ようやく観ました! 2021年に大ヒットを飛ばした、庵野秀明 脚本&総監督によるアニメ「エヴァンゲリオン」新劇場版シリーズの完結編です。
評判を耳にしながら劇場へは行かず、レンタルDVDで鑑賞となったのは、前作の『Q』にイマイチ乗り切れなかったから。またウジウジ悩み始めるんかい!?って、ちょっと辟易しちゃったんですね。
それが『エヴァ〜』って作品なんだと分かってはいるけど、新シリーズはまた違うのかも?って勝手に思ってたから。違うものにしたくてリメイクしたんと違うの?って。
率直な感想は、9割以上「よく解んない」でしたw けど、庵野さんの気持ちは凄くダイレクトに伝わって来ました。
私はストーリー上の「謎解き」には興味が無くて、作者が我々に伝えたいこと(つまりテーマ)に共感できたか否かを一番の評価ポイントに置いてるから、今回は大満足です。
要するに、やっぱ人は独りじゃ生きていけないって事ですよね? 面倒だし、傷つくことばかりだけど、人間は「完全」じゃないから助け合わなきゃサバイバル出来ない。
それを否定して「完全」を目指した超モラトリアムな父親が自滅していくストーリーであり、そんな父を反面教師にして大人になってく息子の成長ドラマ。
結果的に『スター・ウォーズ』と似たような話になったかも知れません。いや、物語をキッチリと着地させるには、このパターンしかやりようが無いんでしょう。
そんなありきたりなパターンに収めたくなかったから、庵野さんは旧シリーズを「カオス」なまま強引に終わらせちゃった。そうして「逃げた」ことを激しく後悔してリメイクに踏み切られたのでは?
例えありきたりなパターンでも、人は独りじゃ生きていけないってことを次世代(特に『エヴァ』が大好きなオタクたち)にちゃんと解りやすく伝えなきゃいけない。結婚して子供もできて「大人になった」庵野さんに、そういう責任感が芽生えた……なんて推理もありきたりかも知れないけど、そうとしか考えられません。
それともう1つ、庵野さんはどうしても嘘がつけない、正直すぎるほど正直な人である、とも言えるかも?
究極のモラトリアム男である碇ゲンドウにせよ、受け継いだその血にさんざん苦しまされた息子=シンジにせよ、庵野さんそっくりな「分身」であるのは間違いない。
たぶん、まだ独身だったであろう旧シリーズの頃の庵野さんは、分身1号のゲンドウみたくモラトリアムにどっぷり囚われたままで、分身2号のシンジが大人に成長することが「大嘘」に感じられて、そう描くのがイヤでイヤで仕方なかった。
理性ではキレイにまとめなきゃと思いつつ、本能がどうしても許さなくて、葛藤に次ぐ葛藤でいよいよワケが分かんなくなり、あんなことにw
その葛藤してる感じにこそハマった人は、収まるべきところに収まった今回の完結編はかなり物足りないかも?
ストーリーは9割以上解んないって書いたけど、新劇場版は旧シリーズのパラレルワールドであり、昨今流行りの「マルチバース」を先取りしてたのだけは解ります。
「モラトリアムからの脱却」とか「親子の確執」といった、誰もが身に覚えある普遍的な葛藤をSFアクションに置き換えて描いた手法といい、こないだ観たハリウッド映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』とよく似てます。『エヴァ』の方がずっと早いけど。
というか、古今東西のあらゆるストーリーが普遍的な「人の悩み」のメタファーなんですよね、きっと。そこから外れると「中身がない」とか「ドラマがない」って言われちゃう。
だから、いくら考え抜いても結末は「成長」か「挫折」の2種類しかあり得ない。ポジティブな方を選ぶしかなかった庵野監督は、まぎれもなく大人です。
果たして自分はどうなんだろう?って考えさせられます。「孤独上等!」を連呼してた私は碇ゲンドウと同じ「究極のモラトリアム人間」かも知れません。
だけどプータローになって「人は独りじゃ生きていけない」と痛感してる今の私は、ちょっとだけ大人になれたのかも? 還暦まであと2年半だけどw
なにか?