昭和の刑事ドラマがお好きな方なら、観たこと無くてもきっとご存知のはず。今や伝説となった『警視庁殺人課』最終回です。
なぜこれが伝説になったのか、ご存知ない方に驚いて頂くため、今その理由は書かないでおきます。最後まで読んで頂ければ解ります。
前編=第25話が1981年9月28日、後編=第26話が10月19日の放映。前後編なのに期首スペシャル番組を挟んで2週も間が空いてる!っていう事実に、当時の人気の無さが伺えちゃいます。
だからこそ許されたのかも知れない、ヤケのやんパチのラストエピソード! 脚本=中島貞夫&掛札昌裕、監督=竹本弘一という布陣です。
幼稚園児たちを乗せた送迎バスが、拳銃と手榴弾を所持する男2人組にジャックされた!
そんな卑劣なことする極悪人は、石橋蓮司と市川好郎に決まってます!
ヤツらの要求は、警視庁殺人課により既に逮捕されてる、銀行強盗仲間の辻萬長と大西徹也を釈放すること。
さすがは最終回、敵の顔ぶれも豪華です。そして彼らを操る首謀者は、辻萬長の愛人にして大西徹也の姉である、左時枝!
ふだんは幸薄い被害者の役が多い左さんだけど、なかなかどうして悪役もキマってます。ご本人もきっとノリノリだった事でしょう。
殺人課主任の「ミスター」こと五代警部(菅原文太)は強行策を志願しますが、人質の安全を最優先したい田丸刑事部長(鶴田浩二)に牽制されます。
なにしろ、ジャックされたバスに幼稚園児たちと一緒に乗ってる引率者=森山先生の父親は、レギュラーキャストに名を連ねながらこれまで一度も本編に登場しなかった、ディック・ミネ氏なのです。
しかも森山先生は、妊娠8ヶ月の身重だった! おいっ!?
さらにそのバスの運転手は心臓病を患ってて、いつ発作を起こすか判らない! おいおいっ!?
おまけに、バスのエアコンが故障中なのに飲料水も用意されておらず、炎天下のなか全員熱中症になりかけてる! お〜ういっ!!!
さすがは東映作品!としか言いようないムチャな状況下、一刻も早くバスを止めないと大変なことになっちゃう!
さすがに田丸部長も強行策に傾くんだけど、リスクを恐れる警察上層部が断固許してくれません。
強盗一味を全員逮捕できなかったことに責任を感じてるミスターは、クビを覚悟で部下たちに言います。
「殺人課の存続を賭けて、俺たちの手でバスを止める!」
さて、ここからが伝説の始まり。まず、バリケードを張ってバスを止めようとしたベテランの「ビショップ」こと額田警部補(中谷一郎)が、そのままバスに跳ね飛ばされ、あえなく殉職。
跳ねられて宙をとぶビショップの髪の毛が、急に伸びた気がするのはもちろん錯覚です。
それで怒ったミスターが愛車ポルシェ356をかっ飛ばし、強引にバスを止めようとするも、石橋蓮司に撃たれて崖下へと転落!
ポルシェが急に国産車と入れ替わったように見えるのも、きっと錯覚です。当たり前です。
で、運転してたミスターの生死が不明のまま前編が終了し、ハラハラしながら観た次回予告に、元気いっぱいで活躍するミスターが映ってるように見えたのも錯覚なんです。
そして後編。心臓病のドライバーがついに発作を起こし、産気づいた森山先生と園児たちを乗せたまま暴走するバスを止めるため、肉体派の「チャンス」こと村木刑事(関根大学)がJAC仕込みのスタントで乗り込んだ!
言うまでもなく、銃を持って待ち構えてた石橋蓮司と市川好郎の凶弾を浴び、最期にキメ台詞も言えないままチャンスも即死!
こうして2人の刑事を犠牲にしてもなお、動こうとしない警察上層部に見切りをつけた田丸部長は、独断で左時枝と交渉し、人質交換の約束を取り付けます。
そこにタイミング良く、我らがミスターが帰って来た! ビショップはバスにちょっと跳ねられただけで死んだのに、主役は車ごと崖下に転落してもカスリ傷。これぞ芸能界の序列システム! 誠意って、なにかね?
