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とにかくこの作品における梅木刑事(武田鉄矢)の台詞は、1つ1つが私にとって珠玉の言葉です。
第2話では公園にあったダンボールハウスが火事を起こし、そこに住んでたホームレスが焼死するんだけど、名古屋中央署の刑事課は麻薬摘発の点数稼ぎで忙しく、梅木と啓吾(森山未來)に後処理を押しつけちゃう。
啓吾は周辺住民に聞き込みし、死んだホームレス自身の火の不始末による事故、すなわち「事件性なし」と結論づけるんだけど、梅木にこう言われます。
「ホームレスなんかどーでもいいや、か?」
啓吾は近所の住民たちにばかり聞き込みをし、ホームレスの仲間たちにはいっさい話を聞こうとしなかった。
「おめえも上の連中と同じだ、この事件をナメてる。ホームレスなんか公園を不法占拠する違法居住者だと決めつけてる。そんなヤツらのために真面目に捜査するのは馬鹿馬鹿しいんだろ?」
それで考えを改めた啓吾がさらに捜査を進めると、あの火事は放火によるものだったことが判明。
その実行犯である若いチンピラを追い詰めた梅木は「なあ、熱かったろうなあ……被害者は、苦しかったろうなあ」とか言いながらそいつを火あぶりにして殺そうとし、啓吾に止められますw
そしてチンピラの自白により判明した黒幕は、穏やかな口調が印象的な町内会長=森本レオだった!
近所の子供たちが危険な道路で遊ぶ姿を見かねて、行政と掛け合ってやっと作った公園にホームレスが住み着き、住民たちからのクレームが殺到してしまい、レオは警察に訴えたけど相手にされなかった。
「ホームレスなんて不法に公共の場を占拠する犯罪者でしょう? いいじゃないですか、あの人たちの1人や2人死んだって、誰が困るんですか!?」
啓吾はレオのつらい立場に同情して何も言えなくなるんだけど、梅木には通用しません。
「あんたの言う通りかも知んねえな。あんたのその理屈、聞かせたいヤツがいるんだ。ちょっとつき合ってもらおうか」
そして梅木は病院の遺体安置所にレオを連れていき、焼け焦げた被害者の遺体と対面させるのでした。
「もういっぺんさっきのこと言ってやれよ。お前なんか死んだって悲しむヤツなんか誰もいない、お前なんか犯罪者だ、死んで当然だと言ってやれよ!」
そう、ホームレスであろうと自分と同じ人間だという認識さえあれば、こんな結果にはならなかった筈。
「こいつはゴミか? 違う、人間だ! 公園を綺麗にしたけりゃあんなチンピラに頼まないで、自分の手ぇ汚して掃除すりゃ良かったんだ! こいつのダンボールの家に火つける時だって、堂々と火つけますよと言えばこいつだって逃げるヒマがあったんだ!」
第1話の通り魔以上に梅木が……というより作者の遊川和彦さんが許せないのは、こういう正義の仮面をつけた偽善者なんだろうと思います。
「あんた、長いこと生きて来た割には大事なこと忘れてる。人間は、死ねば消えていく。だが、殺された人間は消えない。殺された人間は、死なねえんだ。殺した人間のそばで、ずうっと生きてる」
たぶんレオは発狂した事でしょうw
ところが! 偽善者はレオだけじゃなかった。彼は事前に住民たちに相談し、賛同を得た上で計画を実行した。インターネットの掲示板に「粗大ゴミは焼却すべし」などと書き込んで犯行をさんざん煽ったのは、実はごく平凡な市民たちだった!
レオが逮捕されたことを知り、井戸端会議で「ほんとに放火しちゃったんでしょ?」「普通やらないわよねぇ」「怖いことするわよねぇ」なんて他人事みたいに、そして楽しそうに噂する住民たちを見て、啓吾は虚しく梅木に呟きます。
「何なんですかね、俺たちの仕事って……何ですかね、刑事って」
「刑事を長いことやってると、分かる。人間の善意や良心なんてアテにならない。俺たちの仕事は、人を憎むことだ」
「…………」
「人を本気で憎んで憎んで憎みきる。それが刑事の仕事だ。人を愛することじゃない。おめえには向いてねえな」
そして梅木は、この作品で私が最も共感する台詞を吐いてくれます。
「人間は、もう駄目かも知んねえな……」
そう! 人間はもう、破滅なんです!!
