猫じじいのブログ

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国民の80%が感染する新型コロナ、専門家会議の記者会見

2020-03-20 22:16:02 | 新型コロナウイルス

きのう3月19日の夜、10時50分から新型コロナウイルス対策専門家会議の記者会見がおこなわれた。これまでより、一歩踏み込んだ記者会見であり、木村太郎が評価していた。

これから、日本の都市部で、ヨーロッパのように爆発的感染拡大がいつ起きてもおかしくないというのが、専門家会議の結論である。このメッセージが、どうも、メディアにも国民に伝わっていないようだ。

記者会見に座長の脇田隆字氏(国立感染症研究所所長)、尾身茂(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)、西浦博氏(北海道大学教授)、川名明彦(防衛医科大学)が出席し、50分間、専門家会議の結論を説明し、日にちを越えて、70分間、記者質問を受けた。NHKは、記者質問にはいったところで、中継を打ち切った。CS TBSは真夜中の12時を過ぎたところで、打ち切った。

YouTubeで2時間の記者会見、全体を見ることができる。ぜひ、見るべきだ。
「全国イベント自粛解除「慎重に」 爆発的な感染拡大を警戒 専門家会議が見解(2020年3月19日)」で検索できる。

記者の質問に対し、専門家会議でもめたところは、大規模イベントは制限すべきか否かなどの行動制限のところで、いっぽう、日本の都市部で爆発的感染拡大(overshoot)が起きるとの危機意識は全員で共有されたと答えた。

この専門家会議は、厚生労働省の新型コロナウイルス対策 クラスター対策班の報告書を受けて開かれたものであり、あくまで、疫学上の立場からの議論である。したがって、医療体制をどのように整えるかや、また、分子生物学とくに塩基配列からの知見がまったく含まれず、疫学からの知見に限定したものである。

それでも、爆破的感染拡大に備えて、無症状の感染者は自宅待機、軽症者は民間宿泊施設か一般病院、重症者は感染症病院との対策を提言していた。

今度の新型コロナの特徴は、「気が付かないうちに感染が広がり、ある時点で爆発的に感染が拡大し、医療の供給に過剰な負担をかける」というものである。簡単にいえば、新型だから、飛沫浴びれば簡単に感染してしまうが、無症状の感染者が4割近くおり、気づかないうちに感染を広げてしまうということだ。咳をしなくても、しゃべれば飛沫が飛ぶのだ。

爆発的感染がいつ起きてもおかしくないというのは、感染源のつかめない孤発症例が増えている、都市部では感染の実効再生産数が1を超えている、新規感染者数が増えていることによる推定である。

「実効再生産数」とは、感染者数の増加数にモデル数式を適用し求められた、ひとりの感染者が何人に感染させるか、という数字で、再生産数が1ということは、新規感染者数は現状維持で、1より大きければ、感染者数は爆発的に増える。

あたりまえのことだが、PCR検査が多くなされなければ、再生産数は小さく出る。したがって、PCR検査数を増やさなければ、本当のことはわからない。この点については、専門家会議は政府のPCR検査の怠慢について追及していない。古典的疫学というものは、たとえ担当者に誠意があっても、できることに限界がある。

「リンクのない感染者」という言葉が会見で出てきたが、ウイルスをPCRでふやして、シーケンサーで塩基配列を決定すれば、塩基配列の類似性より、感染の経路や、発見されていない感染者の数を推定できる。分子生物学者が専門家会議に参加していないとは、このことである。簡易検査とともにPCR検査はぜひすべきである。

疫学にもとづく専門家会議の主張する対策はつぎのようになる。
(1)クラスター(集団感染)の早期発見対応
(2)感染者の早期診断、重症者の集中治療
(3)市民行動の変容

北海道での大規模イベントの自粛要請は、道民の「行動変容」に効果にあったという。行動変容とは、感染リスクの高い行動を避けることである。

地域によって感染状況が異なるので、地方自治体に感染状況に応じた対応の指揮ができる専門家が現状では少ないと言及した。しかし、急いでそのような専門家を育てることができないから、現在の専門家集団の討論をおおやけにし、地方自治体や民間医療機関に利用してもらうしかないのではないか。

それと、クラスターの早期発見とは、限界があり、簡易検査による集団検診を広めるしかないのではないか。

今回、専門家会議が、社会的隔離(social distancing)を実行可能な程度に緩めることを提言したのは一歩前進である。経済活動をつづけるために、人と人の接触を一律的に制限することはできないとし、無駄な接触を避けることを強調し、長期的に持続できる社会的隔離策とるべきとした。また、感染者の隔離を緩めたのも現実的である。

また、学校一斉閉鎖を専門家会議が提言したことはなく、政府が勝手にやったことであるとした。児童が感染を広めている証拠はなく、学校閉鎖については専門会議で議論していないと尾身は答えた。2月24日の全国学校閉鎖は政府の危機感の表れであろうと、記者に答えていた。

しかし、「爆発的感染拡大がいつ起きてもおかしくない」という危機感がメディアに伝わらないのは、1つは、本当の感染数を専門家会議がつかんでいないこと、もう1つは、疫学の常識「免疫も治療法もないなかでは、人口の60から70%が感染するまで流行はおさまらない」をハッキリと言わないことだと思う。

[追記]
記者会見で、東京オリンピックができるかの記者質問に尾身は言葉を濁し、何を言っているのか理解不可能であった。
専門家会議での結論からすると、すべきではないことになる。
なぜなら、海外からの人の流入のために、変異した新型コロナウイルスが感染をまた引き起こすだろうし、また、地方から東京に観戦にきた人が感染して地方に戻って、まだ感染の広がってない地域に流行をもたらす可能性もある。
東京、大阪、兵庫、愛知が、これから爆発的感染(overshoot)の予測されるところである。