再生 スポルティーフ (1)
ある日、「あと10年も乗れるのだろうか?」と思いました。
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昭和44年、部活動を切っ掛けに、本格的に自転車との付き合いが始まりました。当時は、購入7年目のBSの軽快車に手を加えた自転車に乗っていました。1年目、合宿で北海道を巡りましたが、途中、テントの重さに音を上げた車輪の数本のスポークが折れました。さすがに、ツーリング仕様の自転車が欲しくなり、部の馴染みのサイクルショップで、当時の学連仕様車?(ショップオリジナル仕様)と言うものを、新車で購入しました。ショップの社長さんは、学生が購入しやすいように、゛月賦や年賦で、在学中に完済してもらえれば良い ゛という考え方と、大変奉仕欲のある方で、普通の自転車屋の社長とは、ちょっと違う人格の方でした。
…………Aが部活1年の時、レースに入ってきた新入部員がロードレーサーを買うことになり、社長のところで薄紫色?の新車を購入しました。当時、月賦の支払で毎月ショップに通っておりましたAに、゛君のところのレーサーだよ! ゛と言われたかどうか、よく覚えておりませんが、たまたま、その組み上げ中の自転車を目にしました。パール塗装?の輝く車体は、素晴らしく、軽合色の真新しい部品が次々に組み付けられていく様子は、時間の経つのをしばし忘れさせられたほどです。
その新入部員が1年か2年経った頃、レース部門の縮小、活動停止の問題があり、彼は退部することになりました。メカに興味を持ち、外国部品にも明るさを増すようになっていたAに、彼より連絡があり、「ロードレーサーを買わないか?」と言う話が舞い込みました。Aは、゛そのフレームの良さ ゛を知っている積もりでしたので、即決で話はまとまりました。…………
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社会人となり、自転車も仕様別に、4台ほど持つようになっていました。30歳頃まで、ソロツーリングであちこち出掛けておりましたが、転職を契機にゴルフ業が忙しくなり、自転車との関わりは、時折、江戸川土手をポタリングする程度となりました。転勤・転居を両手ほど経験しましたが、転居先へ同道する自転車は、あのロードレーサーでした。フレームカラーも薄紫、緑、青紫と変わり、年輪を重ねて多少色あせたロードレーサーは、フレームだけとなって、次の塗り替えを、押し入れの隅で待っていました。
毎度、塗り替え直後は大事にし過ぎて、余り乗ることもせず、輪行もしないで、パーツを取っ替え引っ替えして、眺めていることが多く、「自転車に乗らないサイクリスト」というジャンルに ゛ドップリ ゛と浸っていました。
Kは、そんなAを見て、゛錆が、出てるわよ! ゛と、時々、揶揄しました。
ある時、「古希まであと少し、[終活]を考えてもおかしくない歳なんだ。新しく塗り替えて、大事にしているよりは、傷だらけにして乗り潰してやるのが、本望かな?」と思いました。自転車にのめり込んでいた頃の20代に、溜め込んだ部品や組み立て工具が、物置の隅にまだ残っておりましたので、再生・組み立て作業を始めました。
何しろ1970年代前後から10年間に頼る記憶・資料のため、おかしな話・表現、つじつまの合わない事が結構ある内容となる事は必至なので、お許し下さい。また、実作業の方法は、Old Partsの華やかりし頃、スティールフレームのビルダー達が、品質を競った時代ですので、視線を低くして、お読み下さい。
〇フレーム(560mm(Seat)×545mm(Top))
レイノルズ531(マンガンモリブデン鋼・11本フルセット・ダブルバテッドチューブ)、フロント&リヤ・カンバニョロレコードアイレット付きロードエンド、ナベックス プロフェッショナル コンチネンタル ラグセット(3点・フォーク肩・BB)BBに刻印有り、ブレイズドオン(直付け)皆無、チェーンステーブリッジ横穴加工無し、カンパニョロレコードトラックヘッド小物セット・バラベアリング、ストロングライト49D用BBワンコッタレスシャフトセット・国産ハンガーリテーナー
