↑ 昭和35年頃冬 旭川市一条八丁目のバス停<「琴しぐれ」写真:尾崎弘司>
↓ 令和元年10月 旭川駅 石川啄木歌碑
<雪の故郷>
吾が故郷は北の海
雪の奥路になつかしき
心に思う真白地の
見渡す限りの美しきを
灰色空のかなたの
白銀の綿着も厚く
遙かなる大雪山は
ゆったりと眠りけり
夏は早瀬の石狩川も
重き衾に隠れ入り
細々と一筋を残しつつ
ゆるゆると流れけり
夜寒き雪降りの日
汽車は旭川駅に息づきぬ
鈴蘭燈の凍えつく光も
北国に哀愁のありき
雪に埋まる旭川を
馬車の通る鈴の音の
寒き夜空にシャンシャンと
橋の向うに鳴いて消ゆ
旭橋の欄干の上を
北風の吹き過ぎる
粉雪のまい落ちて
川面を辷り行けり
降り積る雪の街路に
長靴の跡の点々と
人のと絶えし旭川の
白き夜に残るなり
寒々と身に沁む夜は
熱酒雫を酌交し
雪国の旅路の果を
故郷と暫し慰さむ