アラヤ700C RC-540リムでJIS・8本組を手組みする
Aが結構自転車に気を取られていた頃は、競技車のリムはパイプリムにSOYOの丸タイヤ(チューブラタイヤ)、ランドナー車は国産はアラヤ/ウカイの3/8、輸入ものはスーパーチャンピオンの650Bのリムで36穴が主流だったと思います。スポークは306mmと285mmで賄っていたようで、#14/#15の段付きスポークです。スポーク長からするとJIS・8本組かと思いますが、車輪組みまではせず、振れ取りをして、パーツを取っ替え引っ替えし、ツーリングに熱くなっておりました。
昨年1月、40年以上使っていたロードフレームでスポルティーフ仕様車を再生しました。金属疲労も無く、パイプに錆は多少ありますが、日々のポタリングの使用に充分耐えてくれています。今年のコロナ禍で「新しい生活様式」が求められる中、閉じ籠もっているばかりでなく、適度な運動ができる「早朝ポタリング」を始めました。2ヶ月半を終えて、三食しっかり食べて・飲んで、?kgの減量と体も軽く感じられる体調の良さです。ロードバイクとスポルティーフ仕様車の2台を代わる代わる乗り換えていますが、チューブラタイヤのスポルティーフは予備タイヤの携行が面倒です。VARの振れ取り台を再生した折に、脳トレボケ防止として、車輪手組みにトライすることにしました。
車輪手組みにも色々なやり方があるようですが、Aはタンジェント組み・JIS組・4交差8本組に挑戦します。
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① 部品 & 工具
アラヤ700C RC-540 W/Oリム 36穴(シルバー) 1組
マイヨール ラージフランジ ハブ 36穴 1組
ロベルジェ トロワ エトワール Wバテッドスポーク・ニップル 305mm 1台分
リムは今回の事で新規に購入しました。仕様で同等(価格で半額)クラスと思われる台湾・KINLINのXR-19Wも視野に入れましたが、Kの一喝でアラヤリムに決まりました。Aの死蔵しているハブは全て36穴ですので、リムも限定されます。スポークは10月の関戸橋フリマで手に入れたものです。レースをやらないAの車輪はほぼ36穴の8本組です。フレームがカーボン製で軽量化流行ですが、少々重くある意味トレーニングとなる(健康管理上)36穴8本組ホイールは、何かしら意義があると思いませんか?40数年前の北海道ツーリング以後、この組合せでのスポーク破断の経験はありません。
(車輪組み部品 スポーク リム ハブ)
(マイヨール ラージフランジハブ 36穴)
CRC 5-56 多用途潤滑剤
SHOWA マイクログリップグローブ
ニップルレンチ3種
左 CYCLOスポークレンチ イングランド 14-15 IWGスチール
中 HKCホーザンニップル回し#14-#15
右 VAR #51 ニップルレンチ
マイナスドライバー
VAR 振れ取り台 #74(過日再生整備したもの)
CRC 5-56をスポーク・ニップルに噴霧、回転を滑らかに鳩目とのきしみを軽減する事前準備を行う。ニトリルゴムのグローブは、油分との接触を防ぎニップルを確実にグリップでき、作業用としては最適か? ニップルを紛失・バラけさせないためにも容器は必需品。ニップル回しを3種用意しましたが、主に使用したのは㊥のHKCホーザンニップル回し#14-#15。先端が鳩目穴に入る小振りのマイナスドライバー。
(マイナスドライバーはニップル初期の調整に必需工具)
(古いヴィンテージものスポークのため潤滑にCRC 5-56を噴霧)
(ポリ袋内のニップルにCRC 5-56を噴霧して軽く混ぜ合わせる)
(過日再生・整備した VAR 振れ取り台 #74)
② 事前準備
オーバーロックナット寸法のセンター出し
ホイールが組み上がり完成した段階で、センター出しのための確認作業を行います。前後ハブのオーバーロックナット寸法の中間に目印を付けます。初め赤マジックでハブのセンター位置に直接印を付けましたが、作業中に擦れて消えてしまいました。小さな白地の粘着シール上に印をつけて貼り付けました。確認作業の様子は、後記になります。オーバーロックナット寸法、後ハブ120mm・前ハブ100mmでした。
