういう思惑をいだきつつある一部の関係者によって、最大流派である西住流に対する対抗意識というものが醸成されているのだとすれば、それによって大洗チームが不利になるような状況が生み出されてもおかしくはありません。「大洗包囲網」のフレーズも、そのあたりから出てきているのかもしれません。
謎の新キャラクターが、その「大洗包囲網」の陰の立役者だとしたら、物語的にはとんてもない成り行きさえ織り込まれるかもしれません。でも実際にはまだどんなストーリーになるのかが分かりませんので、これ以上の推測は意味が無いと思われます。
ともあれ、本当の答えは、11月21日以降に劇場で初めて得られる筈です。楽しみですね。