陽光が薄くなって、 窓辺のベゴニアが血の気が失せたように白くなり、カランコエの厚い葉の上に落ちた。
今年初めての木枯がふいて、しがみついていた残り葉は天高く舞い上がる。
風が弱くなる時、巻き上げられた枯葉がくるくる回りながらゆっくり降りてくる。
この乾いた軽い葉を、左手で捕まえると字が上手に書けるようになるという。
そのころ低学年児童に習字の授業があり、硯で磨った墨汁で、一、二、三を習っていた。
手本の「一」の字がどうしてもうまく書けなかったから、校庭で真剣に枯れ葉を追ったものだ。
枯れ葉は、掌の温もりを、生き物のように感知して、いつもするりと逃げた。
だから私は、傘寿の今でも悪筆である。