※フロント&リヤエンド当たり面メッキ・リヤエンド当たり面TOEIの刻印有り
(ヘッドチューブ回り)
(ボトムブラケット回り)
〇錆び(鉄パーツ)と軽合金腐食(フェンダー・チェーンホイール・ハブ・リム)の除去
今回鉄部の錆落としに「花咲かGタンククリーナー」という、中性で界面活性剤を主原料にした錆取り・防錆剤を使ってみました。通常ですと、研磨剤を含んだピカールや目の細かい紙や布、樹脂製のヤスリを使用しますが、どうしてもメッキ部分は、剥離し、くすんでしまいます。液体の「花咲かG~」は説明書きによると、「水で10倍~20倍に希釈、軽い錆びは5~10時間、酷いものは24時間以上浸け置きする。1回限りの使い捨てではなく、処理時間や能力は低下するが、繰り返し使用できるため経済的である。尚、鉄専用で、アルミ・ステンレス、樹脂には使用不適当」とあります。1㍑¥5,000と、ちょっと高価ですが、効能通りとすれば、案外、お買い得かもしれません。
ヘッド小物セット・ボトムブラケット(BB)・前後ハブQウィックシャフト、ネジ類の油分除去、水洗浄等を行って、各パーツを5時間ほど浸しました。
(錆びた前後QウィックシャフトとBBワンセット)
(「花咲かG~」と浸け置き中のパーツ)
(酷い錆が結構落ちたパーツ類)
上記写真は、「花咲かG~」50ccを10倍の500ccに希釈して使用しました。使用後の容器内には、゛錆び ゛の残滓らしきものが残りましたので、漉して使用液を保存しました。使用液を2度程使いましたが、説明通り能力が減衰しているようなので、浸け置き時間を倍にして、オリジナル液を多少追加しました。塗装剥離剤のように刺激で肌を傷めることも無く、写真の効果を得られましたので、充分な効用感を感じました。
自転車のフレームカラーは、持ち主の一番の自己主張であり、乗る人の個性を表現していると思います。懲りに凝って、乗り手の要望を色々満たした自転車ほど、地味な色(単なる見た目で)のフレームカラーというのが、今までオーダーメイド・サイクルを多数見てきたAの感触です。現在は、何十万色の内、オーダー主とビルダーの品格や熟練工・カラーコーディネーター達とのバトルの末に決まった……などと言うカラーも、あるのかもしれませんが。
フレームカラーは、色々ありますので、選択の楽しみもありますが、大方の自転車の部品カラーは、あの「燻し銀」の軽合色の1色でした。「燻し銀」だから、カラフルなフレームカラーが映えるとも言えるのかもしれません。つまりは、古くくすんで腐食した軽合色をほどよく研磨して、新品当時の輝きを取り戻すことが出来れば、色好い ゛新車そっくりさん ゛に出来上がるはずです。
20~30年放置された軽合金パーツの腐食を研磨するのは、並大抵ではありませんが、時間と手間を掛けて成し遂げたあとの ゛あの輝き ゛は、除草したあとの満足感と似たところが、ありました。作業は、繊細な曲面が多いパーツ類ですので、機械でのバフ掛けで終了というわけでは収まりません。昔の方法と何ら変わらず、研磨剤を含んだ液体の「ピカール」と半凝固体の「コンパウンド」とウエス、目立たない所の荒い研磨は布ヤスリを2~3種類使い、時間を掛けて手作業の忍耐と根気の勝負です。
(磨きに使った各種研磨剤と布ヤスリ)
(幾分輝きを取り戻した前フェンダー)
(腐食して汚れたFIAMME赤ピスト用28穴リム)
〇車輪回り
FIAMME赤ピスト用28穴パイプリム鳩目つき 15番ステンレスプレーンスポーク カンパニョロ レコード ラージフランジ Qウィックレリーズロードハブ28穴 Vittolia Formular Uno Tubular 21mm/300g
