ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『海うそ』『ベルリンは晴れているか』『それまでの明日』

2019-01-06 17:47:43 | 
 「8時だJ」亮ちゃんと長谷川純くんが歌っている後ろに丸ちゃんと安くんが踊っていたり、雛段に中丸雄一くんや五関晃一くんの名札が見えたり(画像が荒くて顔は確認できず)と昔の画像を楽しんでいる。

 さて、本に浸る幸せな日々。
『海うそ』 梨木香歩 岩波書店
 昭和の初め、人文地理学の研究者、秋野は南九州の遅島へ赴く。かつて修験道の霊山があったその島は、豊かで変化に富んだ自然の中に、廃仏毀釈の波に無残にかき消された人びとの祈りの跡を抱いて、秋野の心を捉えて離さない。五十年後、不思議な縁に導かれ、秋野は再び島を訪れる。
 まず、遅島という架空の島を精密に描き出したことに驚く。透き通った海水を舟でこぎ出すところ、真夜中での山小屋でみたもの、自然描写が清澄で、ただただ美しい。
 崩れていく美学というか。遅島は明治の廃仏毀釈で、さらに現代の観光化で大きな変化をうける。創価学会の同僚が「建設は一生、破壊は一瞬」と言ったが、綿々と続いてきたものが一瞬で破壊される。人の営みが、簡単に失われるのに対し、自然はずっとそこにいる。
 「五十年。私は何をしてきたのだろう。」という秋野の独白が心にささる。
 静かで美しい物語。
 
『ベルリンは晴れているか』 深緑野分 筑摩書房
 1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり・・・
 日本人が描く日本人の出てこないドイツが舞台の小説。戦時中の暮らしがリアルに描かれており驚く。展開は、謎を残しつつ、目まぐるしい。なぜ、アウグステは、訃報を伝えることにこだわるのか?なぜ、ソ連がピンチに助けてくれるのか?ラストは思いもつかないもの。必死で生きようとする人が愛おしく感じる。
 アウグステは、『エーミールと探偵たち』を心のよりどころにしている。辛い時に本が支えになっているのがうれしい。『エーミールと探偵たち』を読み直そうと思った。

『それまでの明日』 原寮 早川書房
 探偵の沢崎は金融会社の支店長から、料亭の女将の身辺調査を依頼される。融資案件についての調査だが、派閥抗争にからむので会社には極秘で、と支店長は告げる。沢崎が調べると、女将はすでに死んでいた。ところが経過を報告しようにも、支店長と連絡がつかない。勤務先の金融会社を訪ねると、強盗事件が発生し、沢崎は巻き込まれてしまう。その後も支店長の行方は依然として不明……。
 私は、この作家さんの本は初めて読んだ。寡作の作家さんで、前作から14年ぶりの長編らしい。
 読んでみて、私はおもしろかった。ページをめくると思いもよらない展開が待っている。一気読みだった。
 クスリと笑える皮肉のきいた一文もあって、楽しめた。
 そして、ラスト。読み終わった後は、呆然としてしまった。

 お正月休みに読んだ本は、すべてよかった。
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