青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国はどこにある? 日中関係の基本構造を考えるⅢ

2011-04-09 15:00:23 | チョウ


明日は統一地方選挙、県議会議員選挙投票日、皆さん投票に行きましょう。今日のあやこさんのブログより

★このシリーズは、3年前(2008年)の4月に、あや子さんへ個人的に送信した練習用サンプルを、そのまま再利用したものです。

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Ⅰモンシロチョウの仲間の話から(その3)


ビルの谷間のキャベツ畑で


都心のモンシロチョウとスジグロチョウ

↑春のキャベツ畑で♀を探して飛びまわるモンシロチョウの♂
 

キャベツ畑の白いチョウ

今、東京の都心には、2種類の「白いチョウ」が見られます。そのひとつは、誰もが知っているモンシロチョウ。もうひとつは、モンシロチョウに似ているけれど、別の種類のスジグロチョウ。
 
モンシロチョウは、もともとはヨーロッパなどの外国に棲んでいたチョウで、それらの地域から日本へ、野菜、特にキャベツを導入し、栽培するようになったとき、一緒にやってきたのではないかと言われています。モンシロチョウの幼虫は、キャベツのほかに、ダイコン、アブラナ(菜の花)などの葉が好きです。そして、開けた明るい場所を好みます。

 一方、スジグロチョウはモンシロチョウよりずっと昔から、日本(とその周辺地域?)に棲んでいたチョウだと考えられています。モンシロチョウと違い、山の近くや林の中など、人間の生活があまり入り込んでいない、自然がよく残っているところでも暮らしています。
そして、どちらかと言うと、薄暗い環境が好きなのです。




↑線路脇の土手に咲くムラサキハナナ(ショカッサイ、ハナダイコン、オオアラセイトウなどの呼び名もある)の花を訪れたスジグロチョウ。谷間のような地形を作り出した鉄道路線が、スジグロチョウの本来の棲息環境を再現しているとも言えそうです。もちろんそれだけが復活の要因ではありません。1970年前後から、都心に急速に広がった、中国原産の帰化植物ムラサキハナナが、スジグロチョウの幼虫の食草に適していたことも、関連があると思われます。1981.4.12 東京都世田谷区。新代田-東松原間。





東京の町が発展する以前は、あちこちに丘や谷(谷戸)があり、森や林も、思いのほか豊富だったようです。そのような環境に、スジグロチョウも数多く棲息していたと思われます。
 しかし、東京に人口が集中するにつれて、郊外の丘や林は切り開かれ、耕作地になったり住宅地になったりしていきました。耕作地にはキャベツ畑や菜の花畑が広がり、単調な環境と化していったのです。
 このような場所は、開けた明るい空間が好きなモンシロチョウにとって、願ってもない環境だったのでしょう。明るい場所を好まないスジグロチョウは減り、かわりにモンシロチョウがどんどん増えて、より身近なチョウになっていきました。


戻ってきたスジグロチョウ 

ところが20世紀の後半になって、東京の町の様子が、大きく変わってきました。もちろん、一昔前も、民家などの人工物が数多く建っていましたが、土地の再開発のために、高層ビルが取って代わり、どんどん立ち並ぶようになっていったのです。
 林立する高層ビルは日陰を作り、ビルとビルの間は、谷間となります。まるで巨大な山や、深い渓谷の出現です。それだけではありません。町の中を縦横に走る道路や鉄道路線は、谷間を流れる川の役割をしているともいえそうです。
 空き地や畑のように、広く開けた空間が町から少なくなると、明るく開けた環境が好きなモンシロチョウは、暮らし難くなってきました。それに、畑には繰り返し農薬がまかれて、チョウの発生も押えられます。そんなとき、一度勢力を弱めたかに見えたスジグロチョウが、復活してきたのです。
現在、都心の高層ビル街の真っ只中で見かける白いチョウは、ほとんどがスジグロチョウのようです。しかし問題は単純ではありません。というのは、モンシロチョウが町から姿を消したわけではないからなのです。郊外の田畑や、開かれて間もない住宅地などには、まだまだモンシロチョウのほうが多く見られます。
 さらに、町の中でもクレオメの植えられた庭や、ビルに囲まれた小さなキャベツ畑などでは、両種が入り混じって飛んでいて、同じ花の蜜を仲良く吸っている場面にも出会います。
そのような場所で、両種は全く同じ空間で暮らしているのでしょうか? 吸蜜後の2種を追ってみることにしました。すると、モンシロチョウは、空地や日の当たる道路の真ん中を飛んで行きます。一方、スジグロチョウは、建物や樹木で出来た日陰に沿って飛んで行きます。一見、同じ所にいるように見えても、詳しく観察すると、それぞれが別の空間を利用し生活していることが分かります。







