恩師のご著書「講演集」より
講演集、 二
人は生まれにより、その行いによって尊さが出る――イエスの生誕
イエス様の生誕についてよく質問を受けます。
「聖書には処女懐妊と説かれていますが、現実はどうだったのでしょうか、
母マリアはヨセフと婚約をしていたが、
まだ一緒にならない前に聖霊によって身重になった、と書かれています。
先生はどう思われますか」と。
信じる信じないはその人その人の自由です。
皆様もよくご存じことと思いますけれど、聖書について、
ちょっとお話をしましょう。
その時代のエルサレム統治者ヘロデ王の代にユダヤのベツレヘムで
イエスがお生まれになりました。
東方から博士たちがエルサレムに来て、
「ユダヤの王としてお生まれになった方はどこにおられますか。
私たちは東のほうでその星を見たので、その方を拝みに来ました」
と聞いて回ったので、人々の噂がヘロデ王の耳にも入ったのです。
王も人々も不安を感じすにはおれません。
自分が今、王として君臨しているのに、
予言者の書にベツレヘムにユダヤの王が生まれると書かれてあることを知り、
自分の地位が危なくなると思ったのでしょう。
なんとかしてその子を見つけ出して殺してしまおうと思ったのです。
そこで、東方の博士たちを呼んでその子をうまく捜し出すように命じます。
博士たちは星に導かれて、ある家に入りました。
そこで母マリアとそばにいる幼子に会い、ひれ伏してその御子を拝み、
贈り物をささげて、
そのまま他の道を通って自分の国へ帰ってしまいました。
マリアの夫のヨセフは身の危険を感じ、マリアと幼児を連れてエジプトへ
逃げてしまいました。
ヘロデ王はその子が見つからないので、
ベツレヘムとその地方の二歳以下の子を全部殺してしまえば、
王といわれる子も殺せると思い、実行してしまったのです。
これは、自己保存の恐ろしい心の現れといえます。
自分を守ろうとして幼い男の子を全部殺したとしても、
時が来れば人は死ななくてはなりません。
ヘロデ王が死んだ後、ヨセフは家族でイスラエルへ帰って来ますが、
王の息子アチラオが
ユダヤを治めていることがわかり、イスラエルから離れたガリラヤ地方の
ナザレの町に住み着くことになります。
この話の中で、何度か神の使いが導いています。
しかし現実の人間社会の中で、ヨルダン川でヨハネより
バプテスマ(洗礼)を受けるまでのイエスを、
神の御子と誰が信じたでしょうか。