『特別機動捜査隊』は1961年10月から'77年3月まで約15年半、NETテレビ(現テレビ朝日)系列の水曜夜10時枠で全801話が放映された、60分の刑事ドラマとしては最長寿を誇る番組。そもそも1時間枠の連続ドラマとして日本初の作品でした。
'59年に警視庁捜査一課で設立された初動捜査班をモデルにした架空の部署である「機動捜査隊」が、番組ファンだった当時の警視総監により正式名称として採用されたという逸話もあり。
『太陽にほえろ!』と肩を並べる名作『特捜最前線』の前身であり、アクション系刑事ドラマの元祖とも云われてます。また、刑事ドラマの代名詞と呼ばれた『七人の刑事』も同時期にTBS系列でスタートしており、1961年は刑事ドラマ史において非常に重要な年だったと言えそうです。
☆第1話『最後の犯人(ホシ)を追え』
(1961.10.11.OA/脚本=宮田達男/監督=関川秀雄)
しかし、私がこの作品を観ることになるとは思ってませんでした。『太陽にほえろ!』以前の刑事ドラマは正確に言えば「事件ドラマ」で、主役はあくまで事件でありその犯人や被害者=その回にしか出てこないゲストですから、感情移入しづらいんですよね。
だから以前は興味が湧かなかったんだけど、このブログで『太陽にほえろ!』を起点とする刑事ドラマの歴史を辿っていく内、『太陽~』より先に生まれた作品、すなわち『太陽~』の影響を受けてない刑事ドラマがどんなだったか、無性に観たくなって来ました。それを知らないと『太陽~』がいかに型破りな作品であったかをちゃんと解ってるとは言えないし。
そんな思いが募ってた時に、まさかの『特別機動捜査隊』DVD-BOX発売! 『太陽~』以前の刑事ドラマとしては『七人の刑事』と並ぶBIGタイトルだし、収録されてるエピソードはセレクション形式で初期から後期まで網羅しており、番組の歴史を俯瞰するにはもってこい。これは「買い」だとすぐに決断した次第です。
で、とりあえず1枚目のディスクに収録された5作品を観た感想は、映像や音楽がレトロ!っていうのは当たり前として、やっぱりこれは「事件ドラマ」だなと、本当の意味での「刑事ドラマ」はやっぱり『太陽にほえろ!』から始まったんだなと、あらためて納得した感じです。
確かに第1話はちょっとしたカーチェイスや銃撃戦が見せ場になってるけど、他のエピソードじゃアクションと呼べるシーンはほとんど無く、ドラマは犯人や被害者たちが中心に描かれ、刑事たちはあくまで傍観者でひたすら捜査(謎解き)あるのみっていう印象。
これは『特捜最前線』の前身というより、その後継番組である『相棒』の原点と呼んだ方が私にはしっくり来ます。やっぱり現在の刑事ドラマは原点還りしてるんですよね。
というより、これが本来の警察モノの在り方であって、『太陽にほえろ!』からしばらく続いた「刑事が主役のドラマ」こそが実はアウトサイダー。例えばアメリカ映画史の中にニューシネマと呼ばれる作品群があったように、ほんの歴史の1ページに過ぎないんだと捉えた方が正しい気がして来ました。それはその時期にしか生まれ得ないもので、だからこそ輝いて見えるのかも知れないと。
そんなワケで『太陽にほえろ!』式の作劇が感性に染み込んだ私からすれば、ひたすら捜査しかしない、説明台詞しか吐かない刑事たちは退屈で退屈で仕方がないんだけど、じゃあ観る価値は無いのかと言えば決してそんな事はありません。
なにせ1960年代、昭和中期の番組ですから、その当時の町並み、車、ファッション、ワードセンス、音楽など全てがレトロで、今となっては逆に新鮮! '72年スタートの『太陽にほえろ!』も初期はけっこうレトロを感じさせるけど、本作は更にその10年ちょっと前、私がこの世に生まれるより前の作品ですからね!
