私はクドカンさんの信者じゃないし、エンケンさんのお顔も見飽きてるんだけど、こういう企画なら興味をそそられます。2018年秋にWOWOWプライム月曜深夜の30分枠で全7話が放映された、これは言わば実験ドラマ。
毎回2幕構成になってて、遠藤憲一さんが人情派刑事=諸井情に扮して連続猟奇殺人事件を捜査するサスペンスドラマ『諸井情の事件簿』を普通のキャスティングで普通に撮影した約10分間が第1幕。
ところが助監督のミスによりすぐに撮り直さなきゃいけなくなるんだけど、共演者が帰ってしまった後で代役を探すしかない。
そこにタイミング良く現れたスター俳優(初回は小栗 旬)が代役を引き受け、同じ脚本、同じ演出で撮り直された約10分間が第2幕。
つまり同じストーリーを同じ監督が撮っても、演じる役者が替わればこんなに違って来るという実験。
同じ脚本と言っても、役者さんに合わせて宮藤官九郎さんが「あて書き」するから微妙に(それも笑わせる方向に)変わって来るし、さらに役者さんがアドリブを加えるからほとんど別物。
それを主役=遠藤憲一さんがどう受けるのか、実はかなりの「ゲラ」だというエンケンさんがどこまで我慢し、どのタイミングで吹き出しちゃうかが最大の見所になってますw
小栗旬くんに続くゲストの顔ぶれは、#02が仲 里依紗&加藤 諒、#03が高畑淳子、#04が野村周平、#05が水野美紀、#06が高嶋政伸、そして#07=最終回が桃井かおり、という豪華メンバー。
まず最初に感じるのは、やっぱりスターの並外れた存在感。無名の役者さんが演じた役をそのまま演じるワケですから、オーラの違いがより際立つワケで、やっぱり売れる人には売れるだけの理由があるんだってことを思い知らされるし、前座の役者さんたちがちょっと気の毒にも思えて来ます。(とはいえ彼らにとってこれほど『勉強』になる機会も他に無いかも知れません)
特に、登場しただけで場面をさらっちゃう小栗旬くんの格好良さ、加藤諒くんや高嶋政伸さんの顔面力w、高畑淳子さんや桃井かおりさんのカリスマ性などはまさに唯一無二、作品のカラーをがらりと変えちゃうパワーがあります。
そんなゲスト俳優たちがどんな風に役作りしてキャラクターを自分のものにするか?をエンケンさんとクドカンさんが見て勉強し、一発勝負の撮影でセンスとテクニックを試されるゲスト俳優自身もまた、あらためて演技というものを勉強するワークショップ的な番組でもあります。
同時に、私みたいに映像作品を創った経験がある者からすれば、各スターの持ち味を活かすために脚本家がどれほど工夫を凝らしてるかっていう勉強にもなるし、もちろんこれから俳優や脚本家を目指す人にとっては全てが勉強。
そういう意味じゃ玄人向けの番組なんだけど、前述のとおりクドカンさんがちゃんと笑えるようにアレンジしてくれてるし、エンケンさんやゲストたちが堪えきれずに笑っちゃうNG集的な面白さもあるから、よっぽどコメディが嫌いな人でなければ確実に楽しめるかと思います。
個人的には、エンケンさんを「お前」呼ばわりしてコキ使うFBIの鬼捜査官=高畑淳子さんと、胡散臭すぎるサイキック捜査官=高嶋政伸さんの振り切った演技と顔芸、それを見て完全に崩壊しちゃうエンケンさんの芝居がツボでしたw
また、コメディは初挑戦という野村周平くんの意外なお笑い志向や、誰よりもクドカンさんの脚本を尊重し、忠実に演じられた桃井かおりさんの謙虚さ等、こういう企画でないとなかなか出来ない発見も楽しめました。
ゆくゆくは地上波でも放映されるかも知れないけど、とりあえずDVDを買うなり借りるなりすればいつでも観られるし、WOWOWに加入されてる方なら再放送、そして多分シーズン2もありそうなので、チェックをお勧めしておきます。