☆第320話『香港カラテ 対 北京原人 PART2』
(1981.7.18.OA/脚本=高久 進/監督=山口和彦)
結局、雲の上を飛ぶドラゴン(ブルース・リャン)VS タイガーのように勇猛な将軍(レイモンド・タング)の対戦はドローに終わりました。
「なかなかやるじゃないか、雲の上を飛ぶドラゴン」
「お前もな、タイガーのように勇猛な将軍」
「オレたち気が合いそうだな、雲の上を飛ぶドラゴン」
「オレもそう思ってたところだよ、タイガーのように勇猛な将軍」
「よし。2人で手を組み、北京原人の化石でひと儲けしようじゃないか!」
「断る!」
殺伐とした浮世に嫌気がさして僧侶となった雲の上を飛ぶドラゴンにとって、尊いのは現金ではなく、正義。そしてGメンとの友情なのでした。
しかし賀川刑事(范 文雀)の弟=大介(下塚 誠)は未だ香港ギャング一味に囚われ、放置されたまま。これじゃGメンが何のために香港まで来たのか分かりません。
そこで、頼れる上司にしてマダムキラーの立花警部(若林 豪)が待望の参戦! 黒木警視正(丹波哲郎)の計らいにより「雲の上を飛ぶドラゴン」に助っ人を依頼したこと、そして彼と対戦した「タイガーのように勇猛な将軍」の正体も明かしてくれます。
驚くべきことに、彼は重要文化財の密売買を取り締まる中国公安部の、なんと「潜入捜査官」だった! なにぃーっ!? マジか、全然気づかんかった! すっかり騙された!
おそらく、雲の上を飛ぶドラゴンと対戦したのは彼を筋肉お化け(ヤン・スエ)から守るためであり、ひと儲けをそそのかしたのも彼の正義感を試すため。(単に台本が行き当たりばったりだった説もありw)
「私の父は、中国人だったの」
なぜかタイガーのように勇猛な将軍と2人きりになった賀川刑事は、たぶん今回の香港ロケ用に急きょ設定され、演じてる范文雀さんが一番驚いたであろう、出生の秘密を明かします。
「だから私と弟の身体には、あなたと同じ中国人の血が流れてるの」
そうとは知らずに大介を捜査のために利用していたことを、タイガーのように勇猛な将軍は仔猫のように反省します。
「すまなかった。弟さんは必ず、オレが救い出してみせる。約束するよ」
「タイガーのように勇猛な将軍……」
どの国の生まれでも罪なき人は救わなあかんやろ!って思うけど、まあ心情としては解らなくもありません。
しかし、肝心の北京原人の化石は、香港警察の周警部(河合絃司)が金庫に隠したまま。頑固な彼が協力してくれないと香港ギャングと取引できません。
そこで仕方なく、滅多に仕事をしないあの人が、アフリカ像のように重い腰を上げた!
「大霊界はあるんだから仕方がない!」
「黒木警視正!?」
屋内シーンだけしか出ないから、明らかに香港には来てらっしゃらない丹波さんだけどw、ボスのひと睨みだけでどんな強者も逆らえなくなっちゃうのは昭和刑事ドラマのお約束。
ところが、周警部がしぶしぶ開けた金庫の中身は空っぽだった!
そう、周警部もまた、数十億円相当の化石に眼がくらみ、密かに独り占めを目論んでたのでした。これもお約束。
今度は立花警部の出番です。
「子沢山で生活が苦しいのは解る。だが、我々は犯罪を取り締まる側の人間なんです!」
「丹波さんだけじゃなく……私にも見せ場をくれないか?」と小声で囁いたかどうかは知らないけど、若林さんのマダムキラー・ボイスに周警部もついに陥落! ベテラン勢はこれだけで若手より数倍高いギャラを貰えるんだから、まさに継続は力なり!
かくして北京原人の化石を確保したGメンは、再び香港ギャングとの取引に臨みます。まあ結局、また喧嘩するだけなんだけどw
ここでマリコ寺岡刑事(セーラ)がお土産屋さんで買ったヌンチャクを振り回す小ネタを披露し、Gメンのお仕事は早くも終了。
「あっ、雲の上を飛ぶドラゴン!!」
あとはいつも通り、本場のカンフースターたちに全部お任せ。
主役のGメンが闘わなきゃ意味ないやん!って以前は思ってたけど、倉田保昭さんも宮内洋さんも抜けた今、へなちょこアクションを見せられるよりは本場のカンフーをとことん楽しもう!って。
そう割り切って観れば、香港スターたちは実に個性豊かで飽きが来ない! その代表格がヤン・スエさんで、今回もメリメリメリ!とヒーローの前に立ち塞がってくれます。
そして今回もあえなく倒され、渚の土左衛門になっちゃうけど無問題。必ず次回の香港ロケで生き返ってくれますからw
おっと、忘れちゃいけない。香港にはまだリー・ホイサンさんがいた!
「オレにも乳首を出させろ!」
だけどやっぱりブルース・リャン=雲の上を飛ぶドラゴンは強い! せっかく自慢の乳首を見せびらかしたのも束の間、リー・ホイサンさんもあえなく渚の土左衛門に。
さらに組織の黒幕が現れたところでようやくタイガーのように勇猛な将軍も駆けつけ、ドラゴン&タイガーのWキックでついに激闘の幕を下ろします。
おまけに、実は北京原人の化石はニセモノだった!という『水曜スペシャル』ばりのオチがつき、バカバカしさに拍車をかけて今回のロケも終了。ちなみに大介くんも無事に救出されました。
そしてイケメン風のゲストと女性Gメンが何となくイイ感じになり、再会を誓ってお別れするのも香港ロケのお約束。ホントに「北京原人」っていう渾身のネタを省けば、寸分違わず前回と同じ内容でしたw
セクシーショットは賀川刑事役の范文雀さん。『特別機動捜査隊』の端役でデビューされ、『サインはV』『アテンションプリーズ』等の青春ドラマで注目された女優さん。寺尾聰さんの最初の奥さんでもありました。
刑事ドラマは他に『東京バイパス指令』『非情のライセンス』『大都会 PART II』『スーパーポリス』『さすらい刑事旅情編』等にゲスト出演。『Gメン’75』にはレギュラー加入する前から何度もゲスト出演されており、続編『Gメン’82』にも賀川刑事役で続投。エキゾチックなご風貌といい、まさに『Gメン』を演じるために生まれて来られたような女優さん。
ところが、この方も悪性リンパ腫などを患い、2002年に54歳という若さで他界されてます。合掌。