ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『夜のピクニック』

2018-10-13 12:00:05 | 多部未華子




 
最近はすっかりテレビ、舞台で引っ張りだこの多部未華子さんですが、デビュー当初は映画女優のイメージがより強かったように思います。

まだ何色にも染まってない多部ちゃんの、その透明感と確かな演技力が幾多の映画監督たちを魅了し、新人ながら主演作が次々と創られていきました。

『夜のピクニック』は第2回本屋大賞に選ばれた恩田 陸さんのベストセラー小説を、2006年に映画化した長澤雅彦監督の作品です。(多部ちゃん、当時17歳)

正直言って映画としては全く評価してないんだけどw、ドラマ『デカワンコ』(’11)で多部未華子という女優さんに興味を引かれた私が、それ以外の出演作を後追いで観た最初の作品として、ちょっと思い入れがあります。

とにかく衝撃的でした。『デカワンコ』とは全く別人の多部ちゃんが、そこにいたから。演技が上手いなんていうレベルじゃないんですよね。

それが多部ちゃんにハマっていく典型的なパターンである事は、後になって知りましたw とにかく、この衝撃がクセになるワケです。2本、3本、4本と観て行っても、衝撃度が全く衰えない。観る度に新鮮な驚きを味わえるんだから、ホント麻薬みたいなもんです。

そして、常に作品のレベルが高い。多部ちゃんが演じる事によって、作品全体のクオリティーが底上げされるワケです。

残念ながら、ゲスト出演すなわち多部ちゃんの出番が少ない『西遊記』や『俺は、君のためにこそ死ににいく』等は救いようが無かったけれどw、主演作品にはホント外れが無い。

脚本や演出が拙くても、多部ちゃんが画面に映るだけで作品世界に引き込まれるし、多部ちゃんが演じると瞬時にそのキャラクターに共感しちゃう。『夜のピクニック』は、まさにそれで救われた作品の典型例だと私は思います。

原作はどうだか知らないけど、映画を観る限り、私はこの物語にリアリティーの欠片も感じられません。高校の歩行祭という、実在するイベントを描いてるにも関わらずです。

いや、例えば妖怪みたいなアニメキャラがたびたび出て来たり等の、ファンタジックな演出のことを指してるんじゃありません。(必要無かろうとは思うけど)

とにかく人物描写が浅くて一面的で、嘘っぽい。特に、男子生徒たちの内面が二枚目すぎます。監督、カッコつけんなよ!って思っちゃう。

高校生の男子なんて、もっとクソガキで浅はかでスケベで自分勝手で、他人の痛みなんか解らんヤツばっかりですよ。人生経験が浅いんだからそりゃ仕方がない。

それに、あんな楽しいばかりの学校生活があるもんかって、私なんかは思っちゃう。確かに楽しい一面もあるけど、それ以上に痛みや苦しみに満ちた生き地獄が学校であり、そんな天国と地獄の両面を描かなきゃ青春映画とは言えません。

そんな中で唯一、痛みを抱えてるのが多部ちゃん扮する貴子と、クラスメート男子の西脇(石田卓也)。

この2人の葛藤が我々の興味を引っ張ってくれるワケだけど、それだけで2時間弱の映画を成立させられないもんだから、色んな(ハッキリ言って下らない)エピソードがくっついて来ちゃう。

そこで監督さんの力量が問われますよね。結果は残念なものだったと言わざるを得ません。

同じ長澤監督の前作『青空のゆくえ』も多部ちゃん(脇役)が出てる部分以外に見所は無く、『夜のピクニック』の前日を描いたオムニバスドラマ『ピクニックの準備』に至っては、長澤監督が担当したエピソードが一番つまんない(あくまで私感ですが)という、実に困った事になってました。

『夜のピクニック』に話を戻すと、全校生徒が24時間かけて80キロを歩く伝統行事「歩行祭」の中で、貴子は以前からずっと意識しながら会話を交わした事がない、クラスメートの西脇に話し掛けるか否か葛藤し続けます。

それは恋心かと思いきや、物語が進むにつれて、実は2人が異母兄妹である(ゆえにお互い気まずくて話せない)ことが判って来ます。

そんな2人が、クラスメート達による気遣いもあって、やっと打ち解けるまでが描かれるワケだけど、この設定自体、あまりにレアなケース過ぎて私は感情移入出来ません。

だって、異母兄妹が同じクラスにいるって事は、父親は同じ地域内で同じ年に、妻と愛人に子供を産ませたワケですよね?

で、貴子の母(南 果歩)はそれを知りながら西脇と同じ高校に娘を通わせ、2人が異母兄妹である事をクラスメート達にわざわざ教えちゃう。私にはとても理解出来ません。

だから、少なくとも私は、この映画を観て感動するなんて事は、本来ならば有り得ない。共感出来るポイントが皆無に等しいんだから。

にも関わらず、ラストで貴子と西脇が言葉を交わすシーンには、ちょっとグッと来ちゃう。そもそも、こんな脚本と演出で最後まで興味を引っ張られたこと自体が奇跡です。

そんな奇跡を起こしたのは、いったい誰なのか? どう考えても、多部ちゃんしかいないワケです。

相手役の石田卓也くんは、ハッキリ言って大根です。下手に小芝居して多部ちゃんの足を引っ張るよりはマシだった、という程度。

西原亜希、貫地谷しほり、加藤ローサ、高部あい等、多部ちゃんを取り巻く若手女優陣は素晴らしい顔ぶれなんだけど、この映画で輝けたかどうかは微妙です。

後に『ピース オブ ケイク』で多部ちゃんと共演する柄本 佑くんも、『 I LOVE YOU/魔法のボタン』で共演する池松壮亮くんも、芝居は上手いけど魅力は感じません。

多部ちゃんしかいないんですよ、ホントに! この映画を観て「良かった」と感じた観客の中で、それが多部ちゃん1人による功績である事に気づいた人が、果たして何人おられたでしょう?

いや、勿論、映画が何百人というスタッフ&キャストの血汗で成り立ってる事実は、人一倍よく解ってるつもりです。それでもあえて、私は断言します。

多部未華子という女優さんがいなければ、この映画は確実に失敗してました。当時の多部ちゃん、弱冠17歳。

多部ちゃんの凄さがよく分かる絶好のサンプルとして、あえてオススメしたい作品です。
 

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