『凍土の共和国』=《北朝鮮幻滅紀行》 (金元怍 著 1984年・昭和59年刊 亜紀書房) この本は、神戸の大倉山図書館で借りて2度読みました。その後手元に置いておきたくてネットで購入しました。きのう紹介した本のあとにこれを読んで強い衝撃を受けました。
「人間をいじめるのにこんなやり方があるんだ。なんと陰湿な犯罪だろう」と思いました。ユダヤ人強制収容所でのナチスの犯罪も、戦争での幾多の犯罪もひどいですが「かくも長く(何十年にもわたる)、陰湿な、〈人間の心〉への犯罪」は許せません。読み返すのは辛いですが、この本から30年たっても状況は変わっていません。何の役にも立たなくても、心を痛めるだけになっても、読み返してみます。
※ 著者の名前は仮名ですが、「怍」の字は違います。出なかったので似た字にしました。
北朝鮮に行くと「指導員」と称する者が一人一人に付きます。案内・監視する役目です。訪朝した人、昭和30年代に帰国した家族・親類を訪ねる人、みんなに。この指導員にワイロを差し出すのはもちろん当然のことです。
その指導員という制度が長年にわたっていますから《ジラス/イヤガラセ/ユスリ・タカリ/オドシ》が実に巧妙になっています。詳しくは本にゆずりますが、読みながらイジイジと心が痛みます。
北朝鮮から韓国に脱北した人50人に〈北朝鮮の生活についてアンケートをした本〉を読んだことがあります。それに「公開処刑を見たか」という項目があり、50人全員が「見た」と回答していました。
公開処刑は、柱に処刑する人を縛り、「銃殺」で行います。処刑される人は、少しでも後に残される家族のプラスになればと「金正日万歳!」とか叫ぶそうです。そんな人を処刑するのは人聞きが悪いと思うのか、いまは口に布を押し込んで叫ばれないようにしているそうです。元気な人が目の前で一瞬にして殺される。そんな場面を見たいと思わない。でも「見たくない」は許されない。全国民が見させられます。
恐怖心は生理的に骨身に浸み込みます。
イタリア人の書いた『アウシュビッツは終わらない』(朝日選書)は戦後出版された古い本ですが、検索してみたら、なんといまでも売ってあり、若い人に読まれているようです。ぼくの記憶ではこの本にたしか「ボロ布は反乱しない」という一文があった気がします。
飢えて死ぬ人がおり、いわれのない密告でも処刑される恐怖心を植え付けられ、毎週の反省会では「必ず〈自己批判〉して、〈他の人の欠点〉を必ず指摘する」ことが強制されます。がんじがらめで「心」を支配するあの国の「人間の心への犯罪」。
朝日新聞(3月19日・朝刊37面)にいま、〈脱北者への人権調査〉がシリーズで掲載されています。こんなケースが載っています。
平壌の北東部にある第14号管理所(収容所のこと)で生まれたシン・ドンヒョクさん(31)は17日、スイス・ジュネーブで自らの体験を詳細に語った。6歳から炭鉱で石炭を運び出した。逃亡を計画した母と兄は、「当時は家族の愛を知らなかった」という自らの密告で公開処刑された。「動物以下の扱い。動物の方が逃げる自由があるだけましだ」と話した。
「人間をいじめるのにこんなやり方があるんだ。なんと陰湿な犯罪だろう」と思いました。ユダヤ人強制収容所でのナチスの犯罪も、戦争での幾多の犯罪もひどいですが「かくも長く(何十年にもわたる)、陰湿な、〈人間の心〉への犯罪」は許せません。読み返すのは辛いですが、この本から30年たっても状況は変わっていません。何の役にも立たなくても、心を痛めるだけになっても、読み返してみます。
※ 著者の名前は仮名ですが、「怍」の字は違います。出なかったので似た字にしました。
北朝鮮に行くと「指導員」と称する者が一人一人に付きます。案内・監視する役目です。訪朝した人、昭和30年代に帰国した家族・親類を訪ねる人、みんなに。この指導員にワイロを差し出すのはもちろん当然のことです。
その指導員という制度が長年にわたっていますから《ジラス/イヤガラセ/ユスリ・タカリ/オドシ》が実に巧妙になっています。詳しくは本にゆずりますが、読みながらイジイジと心が痛みます。
北朝鮮から韓国に脱北した人50人に〈北朝鮮の生活についてアンケートをした本〉を読んだことがあります。それに「公開処刑を見たか」という項目があり、50人全員が「見た」と回答していました。
公開処刑は、柱に処刑する人を縛り、「銃殺」で行います。処刑される人は、少しでも後に残される家族のプラスになればと「金正日万歳!」とか叫ぶそうです。そんな人を処刑するのは人聞きが悪いと思うのか、いまは口に布を押し込んで叫ばれないようにしているそうです。元気な人が目の前で一瞬にして殺される。そんな場面を見たいと思わない。でも「見たくない」は許されない。全国民が見させられます。
恐怖心は生理的に骨身に浸み込みます。
イタリア人の書いた『アウシュビッツは終わらない』(朝日選書)は戦後出版された古い本ですが、検索してみたら、なんといまでも売ってあり、若い人に読まれているようです。ぼくの記憶ではこの本にたしか「ボロ布は反乱しない」という一文があった気がします。
飢えて死ぬ人がおり、いわれのない密告でも処刑される恐怖心を植え付けられ、毎週の反省会では「必ず〈自己批判〉して、〈他の人の欠点〉を必ず指摘する」ことが強制されます。がんじがらめで「心」を支配するあの国の「人間の心への犯罪」。
朝日新聞(3月19日・朝刊37面)にいま、〈脱北者への人権調査〉がシリーズで掲載されています。こんなケースが載っています。
平壌の北東部にある第14号管理所(収容所のこと)で生まれたシン・ドンヒョクさん(31)は17日、スイス・ジュネーブで自らの体験を詳細に語った。6歳から炭鉱で石炭を運び出した。逃亡を計画した母と兄は、「当時は家族の愛を知らなかった」という自らの密告で公開処刑された。「動物以下の扱い。動物の方が逃げる自由があるだけましだ」と話した。