メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督の作品、『パンズ・ラビリンス』を観ました☆
とっても悲しいファンタジー映画。
スペイン内戦をあつかっているので、残虐なシーンもあり、PG-12指定。
主人公の女の子オフェリアを1994年生まれのイヴァナ・バケロが好演しています。
題名の『パンズ・ラビリンス』を直訳すると、「パンの迷宮」。
”パン”というのはギリシア神話に出てくる上半身が人間で下半身がヤギの牧羊神。『ナルニア国物語』に出てくるタムナスさんの同類です。でも、『パンズ・ラビリンス』に登場するパンはどこか妖しい、迷宮の番人。
人間の世界に迷い出た地下の国のお姫さまを迎えるべく、地下の国の入口にあたる迷宮を守っているのです。
はかなく美しく悲しい物語…
父親が亡くなり、母親が再婚した相手は独裁政権の軍人。
主人公の少女オフェリアは、妊娠中の母親と共に、新しい父親の赴任地である山深い戦いの地に連れてこられます。
独裁政権により自由を奪われた人々。
反抗するレジスタンス。
簡単に奪われていく命。
そして、生まれてくる新しい命。
暗い影がおおう世界で、オフェリアは、まだ見ぬ弟に語ります。「この世界は悲しいことばかりだけれど、ママの笑顔を見ればあなたもママを愛するようになるわ」
しかし母親の再婚相手は、生まれてくる自分の子どもにしか興味がなく、オフェリアも、彼女の母親さえも冷たい目でみつめます。
もうオフェリアが細くて頼りなくて見ていられません!
そんな彼女が地下の国のお姫さまの生まれ変わりとして、地下の国へ帰るための三つの試練に立ち向かわなくてはならなくなります。
大きな木の根元に住むという大カエル。
描くとそこが扉になってしまう不思議な白いチョーク。
文字が浮かび上がり行く先を告げる魔法の本。
果たして”パン”の言うことは信じていいの?
血と泥と雨と銃弾。
妖精が飛び交う美しい地下の世界。
オフェリアは母親に訊ねます。
「何で再婚なんてしたの?」
大人たちの争いの前では、子どもたちはまったくの無力です。
”パン”をはじめ、地下世界の造形、色彩を抑えて表現された世界の妖しく美しいこと!
こういう映像表現は映画ならでわって感じです。
平和な時。戦争中。どんな世界に生まれてくるかを子どもたちは選べない。
すべては大人の責任なんですよね。
美しい映像とオフェリアの寂しさが印象的な映画でした。