メタエンジニアの眼シリーズ(142)
書籍名;「賢者たちのダイアローグ [2019] 編者;野中幾次郎・紺野登 発行所;千倉書房
発行日;2019.5.12
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。
副題は「トポス会議の実践知」とあり、12回(2012~2018)にわたる会議の内容を示している。各回のテーマに対する発言の概要と、120人の講演者の代表者の短文が載せられている。項目が多いので、キーワードの列挙にとどめた。
0. はじめに;「形式知万能主義の崩壊」野中幾次郎
・人間の知力はIQではなく、意欲、自制心、やり抜く力、感謝などの暗黙知系で育つ。
・未来の創造は、経験(暗黙知)の本質を言語化、理論化、コンセプト化して普遍性を持たせる。
・マネジメントの究極の考え方は、アリストテレスの「共通善」という価値基準。
・全世界的な視点で「善」とは何かを考える場所「トポス」が必要と考えた。
1. 人間の知性とコンピューター科学の未来
・195手詰め将棋、プロで2日かかるが、コンピューターは0.1秒で解いた(米長邦夫)
・「みる」は見、視、観、看の4種類あるが、「観」は人間だけのモノ。(米長邦夫)
・シンギュラリティー大学教授として毎年講義、これを信じる学生は5%だけ。(Paul Saffo)
・人間の最も根本的な欲望は、協力し合い、話し合い、新しいことを発見すること。(Paul Saffo)
・ダイナブックのBOOK(Basic Organization of Knowledge;知識の基本的な統合)。(Alan Kay)
・ソクラテスは自分の教えを文章に残すことに反対した。(同上)ブッダ、キリストも同じだった
・感情が冷めると知性も機能しなくなる。AIの核心は「マシンと脳の相互可塑モデル。(Cath. Malabou)
・「AI(After Internet)の9原則。地図⇒羅針盤、教育⇒学習、強さ⇒回復力、安心性⇒リスク(伊藤穣一)
2. ソーシャル・イノベーションと21世紀の資本主義
・企業は、経済機関としてではなく、社会機関としての活躍が求められる。
・資本主義が変容して、企業が社会的活動で利益を生む時代が訪れる。
・エピステーメ(科学的知)、テクネー(技術的知)は無目的で、フロネシス(実践知)で選択し活用。
・CRS(Corporate Social Responsibility)⇒CSO(Opportunity)。 責任⇒機会へ。
・ドイトン開発プロジェクト、健康・生計・教育の自助努力を援助で半世紀活動。(Disnadda M R Diskul)
阿片農民⇒林業労働者(コーヒー、ナッツ)で毎日の現金収入へ
3. 日本の安全保障とグローバル・ビジネス
・必要あれば戦うことが安全保障 ⇒ロボットの役割(覚悟への言及がない日本)(Martin Creveld)
・グローバル・リスク;アメリカの殺人事件は日本の5.7倍、強盗事件は39.6倍(大越 修)
・問題が発生した時に国民をどう守るか。沖縄の第3海兵遠征軍の広大なカバー範囲 (Michael Green)
4. イノベーティング・イノベーション
・イノベーションの本質は、脱国家主導、脱サプライサイド経済。
・システム全体を把握して、リニアモデルからコンカレントで螺旋状に課題解決を。(国井秀子)
・米国の復活と日本の課題。相手の持っていないものへの集中とビジネス戦略(安藤国威)
・若い世代の活用法;知識に執着せずに、現在関係ない他のメソッドの活用を。(Alan Kay)
・戦争に対する懸念 ⇒製造過程で色々得られて、多くは民分野で応用可能(同上)
5. 日本のソーシャル・ランドスケープを構築する
・地形を読み、土地の有する潜在力と社会資本を統合して、新たな社会基盤を創造する。
・無限から有限(ベルサイユ宮殿)と有限から無限(竜安寺)の根本的な違い。
・意識(経済)・潜在意識(教育)・無意識(家族観)の3レベルで考える。(Emmanuel Todd)
・日本とドイツは、教育の高度化と家族レベルでの生活の仕方に矛盾がある ⇒出生率の差。(同上)
・都市経済学+地域経済学+国際経済学 ⇒全体を包括した空間経済学へ。(藤田昌久)
・頭脳の多様性と自立性(個人、企業、教育、大学、都市、地域での蓄積で相乗効果を)(同上)
6.エイジング3.0
・エイジング1.0;ただ歳をとる。 エイジング2.0;近い将来直面する課題を取りざたする
・エイジング3.0;2050年に向けた賢者の域から、働き方、知のありかた。⇒社会システムと実体の乖離の中で
⇒人生における本当の目的 (アリストテレス的発想)⇒自分自身、真の目的。
・テイツアーノ「賢慮の寓意」ライオン、オオカミ、犬 ⇒男性、老人、若者を示す ⇒賢慮のありか
・知のペアリング;長老のうろ覚えと若者の検索力 ⇒フラットなネットワーク、新たな知の生成
7. 賢慮資本主義宣言
・新しい資本主義のあるべき姿 ⇒日本発の資本主義を構想する
