映画「戦場のメリークリスマス」の原作「影の獄にて」
第二部「種子と蒔く者」読み終わりました。
大半を占めるのは兄と弟の物語です。
セリアズ(原作ではセリエですが、映画の人名セリアズで通します。)と弟の物語です。
セリアズには七つ下の弟がいました。容姿端麗、文武両道の兄に比べて、弟はその正反対。
なにからなにまで正反対。ただ歌うことに関しては、素晴らしい歌声の弟に対して、兄は音痴でした。
弟は背中にこぶがある身体障碍者でした。
それにかかわることが原因で、周りからいじめられる弟を救うことができたにもかかわらず、見て見ぬふりをして救わなかった兄の心に無が支配し始めます。
無の成長がどんどん増してきたころ、さらに弟は、得意とする歌を歌わなくなっていたことを知り、
兄は精神に異常をきたすほどに。
ここで、どうして兄であるセリアズの周りには、この彼の異常を心配して、心の内を聞いてくれる人がいなかったのでしょう。
今の時代では「カウンセリング」なるものがあって「カウンセラー」、もっと状態が悪ければ、
心療内科への受診を考えてくれる人がいなかったのか。
戦争がはじまり、戦争に飛びついたセリアズ。何年も感じることができなかった人生に目的がよみがえり、素晴らしいことが約束されているような感じも。
戦地でマラリアにかかり、熱にうなされる彼のもとにキリストが現れ、「弟との和解が必要。」
と告げられる。
休暇を取って、弟に会い、弟に対して、過去に犯した罪の許しを請います。
弟は、兄が詫びてくれたことで、昔のように歌を歌ってくれるように。
セリアズは「人が自らの生の意識に従順にならないと、生には
意味がないことを悟った。」
「これからは、生の中により大きな全体性を求める必要を、なによりも愛してゆかねばならぬことを悟った。」
とあります。
「種子と蒔く者」からセリアズの手記 兄と弟の物語はこのような内容でした。
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