かくして伝説はクライマックスを迎えます。ぽっくり逝ったオジサンに代わる運転手としてミスターが、妊婦や園児たちに替わる人質の1人として「エンジェル」こと眉村刑事(一色彩子)が、決死の覚悟でバスに乗り込むのでした。
そして「秀才」こと虎間刑事(三田村邦彦)が機動隊の猛者たちを従え、輸送トラックからバス内に突入し、ハリウッド映画『スピード』よりも10年早い人質奪還作戦を決行!
当然ながら車内は修羅場と化し、エンジェルが市川好郎の卑猥な弾丸を浴び、おっぱいを見せずに絶命!
さらに秀才が、第1話で撃ち殺したはずの蓮司と再び対決、ほぼ相撃ちとなって絶命!(実は蘇生してジプシー刑事になった説もあり)
最後はもちろん、ラスボスの左時枝と我らがミスターの一騎討ち!
秀才が遺したコルト・ガバメントでバスを横転させるも、ミスターは何発もの銃弾を浴び、もはや主役の意地だけで立ってる状態。ライフルで左時枝にトドメをさした田丸部長と向き合います。
「五代。人質は全員、無事に救出したぞ」
「そうですか……よかったです」
「部長……少し疲れました……ひと眠りさせて下さい」
「…………」
サブタイトルは『警視庁殺人課 全員殉職!』。それが伝説となった理由。確かに、空前絶後でしょう。
これぞノンストップ・アクション!と呼べる内容で、『スピード』のみならず『ローグ・ワン(スター・ウォーズ外伝)』なんかも連想させられます。元ネタは日本映画『新幹線大爆破』あたりでしょうか?
とにかく最後は華々しくやろうや!っていう菅原文太さんのご提案だったそうで、まさしくその通り、派手に散ったあとには何も残らない内容w アクションドラマなんだから、それで良いのだと思います。
キメキメのスーツやポルシェが文太さんには似合わない!って声も多いけど、『トラック野郎』や『仁義なき戦い』のシリーズをほとんど観てない私からすれば、それほど違和感はありません。
私にとって石原裕次郎さんは永遠に七曲署のボスだし、勝新太郎さんはガッツ警視、杉良太郎さんは加納主任。そして菅原文太さんはあくまで、ニューヨークかぶれの警部ミスターなんです。
そんなワケで最後のセクシーショットは、やっぱりこの人。エンジェル役の一色彩子(采子)さん!
おっぱいサービスはシリーズ序盤のみだったけど、本当に心から感謝してます。ご本人は間違いなく不本意だったでしょうけどw、こうして丸40年経った今でも視聴者から感謝されるなんて、どんな名演技をしたって有り得ないですよ!
女優デビューがこの『警視庁殺人課』のレギュラーで、刑事ドラマは他に『私鉄沿線97分署』『迷宮課刑事おみやさん』『誇りの報酬』『あぶない刑事』『あきれた刑事』『ベイシティ刑事』『ジャングル』『刑事貴族3』『はぐれ刑事純情派』『はみだし刑事情熱系』『刑事追う!』『相棒』etc…と多数ゲスト出演。まさに刑事ドラマの申し子と呼べる女優さんです。
ポルシェが国産車への下りで大爆笑しましたw
「華々しくやろうや!」って、いかにも菅原さんらしくて良いですね。
仁義なきよろしく、広島弁で叫ぶ風景が目に映ります。
まぁ、菅原さんは仙台出身なんですがw
民放では初の主演ドラマってことで、文太さんもけっこう気合を入れて臨まれた作品だろうと思います。
そういう熱量が伝わってくるドラマが、最近はほとんど無いんですよね。
鶴田浩二は色々な作品に出ていますね。誠実な二枚目と言うイメージです。
仁義なき戦い、広島で思い出すが、専門学校の同級生です。広島から来ていてマツダ車に乗り、あだ名がヒロシマ。担任の先生からもそう呼ばれていましたw。興奮するとお国言葉が出るのが面白かったです。関係ない話ですみません。
ガバメントでバスが横転したのは、ミスターが運転手を撃ち殺したからですが、とにかく昭和ドラマでは車がすぐひっくり返りますよねw