龍騎の良心。心のオアシス。ただ優しいだけじゃなくて蓮に「小川恵里のことは諦めろ」ときっぱり言える厳しさも持っているところが好きだ。
いい人だけど変人なところがまたいいのだ。すごく怪しいしストーカーだし電波だし、実は鉄オタっぽいし、使いようによっては最強のネタキャラになれる可能性を秘めていたんだが、本編ではひたすらシリアスな役回りだったな。
どう見ても悪役のほうが似合いそうな俳優がメッチャいい人を演じている、というミスマッチも良かった。手塚には独特の胡散臭さがあったけど、これは言動だけじゃなくて見た目と怪しいオーラのせいもあると思う。
登場シーンの雰囲気なんて、完璧に悪役だったよな。腹に一物抱えてる感じだった。だから「ライダー同士の戦いを止めたい」という手塚の言葉も、途中まで半信半疑だった。疑いが晴れたのは、芝浦から真司のカードを取り戻してくれて、「一緒に二人を止めよう」と手を差し出したときかな。
手塚のこのキャスティングは意外性を狙ったものなのかなと思ってたら、どうも違うらしい。最初は悪役予定だったのを、脚本家が役者を見て「この人はヒーローのほうが相応しい」って感じで変更したとか。なぜだ。なぜこの人を見てそう思ったんだ。
この俳優が悪役をやってるところ、ちょっと見てみたいかも。とても似合いそう。
……と思ってちょっと調べてみたら、「仮面ライダードライブ」の最終回に犯人役で出てたのか。どんな感じだったか、全然記憶にないや。見てたはずなんだけどなあ。
最初18、9歳の少年だと思って見ていたので、21歳設定で、しかも演者は当時23歳と知ったときは驚いた。童顔だね。吾郎ちゃんや佐野より年上なんだもんな。
キャラとしては手塚のほうが好きだけど、役者は芝浦が一番気に入ったかもしれない。演技はあの中じゃかなり上手いほうだし、顔も可愛いし。あとは髪がもうちょっと長くて、身長がもう7~8cm低ければ(小柄な方が好き)完璧だったな。
とは言え芝浦のキャラ自体も結構好きだ。
ワルそうな感じで登場してきた割に、その後やったことといえばOREジャーナル乗っ取りとか、案外ショボいところが可愛い。多分本人はでっかいことやってるつもりなのに、実際はスケール小さくて子供っぽくて痛々しいところがいい。
自分で監修したイメージビデオで不思議な踊りを披露したシーンと、日本中に自作のゲームを広めて俺が人の心を支配するんだという発言で「あ、こいつバカだ、ただの厨二病だ」ってわかって、笑いがこみ上げてきた。で、憎めない奴ポジションに変化した。
世界征服したいとか思ってる小学生男子のままの精神状態で大人になってしまったイタい子なんだよな、余計な知恵だけ付けて。マトリックスの連中がたまたまアホだっただけで、あんなクソゲーがそんなに流行るわけないだろうが。そしてあのイメージビデオ、生きてたら黒歴史になったのにな。10年後くらいにあの映像を見せられて、恥ずかしさでのたうちまわってほしかった。
私は好きなんだけど、芝浦って妙に嫌われまくっているような。実際性格は悪いし、嫌味だし、人をイライラさせる天才だけど、浅倉須藤東條なんかに比べると全然大した悪事を犯していないのに。すぐに死ぬ、しかもかなり悲惨な死に方をするんだから許してやればいいのに。浅倉みたいに人を殺しまくって長生きする奴のほうが大問題だろう。
制作側としては芝浦の憎まれぶりは狙い通りなんだろうけど、若干天邪鬼な私としては、そんな思い通りの視聴者にはなりたくないんだ。憎まれ役みたいに設定されているキャラクターがいると、ストレートにそいつに腹が立つよりは、作り手にそんな風に扱われてるキャラクターが可哀相、って感情のほうが先に来る。
芝浦のことを「ガードベント」とか呼んでネタにするような風潮があるようだけど、そういうの見ると本気でイラッとくる。人の死ぬシーンをそうやってネタにするなんて悪趣味きわまりないし、特オタ特有のそういうノリが私は嫌いだ。しかも面白いわけでもなく、普通につまらんネタだしな。芝浦が出てくるたびに条件反射的にこのネタを出してくる人も結構見るけど、バカの一つ覚えみたいでとても寒い。
彼らのそういう態度を見ていると芝浦そっくりだなとも思うので、芝浦が実際にいたらやっぱり嫌いになるのかもな。フィクションだから許せるんだね。浅倉はたとえフィクションでも無理だが。
芝浦って異常な感性を持った極悪人ではなくて、そこら辺に転がってそうな感じの嫌な奴なんだよね。ただの厨二病で嫌味なクソガキ。だから、浅倉や須藤刑事なんかと一緒のカテゴリーには入れてほしくない。
