ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#200

2019-06-23 00:00:11 | 刑事ドラマ'70年代




 
放映200回記念作品なんだけど、切ないエピソードです。ゲストはゴリさん(竜 雷太)の婚約者=小林道代を演じる武原英子さんと、その叔父=小林政治(まさじ)を演じる小林昭二(あきじ)さん。

『仮面ライダー』の「おやっさん」であり『ウルトラマン』の「キャップ」であり『西部警察 PART III』の「長さん」でもあった、我々世代には忘れることの出来ない俳優さんです。


☆第200話『すべてを賭けて』

(1976.5.14.OA/脚本=長野 洋&小川 英/監督=竹林 進)

ビジネスホテルで他殺死体が発見され、その日の宿泊客リストに「小林政治」の名前を見つけて動揺するゴリさん。

しかも、被害者が殺される直前にホテルのバーで酒を酌み交わし、その勘定を支払った男がレシートに残した指紋と、政治の指紋が一致しちゃいます。

政治は、いよいよ日取りが決まったゴリさんと道代の結婚式に、招待する予定だった道代の叔父なのです。

警察官は、職務規定により犯罪者の肉親とは結婚出来ません。無実を祈りながら、婚約者の目の前で政治を連行するゴリさん。

政治は殺人を否定しながらも、被害者との関係やホテルで会った目的については完全黙秘。疑惑はますます深まります。

ボス(石原裕次郎)はゴリさんを捜査から外そうとしますが、ゴリさんは「やらせて下さい」と懇願。ボスは、静かに問いかけます。

「もし小林政治が真犯人だと決まったら、お前どうするんだ? そいつを聞いておきたい。お前の一生に関わる問題だ」

「……辞めます。刑事を辞めます。彼女は俺にとって全てです。刑事の仕事と、彼女とどっちを取るかって言われたら、今の俺は……」

「ゴリ、それでいいんだ。俺はお前の口から、その言葉をハッキリ聞きたかった」

「ボス……」

もちろんボスだって、そして捜査一係の仲間たちも皆、ゴリさんを失いたくはない。出来れば刑事のままで幸せになって欲しい。

そんな想いによる必死の捜査が実り、殺人の真犯人が逮捕され、刑事たちは歓喜します。ところが……

政治が事件当日に被害者と会っていた理由が判明します。被害者は、政治が勤める建設会社の汚職の証拠を握っていた。政治は、会社の遣いで口止め料を支払う為に、被害者と密会してたワケです。

殺人とは無関係だったけど、これは立派な不正行為であり、政治が犯罪者として摘発されることは免れません。

ゴリさんの決意を知った道代は、彼のアパートに手紙を残し、故郷の広島へと向かう新幹線に乗り込みます。

「刑事というお仕事を、あなたから取り上げることは出来ません。どうしても出来ないんです。お別れします」

タクシーを飛ばして東京駅に駆け込むゴリさんですが、新幹線は待ってくれません。ゴリさんは何も言わずに、遠ざかる道代の姿を追って、ただひたすら走るのでした。

私だったら、泣きじゃくりながら「待ってくれ! 刑事は辞めるって言ったじゃん!」とか「俺も広島へ行く!」とか「せめて最後に1発だけ!」とか言いそうなもんだけど、ゴリさんは一体なんの為に新幹線を追いかけたのか?

独り寂しく安アパートに帰って来たゴリさんを、ボスが一升瓶を片手に待ち構えてました。

「俺は止めねえぞ。広島に追って行きたけりゃ行け。辞表を出したけりゃ、今度こそ黙って受け取ってやる」

「いいえ、俺は追いません。辞表も出しません」

道代は、悩みに悩んだ末に、自分よりもゴリさんの幸せを願って、別離を選択した。ゴリさんは、その気持ちに応えたワケです。

「あの人は……俺の心の、隅から隅まで解ってくれました。だから……だから俺は、あの人に一言ありがとうって、そう言いたかったんです」

このエピソードだけは、何回観ても泣かされます。ブログでは二人の交際スタートの回しかレビューしてませんが、これまでの間にいくつもの障壁を乗り越え婚約に至った、その過程が数話かけて描かれてるワケです。

我々ファンはそれを見て来ましたから、本当は別れたくない二人の本音が痛いほど解るんですね、多くを語らずとも。

恋人を失った部下の為に、わざわざアパートを訪ねて来て、一緒に酒を呑みながら「辞めていいんだぞ」って、言ってくれる上司が嘘っぽく見えないのも、200本に及ぶこれまでのエピソードで、その信頼関係が描かれて来たからこそ。10本前後で終わっちゃう現在のTVドラマじゃ、まず味わえない感動だろうと思います。

『踊る大捜査線』以降、刑事の私生活を一切描かない作劇が定着しちゃいましたけど、そうなるとストーリーは毎回のゲスト(犯人や被害者)を中心に組まれる事になります。

ずっと観続けて親しみを感じてるレギュラーのドラマと、その回しか出てこないゲストのドラマとじゃ、感情移入の度合いが全く違ってくる筈です。

毎回のように刑事の身内が犯罪に関わったりするのは、確かにリアルじゃない。『太陽』より『踊る』の方が、どう見たってリアルです。

だけど、リアルさと引き換えに昨今の刑事ドラマが失ったものは、あまりに大きいんじゃないかと私は思います。どう見たって『踊る』よりも『太陽』の方が、我々の心を揺さぶってくれる作品です。
 

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2 コメント

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Unknown (uchuujin34)
2019-08-31 20:59:18
「……辞めます。刑事を辞めます。彼女は俺にとって全てです。刑事の仕事と、彼女とどっちを取るかって言われたら、今の俺は……」

ものすごくカッコいいです。
お二人のことは、それまでに描かれていたエピソードで応援していました。
照れてるゴリさんが、とても可愛くて(^o^;)
だから、残念だったけど、ものすごく心に残ったし…
ゴリさんに惚れちゃいました。
太陽にほえろの中で、唯一永久保存にしているお話しです。テープが擦りきれるほど繰り返し見ています。
まったく色あせません。
それぞれの刑事さんのキャラクター設定がしっかりしていて、とても素敵でした。
その後、「再会」したときも、とても素敵でした。
「彼女、幸せそうでした。」… 嬉しかったなあ…

カレーライスの大好きなゴリさん、拳銃に玉をこめないゴリさん、たまに爆発するゴリさん、照れ屋のゴリさん、新人教育係のゴリさん…
大好きでした。ありがとうございました。
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Unknown (harrison2018)
2019-08-31 23:17:22
『太陽にほえろ!』を象徴するキャラクターがゴリさんですよね。私が一番好きだったのはボンですが、『太陽』にハマるきっかけになった刑事はゴリさんでした。だから10周年で殉職と聞いた時は本気でファンを辞めようかと思ったもんです。

そんなゴリさんの人間としての魅力が詰まった第200話でしたね。
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