『むらさきのスカートの女』 今村夏子 (文藝春秋2019年9月号より)
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。
芥川賞受賞作。読みやすかった。しかし、変だと思っていたむらさきのスカートの女がおかしいのではなく、黄色いカーディガンの女がぶっ壊れているのではと思いだし。また、むらさきのスカートの女と黄色いカーディガンの女が混じりだして。煙にまかれたような読後感だった。
『女流放談 -昭和を生きた女性作家たち』 イメルラ・日地谷=キルシュネライト 岩波書店
三十余年の永い眠りの時を超えて奇跡的に日の目を見た貴重な生の声。1982年春、編者は、数か月の日本滞在中に、当時活躍中の女性作家たちに公衆電話からアポイントを入れ、突撃インタビューを敢行した。まだ駆け出しのドイツ人日本文学研究者であった聞き手に対し、驚くほど率直に、またくつろいで親密に語る各年代の作家たちの本音とは?当時は実現しなかった瀬戸内寂聴氏への特別インタビューも収録。
イメルラさんは、すごく本を読んでおり、日本文学の造詣の深さに驚いた。それに、「〇〇さん(実名)はこう言っているが、どう思いますか?」という直球のインタビューの内容にも。
また、インタビューには、印象的なさまざまな女性作家たちの言葉がいっぱいある。
佐多稲子さん「『女は怖いよ』というのは、男性たちの逃げ口上なんですよ。自分たちがいつも悪いから」
戸川昌子さん「男性は奉仕されることに慣れてしまっている」
中山千夏さん「一番大切なことは馬鹿にされるのを恐れないこと。男の人は自分の価値基準を信じているから、それから外れた者を馬鹿にするんです。」
30数年前の言葉を読みながら、現在はどれほど変わっただろうかと思ってしまう。職場で同僚の女性のフォローを当たり前のように受けている男性を見たりするとね。
『THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』 ナディア・ムラド 吉井智津訳 東洋館出版社
「この世界でこのような体験をする女性は、私を最後(ラスト・ガール)にするために―」貧しくも平和な村で、愛する家族と暮らしていたナディア・ムラド。しかし、イスラム国の脅威は次第に強まり、ついに虐殺と収奪の日が訪れた― イスラム国による虐殺や性暴力・暴力がはびこる地域から決死の覚悟で脱出し、支配地域の現状を世界に発信するまでに彼女はなる。
ナディア・ムラドは、2018年ノーベル平和賞受賞者。穏やかな生活を送っていたナディアを襲ったイスラム国。ナディアは、人を人と思わず、傷つけても構わない存在として扱われる。以前が愛に満ちていた暮らしだっただけに、その落差は大きく、愕然とする。魂が破壊されたといってもいいだろう。
宗教指導者が、無理矢理信じる宗教をイスラム教に替えられたし、無理矢理性奴隷にされたので、彼女たちは被害者であり、批判されることはないと言ったことは、よかったと思う。彼女たちが元のコミュニティに温かく迎えられるべきだと。しかし、完全に普通に戻ったのではないという彼女の言葉は重い。
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。
芥川賞受賞作。読みやすかった。しかし、変だと思っていたむらさきのスカートの女がおかしいのではなく、黄色いカーディガンの女がぶっ壊れているのではと思いだし。また、むらさきのスカートの女と黄色いカーディガンの女が混じりだして。煙にまかれたような読後感だった。
『女流放談 -昭和を生きた女性作家たち』 イメルラ・日地谷=キルシュネライト 岩波書店
三十余年の永い眠りの時を超えて奇跡的に日の目を見た貴重な生の声。1982年春、編者は、数か月の日本滞在中に、当時活躍中の女性作家たちに公衆電話からアポイントを入れ、突撃インタビューを敢行した。まだ駆け出しのドイツ人日本文学研究者であった聞き手に対し、驚くほど率直に、またくつろいで親密に語る各年代の作家たちの本音とは?当時は実現しなかった瀬戸内寂聴氏への特別インタビューも収録。
イメルラさんは、すごく本を読んでおり、日本文学の造詣の深さに驚いた。それに、「〇〇さん(実名)はこう言っているが、どう思いますか?」という直球のインタビューの内容にも。
また、インタビューには、印象的なさまざまな女性作家たちの言葉がいっぱいある。
佐多稲子さん「『女は怖いよ』というのは、男性たちの逃げ口上なんですよ。自分たちがいつも悪いから」
戸川昌子さん「男性は奉仕されることに慣れてしまっている」
中山千夏さん「一番大切なことは馬鹿にされるのを恐れないこと。男の人は自分の価値基準を信じているから、それから外れた者を馬鹿にするんです。」
30数年前の言葉を読みながら、現在はどれほど変わっただろうかと思ってしまう。職場で同僚の女性のフォローを当たり前のように受けている男性を見たりするとね。
『THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』 ナディア・ムラド 吉井智津訳 東洋館出版社
「この世界でこのような体験をする女性は、私を最後(ラスト・ガール)にするために―」貧しくも平和な村で、愛する家族と暮らしていたナディア・ムラド。しかし、イスラム国の脅威は次第に強まり、ついに虐殺と収奪の日が訪れた― イスラム国による虐殺や性暴力・暴力がはびこる地域から決死の覚悟で脱出し、支配地域の現状を世界に発信するまでに彼女はなる。
ナディア・ムラドは、2018年ノーベル平和賞受賞者。穏やかな生活を送っていたナディアを襲ったイスラム国。ナディアは、人を人と思わず、傷つけても構わない存在として扱われる。以前が愛に満ちていた暮らしだっただけに、その落差は大きく、愕然とする。魂が破壊されたといってもいいだろう。
宗教指導者が、無理矢理信じる宗教をイスラム教に替えられたし、無理矢理性奴隷にされたので、彼女たちは被害者であり、批判されることはないと言ったことは、よかったと思う。彼女たちが元のコミュニティに温かく迎えられるべきだと。しかし、完全に普通に戻ったのではないという彼女の言葉は重い。