・長寿企業の実践知経営が日本型の資本主義の原点 ⇒賢慮の視点
・経済成長(パイを大きくする)と所得配分問題 ⇒不平等の肯定と否定論(吉川 洋)
・ハイエク思想;自由な条件下での歴史的発展の事実(暗黙知の中にある)⇒知の結合(太子堂正称)
・プルーラル・セクター(多元的部門)による官民バランスの創造と維持(ヘンリー・ミンツバーグ)
・今の資本主義ではバランスは保てない。自立・独立性のあるプルーラル・セクターに期待(同上)・
・政府が資本主義の転換期を認めていないのは異常(J.K.ガルフレイズ)
8.「産業・社会・環境」革命の衝撃
・哲学・倫理学、歴史・文化から未来を考えるための実践知を知ること
・IOTではなく、IOE(of everything)と考えるべき。
・次世代はハイパー・コネクテッド・ワールドで、ビックデータで全てが繋がる。(佐伯秀幸)
9.都市のイノベーション
・グーグルの都市イノベーション、「サイドウオーク・ラボ」と「インターセクション」活動
・都市内でのface to face交流がより重要になる。(ジョエル・ガロー)
・グロバル・シティーの主要機能は仲介、経済の媒介(サスキア・サッセン)
10.人新世のヒューマン・ビルディング、次世代を拓く人間の創造
・「現象学」は、アートとサイエンスを綜合する哲学であり企業経営に有用
・人間の主観は共感から生まれたとする現象学の次世代への影響(野中郁次郎)
・社会にとっての教育の意味と重要性が増す。(ヤン・スターマン)
・世阿弥の「初心忘するべからず」は、歳をとってから過去は捨てることによる初心(安田登)
・薪能の現象学は、雨が降りそうになると、合図も無しに最後の場面に飛ぶこと(同上)
11.21世紀にふさわしい日本的経営を構想する
・「効率とは物事を正しく行うこと、効果とは正しいことを行うこと、byドラッガー(R.ストラウブ)
・ドラッガーは経営について考えるときは、つねにwhyから始めていた。(同上)
・日本は米国型モデルは中途半端で良い、新たな現実(高齢化、モジュール化)へ(S.K.ヴォーゲル)
12.社会への満足度を高めるオルタナティブ創造社会への挑戦
・米国と中国との中間型市場経済の日欧(加護野忠男)
・中間型はライン型資本主義で、株主第一ではなく、様々な利害関係者への配慮(同上)
・京セラの強みは、平凡な技術から非凡な結果を出す仕組み。新技術では勝てない。(同上)
書籍名;「賢者たちのダイアローグ [2019] 編者;野中幾次郎・紺野登 発行所;千倉書房
発行日;2019.5.12
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。
副題は「トポス会議の実践知」とあり、12回(2012~2018)にわたる会議の内容を示している。各回のテーマに対する発言の概要と、120人の講演者の代表者の短文が載せられている。項目が多いので、キーワードの列挙にとどめた。
0. はじめに;「形式知万能主義の崩壊」野中幾次郎
・人間の知力はIQではなく、意欲、自制心、やり抜く力、感謝などの暗黙知系で育つ。
・未来の創造は、経験(暗黙知)の本質を言語化、理論化、コンセプト化して普遍性を持たせる。
・マネジメントの究極の考え方は、アリストテレスの「共通善」という価値基準。
・全世界的な視点で「善」とは何かを考える場所「トポス」が必要と考えた。
1. 人間の知性とコンピューター科学の未来
・195手詰め将棋、プロで2日かかるが、コンピューターは0.1秒で解いた(米長邦夫)
・「みる」は見、視、観、看の4種類あるが、「観」は人間だけのモノ。(米長邦夫)
・シンギュラリティー大学教授として毎年講義、これを信じる学生は5%だけ。(Paul Saffo)
・人間の最も根本的な欲望は、協力し合い、話し合い、新しいことを発見すること。(Paul Saffo)
・ダイナブックのBOOK(Basic Organization of Knowledge;知識の基本的な統合)。(Alan Kay)
・ソクラテスは自分の教えを文章に残すことに反対した。(同上)ブッダ、キリストも同じだった
・感情が冷めると知性も機能しなくなる。AIの核心は「マシンと脳の相互可塑モデル。(Cath. Malabou)
・「AI(After Internet)の9原則。地図⇒羅針盤、教育⇒学習、強さ⇒回復力、安心性⇒リスク(伊藤穣一)
2. ソーシャル・イノベーションと21世紀の資本主義
・企業は、経済機関としてではなく、社会機関としての活躍が求められる。
・資本主義が変容して、企業が社会的活動で利益を生む時代が訪れる。
・エピステーメ(科学的知)、テクネー(技術的知)は無目的で、フロネシス(実践知)で選択し活用。
・CRS(Corporate Social Responsibility)⇒CSO(Opportunity)。 責任⇒機会へ。