芝浦は浅倉や須藤と違って、ライダーの力を悪用して一般人に害を与えるようなことはしない。そもそも人は一人も殺してないし、ライダー以外の人間を殺そうとしたこともない。芝浦の最大の悪事と言えば例のゲーム開発だけど、これだって死者は出ていないわけで。だから警察も「傷害」事件と言っている。その代わり嫌味と煽りという独自スキルがあるけど、嫌味で人は死なないから。
ライダーバトルにゲーム感覚で参加したことについては、そんなに悪いことだと私は思わない。殺し合うことをお互いに了解した人間同士の戦いで、自分の命だって危険に晒しているんだし。普通の殺人とはやっぱり違う。
浅はかな奴だけど、それでも自分も死ぬかもしれないということを全く念頭に入れていないほどバカではないんじゃないかな。リスクがあるからこそ面白い、一番嫌なのは死ぬことよりも退屈すること、みたいな感覚なんでは。
卑怯者っていうのも不当な評価だと思う。ゲーム感覚なだけあって、戦いにおいては案外フェアだ。三人一緒に相手してたこともあったし。浅倉や東條と違って不意打ち攻撃なんかしないし。
芝浦が戦闘中に卑怯と思えることをしたのって、ナイトの前でドラグレッダーのカードをヒラヒラしたときだけじゃないのかな。あれだって、戦況を有利に進めようとしたというよりは蓮をからかいたかっただけに見えた。
芝浦が腹の底でなにを考えてああいう言動をとっていたのか、っていうのは想像することしかできない。そもそも登場回数が少ない上に佐野みたいに内面が描写されることもなかったから。
初登場回で、フードを被って真司の前に現れたときにペラペラ喋っていた内容がヒントになりそう。「それは俺が天才だからですよ」「これで俺の優秀性が証明されたわけだし」。
最初は本当に自信満々なのかと思ったけど、途中からそれは違うんじゃないかと思うようになった。自分が天才だとか優秀だとかわざわざ口に出して言っちゃうのって、コンプレックスの強さの裏返しのように思える。
あるいは自己暗示のためか。天才、優秀って何度も自分で言っているうちに自分自身に暗示をかけることに半ば成功したんだけど、根っこの部分ではコンプレックスを抱いたままなんじゃないかと。
「人生退屈しきってる、もともと危ない奴ら」っていうのは、クラブの仲間のことを言ってるみたいだけど芝浦自身にもバッチリ当てはまるよな。
「これで俺の天才性が『証明』された」とか言う言葉からは、強い承認欲求が感じられる。周りから見下されながら生きてきたのかな、という想像もできる。誰にも真面目に相手してもらえなくて、もしかしたら小さいころにはいじめを受けてたりしたんじゃないか。誰かに認められたくて、構って欲しくて仕方ないようにも見えるんだ。寂しい奴なんだよね、多分。
OREジャーナル乗っ取りもそういうことなんじゃないかな。ゲームを広めたいだけなら、もっと効率のいい方法があったはずだし。
バトルに参加した動機も、ただ面白いからじゃなくてそういうことかも。で、最後の一人になったときの願いは自分を見下してきた奴らと両親に自分の優秀さを認めさせること、とか。芝浦だって願いが無かったわけじゃないと思うんだ。それが描写されないまま退場してしまっただけで。
あと、本当はヘタレなんじゃないのかな。ヘタレなんだけど、それを必死に隠そうとして虚勢を張っているように見える。
蓮にやられそうになったけど助かった直後のあの罵り方なんかも、私には虚勢にしか見えなかった。恐怖心を悟られたくなかったからこそ、余計に高圧的な態度に出たんだと思う。
「俺はトドメを迷ったりしない」なんて口では偉そうに言ってたけど、実は自分の手を汚すのが怖いのでは。最初の戦いのとき、ボロボロになって倒れていた真司にトドメも刺さずに帰っていったし、ドラグレッダーのカードも脅しに使っただけで実際に燃やす気はなさそうだったし。さっさと燃やしてしまえば一番楽なのに。
「実は優しい」とか言いたいわけじゃない。あくまでも自分の手は汚したくないってだけ。自分が手を下さなくても、他のライダー同士で勝手に潰し合ってくれればそれが一番いいっていう感じなのかなと。
芝浦は他人を操ったり煽ったり困らせたりしたいのであって、殺意や暴力衝動はあまりないんだと思う。そこが浅倉と大きく違うところ。(TVSPの芝浦は本当に躊躇なく人を殺せそうだったけど、あれはパラレルでキャラも若干違うと思っているので除外。)
こうして書いてみてわかったことだが、私は作品中に描かれている芝浦というよりは、自分で勝手に脳内補完した部分込みの芝浦が好きなんだな。つまり、元いじめられっ子で、本当はコンプレックスが強くてヘタレなのにそれを見せまいと必死に強がっている芝浦ね。
実際のところどうなのかはわからないけど、いいんだ。私の中ではそういうことになってるから。描写が少ないから、想像が多めになるのは仕方ないんだ。