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“ニックはコーヒーを飲んだ、ホプキンス流儀で淹れたものである。そのコーヒーは不味かった。ニックは笑った。ホプキンスの物語にいいエンディングが出来たというものだ”
~アーネスト・ヘミングウェイ『二つのこころのある川』/訳 ハヤト
喫茶店のマスターを夢見ていた友人がいた。彼は高校を卒業して暫くしてから、その夢を実現させた。
僕たちはよくその店に行き、彼をマスターと呼んでからかった。彼はかなり照れていたが、まんざらでもないような顔をしてみせたものだ。
彼は何事に対しても真剣な男だった。それは周囲の人間が気疲れしてしまうほどで、しばしば友人の間で笑い話のタネにされていたくらいだ。しかし本人は周囲のそんな意見を真っ向からはね返していた。
そんな彼が淹れるコーヒーも、真剣そのものの作業から出来上がっていた。彼は熱中するあまり、ペーパーフィルターの折り方まで研究した。交互に折ると流出のスピードが速くなり、抽出時間が短くなる。従ってあっさりした味となる。一方に重ねて折ると流出の時間が遅くなり、苦みや酸味といった豆の成分がじっくりと出て濃い味となる...。彼はそう結論づけた。
「お客さんの好みによって変えてるんだ」そう言って彼は誇らしげに微笑していた。
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我が家ではこのあいだ買ってきたイリーがなくなってしまったので、またいつものラヴァッツァになった。“オロ”ではなく“エスプレッソ”という苦めの豆を使っているのだが、イリーに比べるととても酸っぱく感じる。酸味があまり出ないように淹れることが出来ればいいのだが、きっと僕は彼ほど真剣にはやっていないのだろう。
追:この記事は『音風景日記: 気ままに日常を記録する雑記帳』“伝染るんです”~にトラックバック