だけど当時の視聴者にとっては恐らく最先端のテレビ番組で、リアルな警察用語とか科学捜査の描写1つ1つが新鮮かつ刺激的だった筈。犯罪発生の瞬間をリアルに描くこと自体がそれまでタブーだったそうで、自分がもっと早く生まれてこれをリアルタイムで観たら、どう感じただろう? やっぱり『太陽にほえろ!』と同じように衝撃を受けて「どハマリ」したのかも? なんて考えながら観ると、それはそれで楽しかったりする。もはやストーリーなんかどーでもいいw
人間の描かれ方そのものが現在とは違ってて、特に男と女の関係、男尊女卑が幅を利かせた時代の名残りが色濃く残ってるのは、不愉快でありつつ妙に微笑ましかったりもします。あの頃、男はこんなに威張ってたというか、威張らせてもらえたんやなあってw
なにせ終戦からまだ15年ほどしか経ってない。こういうのを観ると、男ってヤツはつくづく戦ってナンボの生きものなんだと痛感させられます。平和な世の中においては種馬になること以外なんの役にも立たず、だから戦争は永遠に無くならないんだとか、色んなことを考えさせられます。
あと、後に大物になられる俳優さんたちの若き姿が見られるのもレトロ作品の醍醐味で、この第1話には強盗犯役で室田日出男さんと柳生博さんが出ておられます。
そして機動捜査隊の初期メンバーは、立石主任(波島 進)、橘部長刑事(南川 直)、荒牧刑事(岩上 瑛)、桃井刑事(轟 謙二)、岩井田刑事(滝川 潤)、松山刑事(松原光二)、山崎刑事(高島弘行)、内藤刑事(巽 秀太郎)、香取刑事(綾川 香)といったメンバー。
私が存じ上げる俳優さんは皆無ですw(生まれる前だから仕方ない) けれど立石主任を演じる波島進さんはテレビ草創期の番組『捜査本部』や『七色仮面』でも主役を張って来られた方で、やっぱさすがの存在感と安定感。細かい仕草1つ1つがキマッてて魅せてくれます。
ドラマはこの立石班が進めていくワケですが、撮影スケジュールが追いつかなくなったんでしょう、後に藤島主任(中山昭二)率いる藤島班、三船主任(青木義朗)率いる三船班、高倉主任(里見浩太朗)率いる高倉班、矢崎主任(亀石征一郎)率いる矢崎班、日高主任(葉山良二)率いる日高班が交代で進行役を務めるようにり、末期には木塚刑事(藤山律子)など女性刑事も登場するみたいです。
ちなみにDVD-BOXに特典として収録された'63年公開の劇場版『特別機動捜査隊』では安部徹さんが立石主任を演じ、内藤刑事役で千葉真一さんも出演されてます。
確かに町並みやファッション、クルマなど"動く"資料のようで、見入ってしまいます。道路も舗装してあるのは大通りだけなのかな…と思ったりします。「寅さん」などもそうですが、昔の映画はつい建物や列車などを見てしまうのですw。
今はCGで当時の町並みを再現したり出来るけど、やっぱり本物から滲み出てくる味は違います。まさに動く文化資料です。
今の新しい建物(何処にでもあるような)より、昔の建物や風景の方が魅力的に感じてしまいます。年齢のせいかなと思うのですが、若い人に聞いても同じようなことを言いますw。ショッピングモールや新街区など人為的な感じで面白みを感じません。
CGで綺麗にリアルに描かれた特撮やアニメよりも、手作り特撮や手描きのアニメの方に惹かれてしまうのと同じ事かも知れません。温かみを感じるんですよね。
収録)ちなみに私は500回前後からリアルタイムで視聴しておりました。
何ででしょうかね…
ちなみにこのドラマ、全期間に渡って日産セドリック(番組後期はグロリアやスカイラインも)の捜査車両(黒パト)が使われているのですが、番組開始当時の時点では、実際の警察では使われていなかった車種なんですよね(その頃走っていたパトカーの多くはライバル車種のトヨペット・クラウンや外車のシボレー等)
確か、当時の警視総監をはじめ本職の警察幹部がこのドラマのファンになったことから、セドリックをパトカーとして採用し始めた、と聞いています。
そしてこれを、自社車両の売上を伸ばすチャンスと見た日産は「特別機動捜査隊」のスポンサーとなり、以後、セドリックやグロリア、スカイラインの新車が出るたびに、劇中の捜査車両も次々と代替えされていきます。
そして、それは後継番組の「特捜最前線」でも受け継がれます。
「特捜最前線」「西部警察」「あぶない刑事」など数多くの刑事ドラマで車両提供・スポンサーを担った日産ですが、その原点となったのが「特別機動捜査隊」。
それと同時に、「自動車メーカーが刑事ドラマに協力し、そのメーカーの最新モデルがパトカーなどで活躍する」という方式がここから始まったわけです。
もっと分かりやすく解説されてい方↓がいらっしゃるので、そちらもぜひ参考に。
https://www.youtube.com/watch?v=1UTEnrxw8f8
乱文失礼いたしました。