(前ハブのオーバーロックナット寸法センター目印)
③ ハブ穴にスポーク通し
JIS組の基準スポーク通し
写真①のフランジ上部外側より内側に通したスポーク(多少傾斜)を見ても、フランジ下部内側との多少のズレがあるのが分かります。ズレの右側穴(写真正対して)に内側より外側にスポークを通すと、この2本のスポークがJIS基準のスポークとなります。下部の内側スポークを通した後は、上部外側より通したスポークは下部フランジより抜いてフランジ外側に置きます。フランジ上部外側より下部内側フランジ斜め内側に通したスポーク位置(正対して左側)に下部フランジ内側よりスポークを差し込めば、別の組み方になります。
(写真①JIS組基準の2本のスポーク)
写真①の2本のスポークを基準として上(外より内に)下(内より外に)共、1本飛ばしでスポークを通していきます。その後ハブを反転した後、写真①の作業を繰り返し、残り18本全てのスポークをハブ穴に通します。(写真②)
(写真②基準スポークを参考に36穴全てにスポークを通す)
④ リム穴にJIS組8本組スポークを通す
リムのスポーク穴は、リム幅センターより左右寄り交互に開いているのが大方ですが、このリム(アラヤRC-540)は、左右寄り方が微妙です。リム外側(タイヤ装着側)から見るよりも、リム内側(ニップル締め付け側)から見た方が、寄り方は幾分分かりました。
(アラヤRC-540リムはスポーク穴の左右寄り方が微妙)
JIS組では、外側スポーク全ては(ハブに正対して)左方向に、内側スポークは右方向に組みます。Aの思い出より8本組の強度は大したもので、かつて破断したことは40数年前に1、2回です。その分(スポーク長・スポーク数)重量としては、多少重くなります。リムの組み始め・振れ取りの開始基準は、バルブ穴になります。バルブ穴より見通すハブブランドの刻印(シール名)位置や、リムブランドシールの進行方向左右向きにこだわった組み付けは、趣味人としての一種の気概かもしれません。このマイヨールのハブにはシェルステッカーやブランド名刻印はありません。こだわりとして、リムステッカーは進行方向右から正対視するように組みました。
組始めからスポークを通し終わるまでの手順を、下記写真③と写真④、図①の中にマーキングした色別数字で説明します。
(1)基準になる写真③の外側スポーク赤#1番と左側へ8本目の内側スポーク赤#8番を選びます。この2本のスポークは写真④のリムの位置で緑#1番と緑#8番と同じものになります。
(2)バルブ穴よりハブシェルステッカーやブランド名刻印を対角線上に見たい時は、(1)の基準の2本のスポークの選定位置を見える位置より取ります。
(3)写真③で基準として選んだ赤#1番と赤#8番の間にある内側のスポーク青#2番・青#4番・青#6番の3本は右側に寄せておく必要があります。基準のスポーク側のフランジ18本をリムに全て通し終わる後半で、作業をしやすくためです。(反対側も同じ)
(4)写真③で選んだ基準の赤#1番と赤#8番をリムに通す写真④では、それぞれのスポークは緑#1番と緑#8番になり、緑#8番はバルブ穴の左隣に、緑#1番は1つ飛ばしのバルブ穴隣より3番目になります。このようにフランジ側でも左方向へ外側と内側のスポークを1つ飛ばしでリムに順次通していきます。
(5)外側赤#1番と内側赤#8番のそれぞれのスポークが写真④の◎で交差しますが、交差のルールがあり、 ゛綾取り ゛と呼ばれる由縁です。図①を参照してもらえれば一目瞭然です。つまり、交差箇所は外側のスポーク赤#1番の上に内側のスポーク赤#8番が重なって交差しています。これを間違えるとリム組になりませんので、くれぐれもご注意下さい。
(1)~(5)を繰り返す事で、リムにスポークは全て通りますが、丸いリムに均等にスポークを通してニップルで締め上げるのには、少々コツが必要です。
(写真③ 基準の2本のスポークと内側の3本のスポーク)
(写真④ バルブ穴基準 8本組スポーク 交差の綾取り)
(図① 基準スポークの交差箇所)
⑤ ニップルの締め付け要領