・ドイトン開発プロジェクト、健康・生計・教育の自助努力を援助で半世紀活動。(Disnadda M R Diskul)
阿片農民⇒林業労働者(コーヒー、ナッツ)で毎日の現金収入へ
3. 日本の安全保障とグローバル・ビジネス
・必要あれば戦うことが安全保障 ⇒ロボットの役割(覚悟への言及がない日本)(Martin Creveld)
・グローバル・リスク;アメリカの殺人事件は日本の5.7倍、強盗事件は39.6倍(大越 修)
・問題が発生した時に国民をどう守るか。沖縄の第3海兵遠征軍の広大なカバー範囲 (Michael Green)
4. イノベーティング・イノベーション
・イノベーションの本質は、脱国家主導、脱サプライサイド経済。
・システム全体を把握して、リニアモデルからコンカレントで螺旋状に課題解決を。(国井秀子)
・米国の復活と日本の課題。相手の持っていないものへの集中とビジネス戦略(安藤国威)
・若い世代の活用法;知識に執着せずに、現在関係ない他のメソッドの活用を。(Alan Kay)
・戦争に対する懸念 ⇒製造過程で色々得られて、多くは民分野で応用可能(同上)
5. 日本のソーシャル・ランドスケープを構築する
・地形を読み、土地の有する潜在力と社会資本を統合して、新たな社会基盤を創造する。
・無限から有限(ベルサイユ宮殿)と有限から無限(竜安寺)の根本的な違い。
・意識(経済)・潜在意識(教育)・無意識(家族観)の3レベルで考える。(Emmanuel Todd)
・日本とドイツは、教育の高度化と家族レベルでの生活の仕方に矛盾がある ⇒出生率の差。(同上)
・都市経済学+地域経済学+国際経済学 ⇒全体を包括した空間経済学へ。(藤田昌久)
・頭脳の多様性と自立性(個人、企業、教育、大学、都市、地域での蓄積で相乗効果を)(同上)
6.エイジング3.0
・エイジング1.0;ただ歳をとる。 エイジング2.0;近い将来直面する課題を取りざたする
・エイジング3.0;2050年に向けた賢者の域から、働き方、知のありかた。⇒社会システムと実体の乖離の中で
⇒人生における本当の目的 (アリストテレス的発想)⇒自分自身、真の目的。
・テイツアーノ「賢慮の寓意」ライオン、オオカミ、犬 ⇒男性、老人、若者を示す ⇒賢慮のありか
・知のペアリング;長老のうろ覚えと若者の検索力 ⇒フラットなネットワーク、新たな知の生成
7. 賢慮資本主義宣言
・新しい資本主義のあるべき姿 ⇒日本発の資本主義を構想する
・長寿企業の実践知経営が日本型の資本主義の原点 ⇒賢慮の視点
・経済成長(パイを大きくする)と所得配分問題 ⇒不平等の肯定と否定論(吉川 洋)
・ハイエク思想;自由な条件下での歴史的発展の事実(暗黙知の中にある)⇒知の結合(太子堂正称)
・プルーラル・セクター(多元的部門)による官民バランスの創造と維持(ヘンリー・ミンツバーグ)
・今の資本主義ではバランスは保てない。自立・独立性のあるプルーラル・セクターに期待(同上)・
・政府が資本主義の転換期を認めていないのは異常(J.K.ガルフレイズ)
8.「産業・社会・環境」革命の衝撃
・哲学・倫理学、歴史・文化から未来を考えるための実践知を知ること
・IOTではなく、IOE(of everything)と考えるべき。
・次世代はハイパー・コネクテッド・ワールドで、ビックデータで全てが繋がる。(佐伯秀幸)
9.都市のイノベーション
・グーグルの都市イノベーション、「サイドウオーク・ラボ」と「インターセクション」活動
・都市内でのface to face交流がより重要になる。(ジョエル・ガロー)
・グロバル・シティーの主要機能は仲介、経済の媒介(サスキア・サッセン)
10.人新世のヒューマン・ビルディング、次世代を拓く人間の創造
・「現象学」は、アートとサイエンスを綜合する哲学であり企業経営に有用
・人間の主観は共感から生まれたとする現象学の次世代への影響(野中郁次郎)
・社会にとっての教育の意味と重要性が増す。(ヤン・スターマン)
・世阿弥の「初心忘するべからず」は、歳をとってから過去は捨てることによる初心(安田登)
・薪能の現象学は、雨が降りそうになると、合図も無しに最後の場面に飛ぶこと(同上)
11.21世紀にふさわしい日本的経営を構想する
・「効率とは物事を正しく行うこと、効果とは正しいことを行うこと、byドラッガー(R.ストラウブ)
・ドラッガーは経営について考えるときは、つねにwhyから始めていた。(同上)
・日本は米国型モデルは中途半端で良い、新たな現実(高齢化、モジュール化)へ(S.K.ヴォーゲル)
12.社会への満足度を高めるオルタナティブ創造社会への挑戦
・米国と中国との中間型市場経済の日欧(加護野忠男)
・中間型はライン型資本主義で、株主第一ではなく、様々な利害関係者への配慮(同上)
・京セラの強みは、平凡な技術から非凡な結果を出す仕組み。新技術では勝てない。(同上)
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