猫じじいのブログ

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ジョー・バイデンに菅義偉が押されっぱなしの日米共同声明

2021-04-18 23:34:55 | 日本の外交


けさ、日米首脳共同声明を読んで、あまりにも広範囲な事柄に言及しているのに驚いた。菅義偉は何に言及しているかわからずに、ジョー・バイデンに押しまくれたのではないか。事前に菅の意図していたことは、「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認」、「辺野古における普天間飛行場代替施設の建設」、「安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅総理の努力を支持」だけではないか、と感じた。

各新聞社は、日米首脳共同声明全文(日本語)を載せているが、これは日本政府外務省の仮訳をそのままのせたものである。英文が正式な声明である。

仮訳の「量子科学」とは“quantum information sciences”の訳である。日本社会では「量子計算」とか「量子情報科学」のいわれているものである。新しい高速コンピューターを可能にする技術と一般に期待されているが、個人的には私は信用していない。
また、仮訳の「地域的なサージ・キャパシティ」は“regional surge capacity”の訳である。これは「地域緊急医療体制(態勢)」のことである。
仮訳の「安全」は“security”の訳で、バイデンは「米国の軍事的防衛」だけでなく「米国産業の防衛」という意味を含めている。
「グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」は“Global Digital Connectivity Partnership”の訳だが、何のことか私は知らない。

外務省の役人は、バイデンが何に言及しているのか、わかって、菅をサポートできたのだろうか。なにか、こころもとない。

ダニエル・L・エヴェレットは、『言語の起源 人類の最も偉大な発明』(白揚社)の第9章に、文化的背景が異なる集団が取引するときの誤解とそれにもとづく不信について書いている。具体的には、アメリカ先住民とアメリカ連邦政府との条約が生んだ悲劇である。

昨年の11月、「甘いもの好きでバイデンと菅がウマがあう」という番組構成にパックンが怒っていた。これは、トップの個人的友好関係で国と国との関係が動くと、アメリカの国民が考えていないということだ。

バイデンはたくさんのことをアメリカ国民に約束している。そして、日本と違い、当選したら、その約束を実行しようと努力する。少なくとも、彼の側近は実行しようと努力する。それは、トランプでも同じだった。

バイデンは「老いぼれ政治屋さん、やるじぁないの(Old Pol, New Tricks)」とコラムニストに言われるほど、老体に鞭打って、攻撃的になっている。

当然、バイデンは約束したことを共同声明に盛り込もうとする。それは、外務省の役人が予測できることであった。菅は、16日の共同声明で、あのように多くのことにコミットすべきではなかった。あとで、「共同声明」での多くのコミットメントが、日本の外交の足を引っ張るだろう。

バイデンは、中国を敵視している。これは、「自由と民主主義」の理念からだけでなく、アメリカ国民の経済的利益を守ろうとしている。これは、声明のつぎの言及からも裏付けられる。

《知的財産権の侵害、強制技術移転、過剰生産能力問題、貿易歪曲的な産業補助金の利用を含む、非市場的及びその他の不公正な貿易慣行に対処するため引き続き協力していく。》

《開かれた民主的な原則にのっとり、透明な貿易ルール及び規則並びに高い労働・環境基準によって支えられ、低炭素の未来と整合的な経済成長を生み出すだろう。》

この「高い労働・環境基準」は“high labor and environmental standards”の訳である。
バイデンは、民主党の昔ながらの基盤、産業労働者の支持を共和党から奪い返そうとして、これらを声明に含めた。そして、これらは、将来、日本の経済政策を砲撃する弾となる。1980年代の日米経済摩擦を思い起こせばわかることだ。

また、「在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意」「世界貿易機関(WTO)改革」「世界保健機関(WHO)を改革」「新型コロナウイルスの起源(の検証)」まで、菅はコミットしている。

菅首相は、アメリカの大統領となにを取引すべきか、わかっていないようである。

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