生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼シリーズ(185)メタ倫理学

2021年01月25日 08時17分39秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼シリーズ(185)
TITLE: 「メタ倫理学
書籍名; 「メタ倫理学入門」 [2017]
著者;佐藤岳詩  発行所;勁草書房
発行日;2017.8.20
初回作成日;2021.1.24 最終改定日;
引用先;様々なメタ
 


このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。

「メタ」の意味は色々あるが、この著者は、「一歩下がってあれこれ考えてみる」としている。ここで、「あれこれ」が気になる。つまり、「メタ」を考える最終目的が見えない。
 
メタ倫理学の歴史について、少し書かれている。1903年にイギリスの哲学者G.E.ムーアという人が「倫理学原理」を発行した。20世紀の初めは「原理」などを語ることが多い時代だった。しかし、彼は「善」の研究を主に行い、結論は「善は定義できない」だった。」(p.27)
 この書の著者は、2010年に北大の文学研究科博士課程修了とある。「メタ」を語るには随分と若いが、当時の研究者仲間について書いている。日本のメタ倫理学の歴史は、1950年代に始まり、当時は研究が進んだが、彼の時代になるとだれも研究しなくなった。諸先輩を含めて、ヒューム、ロック、カントなどの過去の個人の業績の研究ばかりだった、と書いている。典型的な学問の専門化による分化だった。そこで彼は、ニッチを選んだようだ。(p.325)
 
 本題に戻る。例題で説明をしている。
 「いじめは悪い」⇒「そこで言われた、悪いとはどういう意味か?」⇒「何故、悪いことをしてはいけないのか?」⇒「何が悪いことで、何が悪いことでないと決められるのか?」との疑問に最終回答を与える為としている。(pp.ⅱ~ⅲ)
つまり、「正しい答えがあるとすると、どうすれば、それがわかるか」、「倫理や道徳は科学によって説明ができるか」といった命題がいくつも掲げられている。(p.ⅲ)
 
 倫理学は、規範倫理学、応用倫理学、メタ倫理学の3つにわけられる。規範と応用の関係は、物理学と工学の関係に似ているという。物理学で様々な物体の性質や働きを解明して、工学はそれを利用して実際の工業製品を創り出す、というわけである。(p.5)
 そうすると、同様に物理学、工学、メタエンジニアリングという三つの並びが考えられる。こうなるとメタエンジニアリングは、随分と大規模になってしまう。
 
 もう一つ共通しているところがある。多くのWhyを追求することは共通は当然としても、その中でも「正しいこと」の追求が突出している。倫理学なのだから、当然と思えるのだが、エンジニアリングでも、やはり「正しいこと」を追求しなければならない世の中になっている。メタエンジニアリングの場合には、自らの創造物が地球に対して正しいこと、人類に対して正しいことかどうかを、十分に吟味する必要がある。
 その後に、メタ倫理学の役割が二つ述べられている。第1は「議論の明確化」であり、倫理については、色々な立場の人が色々な意見を持っている。その場合の議論の筋道をはっきりと示そうとしている。
 第2の役割は、「自分たちの倫理の見直し」としている。このことも、メタエンジニアリングの「現在のエンジニアリングの結果の見直し」に通じている。
 「メタ」にも色々あるが、常にどこかに共通点が見いだされる。