Feelin' Groovy 11

I have MY books.

反芻しない。

2008-08-05 | 村上春樹
昨日下記の文章を思い出した。


 「本当のことを聞きたい?」
  彼女がそう訊ねた。
 「去年ね、牛を解剖したんだ。」
 「そう?」
 「腹を裂いてみると、胃の中にはひとつかみの草しか入ってはいなかった。
  僕はその草をビニールの袋に入れて家に持って帰り、机の上に置いた。
  それでね、何か嫌なことがある度にその草の塊りを眺めてこんな風に
  考えることにしてるんだ。何故牛はこんなまずそうで惨めなものを
  何度も何度も大事そうに反芻して食べるんだろうってね。
  彼女は少し笑って唇をすぼめ、しばらく僕の顔を見つめた。
 「わかったわ。何も言わない。」
  僕は肯いた。
         (『風の歌を聴け』村上春樹著 講談社 太字:groovy)


もちろん、嫌なことでも一通りその原因や対策を考えるのは必要だと思う。
でもそれをしたら、終わり。
反芻しない。
もうそのことは忘れればいい。
忘れられないのは
自分がそれに浸っていたいだけなんだ、と
むしろそれを望んでいるんだと思えてしまうんですが、ね。

牛の反芻を思い出してw
苦しむよりも楽しい時間を多くとってほしい。

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