
作者が勅使として訪ねた、伊勢神宮の帰りに詠んだ。現代詠に五十鈴川としなかったのは、この記事を読んだあなたに、古称に親しんでもらうため。
ひらかなy158:もういちど みたいものだと ふりかえる
みもすそがわに さわぐしらなみ
ひらかなs1881:たちかへり またもみまくの ほしきかな
みもすそがはの せぜのしらなみ
【略注】○見まくのほしきかな=見たいものだ。上一活用動詞「見る」の未然
形「み」に、推量助動詞「む」のク語法「まく」で、「見まく」(見ること、見
るだろうこと)。体言なので格助詞「の」を付けて、この場合は、所有格
的に使われる。「まく」は万葉集に多出だが、新古今では希用。「ほしき
かな」は「欲しいなあ」。旺文社版古語辞典には、「見まく欲し」「見まく欲
(ほ)る」が、同旨見出し項目になっている。
○御裳濯川=五十鈴川の別称・古称。倭姫伝説に由来。和歌のほか、
能楽でもこの名でよく知られる。
○源雅定=雅実の子。『大鏡』の作者か。