組始めの基準スポーク2本よりスポークのネジ山を写真⑤のくらい残します。リムの反対側半分ほどになるとスポークの長さが一杯一杯になるので、ニップルをリムの鳩目穴に差し込み、マイナスドライバーで押さえながらスポークに回し込み、ネジ穴を当初通り写真⑤のくらい残します。始めのスポークより写真⑤のくらい残したのは、このためです。ネジ山をこのくらいで残すと、前後ハブによってスポークが残り過ぎたわむものや、ギリギリに引っ張られるスポークが出てきますが、取り敢えず、写真⑤のくらいのネジ山を残し、前後ハブ72穴すべてスポークにニップルを回し込みます。
72穴にスポークが通し終わったら、写真⑥のようにすべてのニップルをネジ山が隠れる程度に回し込みます。ニップル箇所により、ニップル回しやマイナスドライバーをそれぞれ適時使用するところが出てきますが、重ねて、ここでは72本すべてスポークのネジ山が隠れるようにします。ここまでが仮組みの状態、写真⑦になります。
(写真⑤ 初めのニップル調整はこのくらいネジ山を残す)
(写真⑥ すべてが写真⑤になった後ネジ山を隠す作業)
(写真⑦ 仮組み状態のホイール1ペア)
⑥ 振れ取り作業
振れ取りは、経験の作業で人それぞれの感覚で行うところが多い作業です。写真⑧のように振れ取り台にリムを据え付け後、前ハブについてはバルブ穴を起点にニップル回しを左右交互に同等回数(Aの場合3~4回)締める事より始まります。゛締める ゛とは、リムに正対して手前側(反時計回り)にニップル回しを回転させることです。Aの場合、リム振れ取りに関しては締め続けてリム組を完成させます(状況によりますが)。後ハブの ゛おちょこ組み ゛(後ハブセンター出しの関係よりフリー側のスポークを立て気味に組む)については、Aの場合最初はフリー側6回転、逆側3回転より始めます。バルブ穴起点より始める前後ハブへのニップル回しの回転数は、各ニップル毎正確に数える事が、後からの縦振れ・横振れを容易に作業するために必要不可欠です。
(写真⑧ 仮組みリムを振れ取り台に据え付け)
リムの張り具合は、何回かのニップル回しの回転数に応じて適当になりますので、極端な縦振れ・横振れがでない限りは、指先による感触もしくはスポーク張力計を使って感じ取ります。リムセンターを出す張力具合に達したら、写真⑨の振れ取り台のセンターゲージを参考に縦振れ・横振れ、センターを出す作業に入ります。使用しているVARの振れ取り台は、センターが多少ズレている? ようなので、前後ハブとも何回か左右を入れ替えて、センター出し・振れ取り作業を行いました。後ハブについては前ハブの倍の回数の左右入れ替え(写真⑩・写真⑪)を行いました。この作業を終え、センターが出てスポーク張力が適当な縦横振れを取ったリム1ペアが出来上がりました。
(写真⑨ センターゲージによる縦横振れ ハブセンター出し作業)
(写真⑩ 後ハブフリー側の振れ取り センター出し作業)
(写真⑪ 後ハブ逆フリー側の振れ取り センター出し作業)
⑦ ホイールのセンター出しの確認
昨今、適当な価格で入手可能なホイールセンターゲージを使えば、ホイールのセンター出しは非常に楽なのかもしれません。かつて高価なカンパニョロやVARのホイールセンターゲージしか無かった? 頃は、簡易に行えるセンター出しとしてたこ糸やゴム輪を使いました。振れ取り台で既にセンター出しを行っていますので、ここではかつて行っていたAのやり方でホイールセンター出しの確認作業を行ってみます。②の「事前準備」で前後ハブのオーバーロックナット寸法の中間にシールを貼り付け、センター位置を赤印で記しました。輪ゴムを何本か繋いで、ハブの赤印を通過するように輪ゴムの片方をリムに引っかけ、対角線上の輪ゴム端は写真⑫のように処理します。このようにして前後ハブの赤印上(オーバーロックナット寸法の中間位置)を写真⑬・写真⑭のようにゴム輪が通り、ホイールのセンター出しの確認ができました。
これでJIS・8本組の手組のリム1ペアができました。
(写真⑫ 輪ゴムをリムに引っかけた反対側の処理)
(写真⑬ 後ハブの赤印を通るゴム輪)
(写真⑭ 前ハブの赤印を通るゴム輪)
⑧ 余談
ロベルジェの1台分のスポーク・ニップルを使ってリムを組みましたが、スポーク・ニップル共各4本・4個が余りました。40穴のリムがあるのは知っていましたが、彼の地では38穴のリムも一般的なのでしょうか? それとも単なるサービス!
(スポーク・ニップルがそれぞれ4本・4個余った訳は?)