芸能界で自分の立場を利用し、新人の女性タレントさんにチョメチョメを強要した、あるいはしようとした男たちが最近、にわかに次々と告発されてます。
それはまぁ、やらかした男たちの自業自得ゆえ同情する気は無いけど、やらかしちゃう気持ちは解らなくもない。若い時にモテなかったヤツほど、権力を持った時にそれを振りかざしたくなるんでしょう。私みたいに。誰がじゃこらあああぁぁぁーっ!?(憤怒)
かつて私も、ちょっとだけエンタメ界の端っこにいた時期があります。
その前に私は、自主制作映画で監督という立場にいました。監督と言えば撮影現場で一番偉い人、っていうイメージがあるでしょうけど、アマチュアの場合は逆です。スタッフにもキャストにも基本ノーギャラで撮影に協力してもらうワケだから、みんなに頭を下げてお願いする立場です。
ましてや女優さん! ルックスが良くて演技も出来て、一銭のトクにもならない素人の映画に出てくれる人なんて滅多にいませんから、そりゃもうミューズみたいな存在で頭が上がりません。
ところが! これがプロの監督になるといきなり逆転しちゃう。それまで「どうか出て下さい」ってお願いする立場だったのが、急に「どうか出して下さい」ってお願いされる立場になるんです。
それを実感したのが、初めて商業作品を撮ることになってオーディションってやつを開いたとき。まぁ低予算映画だから応募して来る人数は知れてるけど、それでも百人以上を審査したと思います。
しかもプロを目指してる人、あるいはブレイク前のプロの人たちだから、はっきり言って自主映画の女優さんとはレベルが違う。そりゃ綺麗なのは当たり前、演技が出来るのも当たり前って人たちです。
そんな女の子たちが、監督……つまり当時の私に選んでもらう為に、みんな全身全霊でアピールして来る! それまでモテたことの無い男が、どんな気持ちになるか想像出来ますか?
マネージャーさんに土下座して頼まれたこともあります。どうか選んでやって下さいって。一生のうち、誰かに土下座される機会なんて、そうそう無いでしょう?
そりゃあ勘違いしちゃいますよ! 自分はとてつもないパワーを手に入れてしまった!って。ある日突然、お祖父ちゃんから「今日からお前は神にも悪魔にもなれるのじゃあ~っ!!」って、マジンガーZを授かった兜甲児みたいなもんです。
幸い、甲児は元より喧嘩も強くて女子にもモテたから、分別があった。けど、もし甲児じゃなくて宮崎勤みたいなヤツがそんなパワーを手に入れてしまったら!?
かく言う私も、兜甲児と宮崎勤のどっちに近いキャラクターかと言えば、残念ながら後者なんだけど、う〜ん……なぜかその立場を利用してモテようとは思いませんでした。モテたい!っていう願望がそもそも希薄だったんでしょう。
まあ、モテるのとチョメチョメを強要するのとは別次元の話かも知れないけど、たぶん園子温さんや木下ほうかさんは、女性に対してかなり歪んだコンプレックスがお有りだったんでしょう。特に園監督はそれがモロ、作品に反映されてましたよね。(だから面白かったんだけど)
ちなみに、私が撮った商業作品のキャスティングで、プロデューサーが挙げた何人かの候補者の中に木下ほうかさんのお名前もありましたw(当時はまだそんなに売れてなかった)
役者さんだってそうですよね。最初は「出して下さい」ってお願いする側だったのが、売れた途端に「出て下さい」ってお願いされる側になっちゃう。これほど急激に立場が180度転換しちゃうのって、エンタメ界以外にはあまり無いかも知れません。だから狂っちゃう。
けど、もうそんな世の中じゃない。エンタメ界に夢が無くなって来たのと比例して、ヤクザまがいの事も出来なくなって行くんじゃないですか? 光も影もない、ただのお仕事。良いんだか悪いんだか……