故郷へ恩返し

故郷を離れて早40年。私は、故郷に何かの恩返しをしたい。

男と女のラブソング

2015-04-09 06:35:39 | 思い出話

お父ちゃんの口の臭いが好きじゃった。

亡き母が、高校生の私に言った言葉でした。
良く言うなと思ったものでした。

母が小さい姉を連れて、肥えたご担いで女の家に乗り込んで
玄関にぶちまけた。と姉から聞いた。
小金を持った父は、夜な夜なその頃珍しい自転車に乗って
通っておったとか。お前に似た男の子がおるらしい。とも。
やはり多感な高校生の頃の話である。

母は、父が死ぬ間際まで身体を拭いてやっていたのである。
父が亡くなったあと、家に帰った母は、突然居間の柱を切りだしたとか。
子供を連れて、実家にお世話になっていたかみさんから聴いた話である。
ようやく元の明るい母になったのは約半年後のことであった。

若い時に習った三味線を始め、カラオケに通い友達の輪の中に
入って行った。
八畳と隣の六畳の間いっぱいに習字の手習いを広げて、
どれがええじゃろかと問われた。
デイケアで、母が作った作品を私はたくさんもらいました。

脳の血管が切れて6年生きてくれた。
さすってあげる手は節くれだっていた。
縛られた紐をはずそうとする腕の力は強かった。

母は、生涯父を愛したと思う。
子どもの私にとって、どうして父が好きなのか分からなかった。

男と女のラブソング。
二人だけにしか分からないのである。

私は、この両親の前で、人をちゃんと愛することができたのか。
胸を張って、そうです。と言えるまでもう少しかかりそうです。

水を撒き 花を振りまき 折れた母

2015年4月9日
コメント
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