30数年前、ピスト用リムをお遊びでロードハブに組みました。普通の堅さで組んだ後、スポーク上に乗り、体重を預けて締め直しました。当時、28穴リムは、ピアノ線でスポークの交差箇所を縛り、ハンダ付けして、カチカチのものを組み上げていたと思いますが、そこまではやりませんでした。今回、車輪にブレ・緩み等はありませんでしたので、そのままの状態で乗ることにしました。
乾いたリムセメントを、ナイフや丸ヤスリ、布ヤスリなどで削り落とし、コンパウンドで磨きました。本来、スポーク・リム、ハブをバラして、個々に磨けば良いのでしょうが、気力と根気が ゛それ ゛をさせてくれませんでした。振れ取り台はありますが、組み上げまでの忍耐が無くなっていると思いました。
1ペアの車輪の磨きで、優に5時間以上は費やしました。ハブのグリース交換は、磨きと同じ理由で、今回はしませんでした。グリース交換は、ヘッド部分とBBのみ行いました。
(汚れて腐食したHub)
(研磨後のHub)
今回は、スポルティーフ仕様として、日常のポタリング(自転車散歩)程度に乗る積もりでいましたので、耐久性と機能面で扱いやすい700C(リム)を考えていました。
近くのスポーツサイクル店へATOMのSFQRHub36穴を持ち込み、「700Cリムで1ペア組んで欲しいですが?」と相談しました。店主曰く「クリンチャーですか?」、(A)「いやW/O用のリムです」と、Aにとって耳新しい言葉を初めて聞いたので、噛み合わない返事が行き交いました。店主「レトロの古いパーツは扱わないので、今でも扱っているお店を紹介しますよ!」と言われ、新松戸の聞いたことのある自転車店の番号メモを渡されました。初めてのお店でもあり、「面倒臭いお客」と思われたかもしれませんが、他店を紹介してもらっただけでも、有り難いことでした。
この事があってから、「クリンチャー」という名称や、昨今の自転車事情をちょっと調べてみました。スポーツバイク購入者と販売店のアフターフォローのサービスについては、高額な自転車のHOW TOや維持管理、サプライ消耗品の補給という点からも、お互いが持ちつ持たれつの関係は、数十年前と変わることは無く、飛び込みや一見さんのお客については、お店側も一歩引いて構える事は、他業種と同じでありました。Aの ゛戻りサイクリスト ゛のように、数十年前の知識と古い持ち自転車を生かしたいと思う、一種の趣味人については、こちら側がその様な部品や当時の気質を知るSHOPを探して訪ねないと、相手にして貰えないような感じを持ちました。新しい自転車を購入して、地元のプロショップと新たな関係を築いて、新境地のサイクルライフを求めることは可能かもしれませんが、古希を前にしたAには、気力・体力・知力、ゼネレーションギャップ等々で、如何にし難いのが現実なように思われました。
リム組専門店が、相応の価格で扱っていることをWebサイトで見つけましたが、28穴リムを引き続き使用することにしました。
チューブラタイヤは、太くて耐久性のある安価なものを探しましたが、練習用と謳っているVittoliaのタイヤを予備も含め、3本購入しました。タイヤ接着には手間のかからない専用リムテープを考えていました。余りにも古いVELOXのリムテープJANTEXが1組分ありましたが、使う気にはなれません。AMAZONでmiyataの専用接着テープ(16mm)を購入しました。なかなかの優れもので、昔のリムセメントやテープで、苦労しながら装着したことを考えれば、至って簡単、きれいに仕上がりました。要は、両面テープのタイヤ接着面の剥離紙をタイヤの芯出し後に、ゆっくり引き抜くことにより、きれいに手も汚れること無く接着できるからです。チューブラは、予備タイヤを持ち歩くことで多少の不便がありますが、このように改良されたリムテープがあれば、幾分なりとも、その点は解消されたように思いました。
(相当古いVELOXのリムテープ)
(便利で使いやすいmiyataの接着リムテープ 16mm×20m)
(Vittolia Formular Uno Tublar 21mm/300g)
(磨きに磨いて再生した車輪1ペア)
この項「再生 スポルティーフ (2)」に続きます。