とはいえ、人がひとり焼け死んでも何とも思わない住民たちの描写には、さすがの私も「いや、そこまで酷くはないのでは?」って思っちゃいました。ドラマだから極端に描いてるにしても、十把一絡げに皆が狂ってるみたいに見せちゃうのはどうなの?って。いや、確かに人間はもう駄目かも知んないんだけどw
梅木個人がそう主張する分にはいいけど、創り手がそう決めつけちゃうのは危険じゃないの?って。本作で唯一、そこだけは引っ掛かりました。
それはさておき第3話。ストーカー被害に苦しむ女子大生(黒川芽以)が中央署に駆け込むも、例によって「それだけじゃ立件出来ない」との理由で組織は動こうとしません。
「おめえ、それでも警察官か? 何かあったら、なんてのは警察官のセリフじゃない。何かあってからじゃもう遅いんだよ! 証拠が無いんで捜査は出来ません、事件じゃないんで捜査は出来ません。そんなこと言ってたら警察なんかいらねえんだよ!」
同僚たちに放った梅木の言葉は、まさに我々小市民の言葉。さんざん彼に振り回され嫌って来た啓吾も、警察官として本当に正しいのは誰なのか判らなくなって来た様子。
で、女子大生から事情を聞いた梅木と啓吾は、彼女につきまとうストーカーに会いに行きます。なんとそいつは妻も子もいる立派な弁護士(甲本雅裕)なのでした。
刑事が訪ねて来ても全く動じず、涼しい顔で彼女の誤解だと言う弁護士を、例によって力ずくで組伏せた梅木は、その手の甲にペンを突き立てます。
「二度と彼女に近づくな。今度やったら刺すぞ。本気だかんな」
弁護士が法律を盾に反撃しても、梅木には通用しません。
「訴えたきゃ訴えろ。その替わり事務所の前に何十人、何百人とマスコミ集めてやるからな。おめえの呼び名はストーカー弁護士。自分の弁護で忙しくなるぜ、これから」
しかし相手が殺人犯ならともかく、たかがストーカーにそこまで捨て身になるか?って思うんだけど、これには深い理由があるのでした。
梅木はかつて、心から愛した婚約者をストーカーに殺された。そう、梅木が「殺す」と言ってたのは、もうすぐ出所して来るその犯人=黒川(井浦 新、当時のクレジットはARATA)のこと。
あのとき梅木は、婚約者の部屋に黒川が潜んでることに気づきながら「踏み込む前に令状を取れ」という課長(杉本哲太)の命令に従い、その手続きをしてる間に彼女の命を奪われた。だから梅木はルールを無視する暴走刑事に変貌し、そんな彼を課長はクビに出来ないでいるのでした。
そういう背景もあり、梅木は脅しでもしないかぎりストーキングは収まらないと決めつけるんだけど、啓吾は「本当に愛してるからこそ」という弁護士の言い訳を信じ、だったら彼女を苦しませるような事はすべきじゃないと懸命に説得します。
啓吾にも茉莉亜(加藤あい)という婚約者がいるんだけど、実は彼女もかつて恋人を轢き逃げで殺されており、今もその面影を引きずってる……つまり自分より死んだ元カレの方が好きなんじゃないかと、啓吾は疑心暗鬼になってる。
でも、彼女を本当に愛してるなら、信じるしかない。信じなきゃいけない。そんな自分のプライバシーまで吐露する啓吾に、心を打たれた様子の弁護士は「二度と彼女には近づきません」と約束するのですが……
もちろん、遊川和彦さんが描くキャラクターがそんな簡単に改心するワケがありませんw いや、実際ストーカーにそんな理想論は通じないでしょう。弁護士は性懲りもなく女子大生の部屋に侵入し、駆けつけた啓吾の前で無理心中しようとします。
「もう二度と近づかないって約束したじゃないですか! 俺は信じてたのに……」
「信じて? 自分の彼女のことさえ信じられないヤツが何を言ってるんだよ! 善人みたいな顔をして綺麗事ばっかり言って、結局キミは人が自分の言いなりになるのが嬉しいだけなんだ。人のことを守るフリして自分を守ってるんだ!」
痛いところを突かれた啓吾は発狂し、あやうく弁護士を絞め殺そうして、梅木に止められますw
梅木と長い付き合いの庶務係=筒井(若村麻由美)は、啓吾が若い頃の梅木によく似てると言ってました。今の啓吾と同じように誰よりも理想を信じてたからこそ、その反動で梅木はイカれた短足オヤジになっちゃったw
「おめえの愛なんて、ただ相手を束縛してるだけだ。人の心をがんじがらめに縛り上げ、自分の思う通りに動かして喜んでるだけだ」
梅木はもしかすると、啓吾にじゃなく若い頃の自分自身に言ってるのかも知れません。
「世の中、自分しか愛していないのに、人を愛していると勘違いしてるヤツが多すぎる。これで分かったろ? おめえも、怒りや憎しみで心がいっぱいになったら、人を殺すヤツだ。俺とおんなじだよ」
「……あんたなんかとは、絶対に違う!」
そうやって強がれば強がるほど、啓吾は梅木に近づいてるのかも知れません。そう言えば啓吾の足も短くなって来たような気がしますw
それはさておき、いよいよ第4話で黒川が出所して来ます。果たして梅木は、本当に彼を殺すつもりなのか?
