心優しい性格で涙もろく、すぐ人に感情移入してしまう割にウソ泣きが得意らしいw、カンヌこと門倉美咲(多部未華子)は、退勤後よく実家の「門倉豆腐店」に立ち寄り、両親と食卓を囲みます。
「毎日、交通違反捕まえてるんだろ? だったら、男の1人さっさと捕まえて来なよ」
そんなべらんめぇなお母ちゃん(松本じゅん)のツッコミを端で聞いて、ビールを喉に詰まらせるラブリーなお父ちゃん(不破万作)。
微笑ましい家族団欒の図ですが、美咲はどうやらSITに所属してることを隠してるみたいです。最前線で凶悪犯と接する危険なポジションゆえ、両親に心配をかけたくないのでしょう。
「辞めたくなったら、いつでも帰って来ていいんだよ?」
わざわざ外まで娘を見送りに出てきて、そんな言葉までかけてくれるお母ちゃん。そこまで愛されたら、美咲みたいにピュアな娘も育つってもんかも知れません。
それにしても、ルックス的には地球人と火星人ぐらい(優劣の問題ではなく)かけ離れた親子ですw 「お父ちゃん」「お母ちゃん」って呼び方も、多部ちゃんにはちょっと似合わないですね。
一方、武闘派のロンリーウルフ=伊崎基子(黒木メイサ)のアフター5は、もっぱらジムで独り、黙々と筋肉トレーニング。
倉本聰さんのドラマで初めて黒木メイサさんをお見かけした時は、これまた清楚でミステリアスな美少女が現れたなぁって、ひと目でブレイクを確信したもんだけど、まさかこういう方向(マッチョなイメージ)にシフトして行くとは思ってなかったです。
だけどご本人はサバイバルゲームが趣味だったりするそうで、元からそういう素質をお持ちだったんですね。だから今回の役には(連ドラ初主演って事もあるし)相当気合いが入ってたんじゃないでしょうか?
この場面で、十字架のペンダントをした男が、物陰からこっそり基子を見てたりします。顔を見せないもったいぶった撮り方をされてる点から見て、ただの変態じゃなさそうですw
美咲も基子も独身なので、生活拠点は警察の女子寮です。オフ日も独り、寮の食堂で遅い朝食を採る基子ですが、まかないのオバチャン(岸本加世子)にだけは心を開いてる様子で、いつもより少し饒舌です。
「基ちゃん、美咲ちゃんのこと嫌いだろ?」
「見てりゃ分かんだろ」
「そうだよねぇ~。美咲ちゃん、女らしくて可愛いもんね」
「どーせ私はガッシリしたブスですよ」
「いや、アンタは美人よ。ただね、絶望的に眼つきが悪いってだけで」
「デカの眼なんて、こんなもんなの」
「そうかしらねぇ~、美咲ちゃんなんか綺麗な眼してるよ? キラキラ~ってしてて、いつもピカーって光ってて」
ドラマのワンシーンとしては、実につまんない会話ですねw 演じてるのが岸本さんだから観てられるようなもんで、脚本力(原作も含めて)の弱さを感じずにはいられません。
こうして冷静に細かくレビューしてみて、このドラマがタベリストに評価されなかった理由が、あらためてよく分かった気がします。
レビューを書く時、DVDを観ながらポイントになる台詞をメモするんだけど、これぞ!っていう(思わずメモしたくなる)ステキな台詞が、この『ジウ』にはほとんど見当たりません。
各キャラクターも類型的で薄っぺらいし、特に基子のロンリーウルフぶりが、単に拗ねた中学生みたいにしか見えない(ゆえに格好良く感じられない)のが痛いところです。ここんとこは女優・黒木メイサの力不足も否めません。(例の金髪少年など論外ですが)
だけど、そんな内容でも私の興味を最後まで引っ張ってくれたのは、多部未華子の存在は言うまでもなく、メイサの頑張りに拠る部分もかなり大きいんですよね。次の場面で、その一端が見られます。
黒革のライダースーツを身にまとい、歌舞伎町のクラブにバイクを乗りつける、クール&セクシーな基子。2014年に公開された映画『ルパン三世』におけるメイサ=峰不二子を先取りしたようなビジュアルです。
「探し物があって。此処に来れば手に入るって聞いたから… サブマシンガン、MP5。あるんだろ? 奥に」
