卓袱台の脚

団塊世代の出発点は、狭いながらも楽しい我が家、家族が卓袱台を囲んでの食事から始まったと思います。気ままな随想を!

「 舟 を 編 む 」

2014年01月19日 17時59分12秒 | 映画

 相変わらず、小説とか雑誌類の類(たぐい)は、30年以上読んでいない。仕事に関係した業界紙や、ソフトやハードの取説か、Webサイトなどしか、読んでいない。将来の「晴耕雨読」に思いを寄せて、かつて父親が頒布購入した「日本の文学」・80巻が、寂しく、空し気に本棚を飾っている。そろそろ適応時期になってきた私には、その文字は、小さ過ぎるようだ。

 「辞書編集者の話」としか知らなかった、「舟を編む」という久しぶりのDVD鑑賞だったが、面白かった。゛ 2012年本屋大賞第一位 ゛、原作は「三浦しをん」(光文社刊)は、後から知った。


 10年・20年とかかる辞書編集に携わる主人公(松田龍平)と同僚、周辺関係者の物語。劇中「監修者でありながら、その完成を待たずに他界した松本先生(加藤剛)の言葉」が、題名を物語り、印象的であった。恋人役の宮崎あおいも、あの個性で、好演を見せている。ちょっと前の実力主義、人を蹴落としても上り詰め、目立ちたがるストーリーでなく、真面目な地味さ、ある意味懐古路線が全編を貫く様子は、劇中の辞書「大渡海」が目的とする内容と相反して、私の性格?としては、好きな部類だ。

 劇中の「用例採集カード」、「語釈」など専門用語も面白いが、「辞書」しての持つ意味を説いた松本先生の言葉が、この映画の原点だと思う。

 松本先生の言葉(辞書編集部で熱く)
   「言葉は生まれ、中には死んでいくものもある。そして、生きている間に、変わっていくものもあるのです。言葉の意味を知りたいときは、誰かの考えや気持ちを、正確に知りたいということです。これは、人と繋がりたいという願望ではないでしょうか。だから私達は、今を生きている人達に向けて、辞書を作らなければならない。大渡海は、今を生きる辞書を目差すのです。」

  松本先生の言葉(居酒屋で酔ったように)
    「言葉の海、それは果てしなく広い。辞書とは、その大海に浮かぶ一艘の舟。人は、辞書という舟で、海を渡り、自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。それは、唯一の言葉を見つける軌跡。誰かと繋がりたくて、広大な海を渡ろうとする人達に捧げる辞書、それは大渡海です。」

 その他、時代背景(1955年~)を感じさせる、「PHS・携帯電話」・「パーソナルコンピューター」、「ら抜き言葉」の数々。それぞれの辞書の個性を表す「語釈」について、主人公を引き抜く時などに使われた、「右」という言葉の説明方法の松本先生の解釈が、興味を誘った。

 ゛ おやっ ゛と、思った事。
 主人公の起居する古い木造建家前の坂道を見て、「昨年、50周年OB会で宿泊した ゛ 鳳明館 ゛」周辺に似ていると思ったが、案の定、協力/字幕に、その名があった。


    「右」の語釈……数字の「10」のゼロのこと

      ※私が持っている「新明解国語辞典(三省堂)」には、そのようには記載されていなかった。


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