安倍晋三の率いる自民党は、今回の50%弱の投票率の参院選で、比例では、そのうちの35%しか票が取れていない。すなわち、有権者の17.5%しか自民党を支持していないのだ。しかも、自民党支持者がすべて安倍晋三を支持しているわけではない。安倍晋三の信者は有権者の10%もないだろう。
日本は完全比例代表制ではないので、議席では相対多数派に有利になるが、それでも参院の過半数に達していない。自民党は公明党のおかげで政権の座にいるのだ。
それなのに、それなのに、あたかも勝利したかのように、安倍晋三は、偉そうに、任期中の憲法改正を訴え、韓国への輸出規制を強化すると言っている。きょうの朝日新聞に、日本総研の藻谷浩介は『目先の「経済成長」を訴え 抱え込むリスク』と安倍政権の経済政策の危険性を指摘していた。資本主義経済の法則では、景気の波が避けられないはずなのに、景気浮揚だとして、6年間、政府系ファンドや日銀を使って日本株を買い占めている。
安倍晋三は正気でない。正気でない男のまわりには、正気でない人たちが、腐った甘い香りに誘われて、集まってくる。早く、日本の政治舞台から、正気でない男を排除しないと、取り返しのつかない人災が日本に、世界にやってくる。
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では、安倍晋三の正気でない態度や政策はどこからくるのか。
安倍晋三の『新しい国へ―美しい国へ 完全版』(文春新書)にもとづき、彼が「国家主義」に酔いしれている、としか言いようがないことを、私は指摘した。彼は、自分をリベラルでない、保守だ、と言う。リベラルは、個人ひとりひとりを尊重する。彼には、個人の尊重という概念が欠落している。
保守といっても、彼は王党派ではない。天皇を操り人形としかみていない。平成天皇を威厳がないと茶化す。彼は、自分を国家と同一視して、「国家のために」「国民のために」と酔いしれているだけだ。
第6章の具体的な年金問題では「国民」とは、利益が相反する集団の集まりだ、という事実が あらわになり、急に話があいまいになる。
第1章で安倍晋三は「この国に生まれて育ったのだから、わたしは、この国に自信をもって生きていきたい」と書く。本来は、「わたしは、この国を良くしていきたい」というべきところである。「国に自信をもつ」という表現がおかしいのだ。
この変な発想が、本書では何度も繰り返す。
第3章では、自信をもつには、どこかに「帰属」するということになる。私は、自分に自信をもつことが、けっして、帰属先をもつことであってはならない、と考える。
なぜなら、帰属先で自分に自信を持つには、帰属先が強くないといけないからだ。安倍晋三は野党に強い態度をとる。野党をぼろくそに言う。外交では、米国に強く出られないから、代わりに、韓国に強い態度をとる。韓国政府をぼろくそに言う。
これは、90年前、アドルフ・ヒトラーが抱えたのと同じ問題である。
安倍晋三の思考法では、他国に経済戦争をしかけて、最終的には、経済混乱で自滅するしかない。
冷静に考えれば、「帰属」が必要になるのは、「自信」のためではなく、「安心感」のためなのだ。たとえば、仕事をうしなったときに、政府は何をしてくれるのか、障害や老いで生活に支障が生じたとき、政府が何をしてくれるのか、そういう問題なのだ。
第7章の「教育の再生」でも、「国に対して誇りをもっているか」という問いに、「もっている」と答えた日本の高校生が50.9%しかいないことを安倍晋三が危惧している。
わたしから見れば、こんなバカな問いに50%も「もっている」と答えたことのほうを危惧する。すなわち、「国に対する誇り」の「国」とは、何を考えての答えであるかである。
「国」とは、「政府」なのか、「社会制度」なのか、「社会の政治意識」なのか、「日本の歴史」なのか。
「モリカケ問題」を起こす政府に誇りをもてとは無理である。投票率が50%を割り込む有権者に誇りをもてとは無理である。腐りきっているのが安倍政権である。日本の歴史に誇りをもとうとするから、歴史の書き換え、偽造が必要と思い込んでしまう。歴史は、人間の試行錯誤の跡であるから、偽造してしまえば、教訓や未来への指針を得られなくなる。
それなのに、安倍晋三は、それを教育のせいにし、「学力の低下」よりも、「モラルの低下」を心配している。「学力」とは何かの問題もあるが、「モラルの低下」とは何かを問題視しないといけない。
安倍晋三は「享楽主義」「刹那的」を「モラルの低下」と言っているのだ。彼の理想は、第3章にあきらかにされているように、「大義に殉じること」である。「国家主義」に共鳴し殉じるための教育をしろと言っているのだ。
本書によれば、「国に対して誇りをもっているか」という問いに、中国の高校生の79.4%が「もっている」と答える。こっちのほうが問題ではないか。
「自信」とか「誇り」とかは、自分にたいしてもつべきである。
(つづく)
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