「殺す。俺はその為にだけ生きてきた」
一方、ストーカー弁護士と梅木にパンドラの箱を開けられてしまい、どんどん足が短くなっていく啓吾は、第5話(最終回)で愛する茉莉亜を黒川に拉致され、いよいよダークサイドに足を踏み入れようとします。
果たして、最後に勝つのは憎しみなのか? それともやっぱり愛なのか?
今回10年ぶりに観直して、本作が『スター・ウォーズ』シリーズと非常によく似てることに気づきました。(本放映の時もそう言ったかも知れないけどw)
啓吾がルーク・スカイウォーカー、梅木がアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)、茉莉亜がパドメ(アミダラ姫)、そして黒川がパルパティーン(銀河皇帝)ですよね。
あと、この10年の間に私がハマった刑事ドラマの1つである『BORDER』('14年、小栗旬 主演) の最終回が、本作のそれと酷似してる事にも気づきました。LIMITとBORDER、タイトルに込められた意味もほぼ同じです。
『BORDER』の脚本を書かれた金城一紀さんはもしかすると、遊川和彦さんが生んだ本作に魅了されながらも、その結末には不満を抱いておられたの知れません。つまり、甘い!とw
そう書くと結末はほぼ判っちゃうけど、未見の方には是非、DVDを買うなり借りるなりして観て頂きたいです。それだけの価値が充分にあります。NHKオンデマンド等でも鑑賞可能かと思います。
前回も書いた通り、私は本作を'00年代刑事ドラマのベスト1、そして遊川和彦さんの最高傑作じゃないかと思ってます。遊川さんは同じテーマをジャンルを変えて繰り返し描いておられる気がしますが、結局のところ刑事物が一番合ってるんじゃないでしょうか?
武田鉄矢さん、森山未來くんにとっても'00年代のベストワークかも知れないし、黒川を演じた井浦新さん(私は本作で初めてこの俳優さんを知りました)もまた素晴らしい!
若いイケメン俳優がこのテのイカれた殺人鬼を演じると、大抵わざとらしくてワンパターンで見てられないもんだけど、井浦さんは違ってました。リアルなのかどうかは実際に殺人鬼と会わないかぎり判らないけど、多分こんな感じだろうなと納得させる実在感がありました。
無論、その演技を引き出した渡辺一貴・松浦善之助 両ディレクターの演出もエクセレントで、リスペクトあるのみです。
どうやらまだ、刑事ドラマは滅んでない。そう思わせてくれた、近年数少ない作品の1つです。(しかしもう10年経っちゃったんですね……)
セクシーショットは、第4話ゲストの純名りささん、第3話ゲストの黒川芽以さんです。
まるで大都会の黒岩軍団みたいです。
ところで今の若い世代の人はテレビ映画と言うジャンルを知っているのでしょうか?映画が36mmフィルム映像でテレビ映画が18mmフィルム映像、VTR映像は安っぽく感じます。フィルム映像の独特の質感あれがたまらなくいいんですよ。ヒーロー物が現在も頑張ってフィルム映像を貫き通しています。平成仮面ライダー初期の作品でハイビジョンと銘打ってVTR映像で放送してましたね。あれはフェイクでただのVTR映像でしたね(>_<)ストーリーの基盤がしっかりしてたからみてました。
昭和のテレビ製作陣が作り上げたテレビ映画、その最後の作品が風の刑事東京発!でした。今の時代に刑事魂を再び、殺伐とした世の中だから太陽〜スヒリッツが必要です。小栗旬、山田孝之、長瀬智也、米倉涼子、係長は佐々木蔵之介、課長は天海祐希、お茶汲みに広瀬すす(仮)所長に舘ひろし、このキャストで太陽〜刑事貴族のようなテレビ映画が製作されたいものです。