1年前に書いたブログです。2020年3月7日。けさ、BSでも、NHKスペシャル『メルトダウン 連鎖の真相』の再放送をやっていた。
8年前の3月11日14時46分18秒(日本時間)にマグニチュード9.0の大地震が宮城県沖に起きた。高さ30mから40mの大津波が東日本の各地を襲った。
あの日、私と息子は横浜市の集合住宅の7階にいた。大きな揺れが長く続いた。妻は、外にいて、集合住宅が揺れるのを見守っていた。
あのとき、テレビは、何日も何日も大津波の映像を流し、コマーシャルは公共広告のACジャパンばかり、ニュースは政府広報ばかりで、バラエティー番組もドラマも映画もオープン戦中継もなかった。
あの日、福島第一原子力発電所では、送電線鉄塔が地震で倒れ、非常電源が津波で水をかぶり、核燃料の冷却電源を失い、3基の原子炉のメルトダウンが始まった。
3月11日の夜に、原子炉が冷却できていない、というニュースが流れた。おびえる息子に、原子炉がそんなに簡単に爆発することはないと、私は言い張った。
3月12日に水素爆発が起きて、1号基の原子炉建屋とタービン建屋がふっとんだ。原子炉建屋の枠組みだけが残っている状態を各テレビ局が放映した。14日には3号基の原子炉建屋で、15日には2号基の圧力抑制室で、4号基の原子炉建屋で、水素爆発を起こした。それでも、理由もなく、私は、大丈夫だと息子に言った。
あのとき、経済産業省は、関東各地で計画停電を行い、また、テレビで節電を呼びかけた。
当時の枝野幸男官房長は、はじめ、テレビで、「原子炉が冷却されている」と言っていたが、それを、「すぐには健康に被害がない」に変えた。住民の避難が、なし崩し的に毎日拡大されていった。
後からわかったことであるが、緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI)が予測した放射性気体が飛ぶ方向に、住民が避難していた。現在、避難者がどれだけの放射能を浴びたのか、の記録が、残っていない。私は、放射線医学総合研究所を含む原発関係者が意図的に調査を行わなかったのだと思う。
3月19日には、牛乳、ほうれん草に、食品規制法の暫定基準値を超えた、残留放射性物質が検出された、との報道があった。それから、毎日、食品の放射能汚染の報道が増えた。
同じ3月19日の午後に、東京消防庁のハイパーレスキュー隊は、福島第1原発3号基の使用済み燃料貯蔵プールに2,000トンを超える連続放水を行った。テレビで英雄のように放映された。放水に携わった約50人のうち、27ミリシーベルトが1人、14~15ミリシーベルトが3人、10ミリシーベルト以下が45人だった。
同じ日、東京電力は、作業員6人が緊急時の上限の100ミリシーベルトを超える被ばくをしたと発表した。年20ミリシーベルが、3月11日以前の被ばく上限であったのだが、この原発事故を受け、緊急時上限100ミリシーベルトが作られた。泥縄のご都合主義でないか。
6月11日、相馬市の酪農家が、壁に白いチョークで「原発さえなければ」「仕事する気力をなくしました」「残った酪農家は原発に負けないでがんばってください」と書いて自殺した。
福島第一原発3基の原子炉が放出した放射性物質は、チェルノブイリ原発事故を大きく上まわる。これは、どれだけの核燃料が原子炉にあったからか推定される。政府発表の数値は、陸上で観測した数値からの推定値であり、発生源の原子炉にあった放射性物質の量からの推定値でない。発生量より、陸上の量がかなり少ないなら、大量の放射性物質が海上に降りそそいだのだと思う。魚介類が放射能で汚染されたのは当然である。
電源が途絶えてすぐに水素爆発が起きたということは、それ以前に気体状の放射性物質が、冷却できない原子炉から漏れ出ていたのではないかと、今になって、私は思う。
不活性気体の放射性物質、アルゴン、クリプトンが拡散していたはずである。これらは寿命(半減期)が短いから、あとでは検出できない。
記録が残っているのは、寿命が長い放射性物質、ヨウ素とセシウムだけである。これらが気体となって、壊れた建屋から吹き出し、広がらないで、風船のように、風に吹かれて遠くに運ばれた。遠く離れた土地で、雨となって降りそそぎ、土壌を放射能で汚染した。麦わらも汚染されたから、それを食べた牛の乳は当然汚染された。西では静岡県の茶畑まで汚染された。
いま、3基の原子炉はメルトダウンして、溶けだした核燃料は水の中に浸されているから、水に溶ける放射性物質が、毎日、原子炉の外に流れだしている。放射性物質に色々なものがあるから、原子炉施設からの水をろ過装置で浄化するというのは無理である。そのため、第一原発の敷地に汚染水タンクが延々と立ち並ぶ。
もはやタンクを置く場所がないから、海に汚染水を流すというのは、あまりにも無責任だ。放射能汚染水は、敷地内の地下深い場所に、地層処分するしかないだろう。深く押し込めば、地下深くで拡散しても、陸上や海中に染み出すまでには、放射性物質の大半は崩壊しているだろう。
原発事故の問題は、事故を防ぐという観点からも、事故を処理するという観点からも、事故による被害を最小にするという観点からも、何も解決していないように見える。
事故を防ぐには、原発を停止し、電源を別にすればよいが、経済産業省はこれに反対し、原発の再稼働を推し進めている。誰のためであろう。これも忖度(そんたく)なのか。