暴力団・萩尾会と繋がってるらしいバーテンダー(やべきょうすけ)に、基子は直球をぶつけます。たちまち4人の屈強な男どもが現れ、取り囲まれた基子は、道場のシーンでも見せた見事なマーシャルアーツで、あっという間に彼ら全員を半殺しにしちゃうのでした。
大半のアクションを吹替え無しでこなしたというメイサの動きが、現実的にどれ位のレベルなのか、素人の私にはよく判りません。
だけど、彼女は本当に強そうに見えます。そう見せる為のスキルを、ちゃんと身につけてるんですよね。そこんとこが、ジウ=L君との決定的な違いです。
シリーズの後半、いよいよ物語も佳境に入ろうという場面で初披露されるL君のアクションは、全くヘナチョコとしか言いようの無いヘナチョコなもんでした。
L君はただ、殺陣師に振り付けられた動きをこなすのに精一杯で、強そうに見せる「演技」が全く出来てないワケです。
腐ってもダンサーですから、動きそのものはメイサよりシャープだったりするのかも知れません。だけど、顔つきは相変わらず能天気なナンパ少年だし、とにかく「殺気」ってヤツが微塵も伝わって来ない。
それに対してメイサは、顔つきはもちろん全身から殺気が漲ってる。そう見せる演技をちゃんと心得てるワケです。やられ役の人達がたぶん殺陣のプロである事も大きいけど、それを差し引いてもL君とは大違い。
私は、あのL君のへなちょこアクションを見た瞬間に、このドラマの失敗を確信しましたw
ジウというキャラクターに強さと恐ろしさが感じられなければ、スリルもサスペンスもあったもんじゃないですから。せっかくのメイサのアクションも活きて来ません。
アクションも演技の1つなんです。敬愛するハリソン・フォード氏が激しいアクションを演じるにあたって「僕がやってるのはスタントじゃなくて、肉体演技なんだよ」ってよく言われてたのは、そういう事なんですね。
だけど、第1話の時点じゃL君は顔見せ程度なんで(それでも充分に不安を煽られたけどw)、この場面におけるメイサのアクションを見て、私は「このドラマ、イケるかも」って、勘違いしちゃいましたw
「つまんねーな、簡単すぎて。ストレス溜まったらまた遊びに来るよ」
やっぱり、男を痛めつけるのが基子の趣味なんですねw 恐らくこのクラブからジウの組織に銃器が流れてるんでしょうけど、それにしたってストーリー上、彼らを痛めつける事に全く意味がありませんw
そんな風にして休日を暴力で楽しむ基子を、またしても十字架ペンダントの男がこっそり覗いてます。
やがて明かされる彼の正体は、警視庁特殊急襲部隊=SATに所属する、雨宮崇史(城田 優)。もったいぶって顔を隠すほど怪しい人物じゃないんだけど、城田優くんがそういう演出をしたくなる顔つきなんですよねw(L君を食っちゃってます)
後に「初の女性隊員」として基子もSATに異動、雨宮とは同僚になって、軽いノリでチョメチョメする事にもなります。城田くんの飄々とした持ち味が、メイサの発する尖った空気をうまく中和してくれてたように思います。
さて、基子=メイサは道場&クラブで2度も見事なアクションを披露し、第1話における「つかみ」をモノにしました。となると、もう1人の主役である美咲=多部ちゃんにも活躍してもらわねばなりません。
次にやって来る見せ場によって、多部ちゃんはこの第1話を見事、自分のものにしちゃいます。アクションシーンを支えるのはメイサだけど、ドラマを引っ張るのは多部ちゃんなんですよね。
そう考えればこのドラマ、適材適所の見事なキャスティングで、なのにジウ役がなんでアイツやねん!?ってw、返す返すも残念でなりません。
まぁ、それは言っても仕方のない事です。今はとにかく、我らが多部ちゃんの真骨頂を存分に味わうとしましょう。
(つづく)
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