4月文楽公演 豊竹英太夫改め六代豊竹呂太夫襲名披露 第一部 2017年4/8~30 国立文楽劇場
豊竹呂太夫さんの襲名披露の幟
<寿柱立万歳>
三河万歳の太夫と才三の二人連れが、扇や鼓を片手に家々の繁栄を願う言葉を述べ、舞を披露する。
襲名披露にふさわしい、おめでたい演目。太夫さんたちの衣装もピンクで華やか。竹本三輪太夫さん、竹本津國太夫さんの声がいい。ただ、太夫さん全員で唄うのがバラバラな感じがした。いつもなら、全員そろって気持ちのいい感じなのだが・・・。
<菅原伝授手習鑑>
三つ子の梅王丸、松王丸、桜丸は、それぞれ右大臣菅丞相、左大臣藤原時平、帝の弟・斎世親王に仕えている。桜丸と妻の八重が手引きした斎世親王と菅丞相の養女の密会が元で、菅丞相は藤原時平に陥れられて流罪になる。梅王丸と桜丸は吉田神社で恨みを晴らそうと時平一行の前に立ちふさがり、丸王丸と押し問答をするが、時平の威光に何もできなかった。
●茶筅酒の段
梅王丸、松王丸、桜丸の三つ子の父親で菅丞相の下屋敷を預かる白太夫。70歳の誕生日であるが、菅丞相が流罪になったので派手な祝を遠慮して小さな餅に茶筅で酒をふり、近所に配る。そこへ、三つ子の妻たちがやってきて、白太夫は桜丸の妻・八重を氏神詣でに行く。
妻たちの祝膳の支度がおもしろい。一番若い八重さんが、すり鉢をすると自分が回ってしまったり、大根を切るのが下手だったり。
●喧嘩の段
白太夫の留守にやってきた松王丸と梅王丸は、吉田神社の件で喧嘩になり、菅丞相が愛した桜の木を折ってまう。
●訴訟の段
帰ってきた白太夫は、折れた桜には触れずに、松王丸と梅王丸の書きつけを受け取る。菅丞相に元に行くという梅王丸の願いを退け、菅丞相の妻子の行方を探す方が先だと言う。親子の縁を切ると言う松王丸の願いは、聞き届けられる。
●桜丸切腹の段
二組の夫婦が去った後、八重の前に桜丸が現れ、菅丞相流罪の責任を取り切腹すると言う。白太夫が鉦を打ち鳴らし念仏を唱える中、桜丸は切腹する。後を追おうとする八重を様子をうかがっていた梅王丸夫妻がとめる。
鉦の音、念仏、泣く声が悲しみを深くする。竹本文字久太夫さんがいい。
<口上>
三味線の部を代表して、鶴澤清治さんが、ご挨拶。なんでも先代の呂太夫さんは、すごくハンサムだったと繰り返し、笑いを誘う。(資料展示室では、歴代の呂太夫さんを紹介している。確かに五代目の写真を見るとイケメン。四代目が豊竹嶋太夫さんであったこともビックリ)呂太夫さんは、内弟子を経験した人らしい。清治さんは、愛嬌があっておもしろい人だと思った。
人形の部を代表して、桐竹勘十郎さんが、ご挨拶。勘十郎さんは、呂太夫さんと入門、初舞台が一緒だとか。ブラジル公演の時に、海岸でキョロキョロして日焼けをしたと言って笑わせる。勘十郎さんの声を初めて聞いたが、ちょっと高めの声だった。
太夫の部を代表して、豊竹咲太夫さんが、ご挨拶。呂太夫さんは、若い時は詩をそらんじたリ、小説を書いたりと真面目な文学青年だったが、最近は、道頓堀の赤い灯青い灯が好きなようでと笑わせる。
呂太夫さんの挨拶はなかった。清治さんや勘十郎さんの声を聞いたことがなかったので、声が聞けてちょっと嬉しい。
●寺入りの段
菅丞相の息子である菅秀才を預かった武部源蔵夫婦は、寺子屋を開いている。源蔵の留守に、母親に連れられた小太郎という男のが入門しにくる。
師匠の源蔵の留守に、大暴れする子供たちがおもしろい。一人真面目に自習している菅秀才は、一日一字学べば、三百六十字学べると言う。えらいなあ、菅秀才。そういう理屈はわかるけど、なかなかできないのだよ。
●寺子屋の段
時平の家臣・春藤玄蕃は、菅秀才の首を差し出せと源蔵に迫る。源蔵は、自分の留守に弟子入りした小太郎の首を身代わりに差し出す。菅秀才の顔を知っているはずの検分役の松王丸は、小太郎の首を菅秀才のものだとなぜか断定し、玄蕃は首をもって帰る。実は、松王丸夫婦は、菅丞相の恩に報いるため、わが子小太郎を菅秀才の身代わりとして入門させたのであった。
呂太夫さんは、熱演。咲太夫さんは、さすが。咲太夫さんの声と燕三さんのもの悲しい三味線で、すすり泣きの声も。しかし、いい声は心地がいいので眠気を誘う。またまた、いいところで睡魔に襲われるダメな私であった・・・。