ビルの谷間のキャベツ畑で

モンシロチョウとスジグロチョウの違いは、利用する空間の違いだけではありません。利用空間の差は、行動様式にも反映され、顕著な差となって現われます。例えば、産卵様式ひとつをとってみても、2種の間に、明確な違いが認められます。
 6月下旬の数日間、東京都世田谷区のキャベツ畑の周辺で、モンシロチョウとスジグロチョウの産卵様式の違いを観察してみました。
 キャベツ畑の南側は車道、東側はスーパーの駐車場、西側は5階建てのマンション、北側は植え付け前の畑です。西側にマンションがあるため、午後になると西のほうから陽が翳ってきます。畑には、三列に並んだ合計108個のキャベツが植えられており、その横にはダイコンが数本残っていました。






調査を行ったのは、1992年6月27日と28日。108個のキャベツと、5本のダイコンに産み付けられた2種の卵を、かたっぱしからカウントしてみたのです。
 キャベツから見つかったモンシロチョウの卵の数は、全部で2519個、最も遅くまで陽の当たる、東の縁の一列に集中して生み付けられていました。
キャベツからはスジグロチョウの卵も見つかりましたが、数は全部で43個、モンシロチョウに比べれば遥かに少なく、そのほとんどが、キャベツの最も外側の、古くて大きな葉に産み付けられていました。
 傍にあった、収穫され残った5株のダイコンの葉には、スジグロチョウの99卵に対して、モンシロチョウは98卵が、産付されていました。モンシロチョウも、キャベツに比べてダイコンが嫌い、と言うわけではなさそうなのですが、スジグロチョウは、明らかにダイコンを好んでいることが分かります。
 ダイコンの葉の付いている地上部分は、陽の当たる部位と日陰の部位が、同じくらいあります。一方のキャベツは、全体的に陽が当たり易い形状です。スジグロチョウにしてみれば、
日当たりの良いキャベツの葉に日影を探すより、常に適度な日陰を作り出すダイコンの葉に産卵するほうが、能率が良いのでしょう。モンシロチョウにとっては、明るいところにありさえすれば、キャベツでもダイコンでも問題はないものと思われます。




 





食草による好き嫌いは?

 モンシロチョウやスジグロチョウの食草は、アブラナ科。モンシロチョウが好むのは、キャベツを始め、アブラナの仲間(カブ・ハクサイ・コマツナほか)やダイコンなどの、栽培種(=アブラナ科の蔬菜)。一方のスジグロチョウは、ダイコンなどの蔬菜も食しますが、イヌガラシを始めとした野生植物が中心です。
 栽培種も野生種も、含まれている成分には、さほど差がないようです。その証拠に、スジグロチョウの幼虫にキャベツを与えて飼育しても、モンシロチョウの幼虫にイヌガラシを与えて飼育しても、同じように成長していきます。
 2種のチョウの食草に対する好き嫌いの原因は、食草そのものの姿や、食草の生えている環境条件に因っているものと思われます。キャベツのような蔬菜は、ふつう明るく開けた空間に栽培され、モンシロチョウの嗜好と一致しますし、イヌガラシのような在来種の多くは、路傍や建造物周辺の、やや暗い環境に成育し、スジグロチョウの嗜好と一致します。近い仲間のチョウでも、微妙な環境の違いを使い分け、同じ都心の一角に共存しているのです。



以上、『チョウが消えた!?』(6頁から37頁までの、主に山地性稀産種についてを原聖樹氏が、38頁から63頁までの、主に都市近郊の普通種についてを青山が執筆)から、モンシロチョウとスジグロチョウの話題に関する部分(P.48-59)を、『ビルの谷間のキャベツ畑で』の仮タイトルを付けて抜粋)。原文の文体を改め、語句を整え直してあります。児童書であり、因果関係の解明(というよりも“辻褄あわせ”)が要求されるこのような内容の作品は、正直言って、僕の好みではありません(書き写していて、気が重くなってきます)。

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