『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  168

2010-03-15 06:37:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おうっ、皆、よう集まってくれた。ありがとう。』
 彼は太陽を仰ぎ見た。この時代の誰もがする時のチエック方法であった。
 『エノスの浜に上陸したとき、そして、また、我々の存亡を賭けた、ポリメストルとの戦いにおいて、自分の思いとは裏腹に戦場で尊い命を失った強者たち、彼らは、家族であり、友であり、我々にとって大切な存在であった。只今より、彼らの葬儀を執り行う。では、統領、お願いします。』
 石の上のイリオネスがアエネアスに代わった。
 『このように皆が、この場所に集まってくれてありがとう。厚く礼を言う。イリオネスの口上にあったように、今、我々は、このように生きている。彼らの尊い命によって、我らが生かされている。彼らに感謝と賛美を贈り、冥福を祈ろう。只今より、彼らの葬儀を行う。イリオネス、松明を。』
 イリオネスは、赤々と燃えている松明をアエネアスに手渡した。
 松明を手のとったアエネアスは、うずたかく積み上げられた薪に火を点けた。これを合図に松明を手にした戦友、家族、友人たちが一斉に薪に火を点けた。彼らは、塚の周りを巡り歩いた。嗚咽を叫び、涙を流し、ひとにぎりの髪を切り、火中に投げ入れ、最後の別れと冥福を祈った。