『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  172

2010-03-19 09:05:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 また、大きな波を割った。彼は、身体のバランスを船のゆれに同調させて踏ん張った。と同時に懊悩と思考が入れ替わった。彼は改まった自分に気づいた。だが、まだ、心の中には暗雲が逆巻いていた。彼は、この暗雲が何なのかについて脳漿を搾った。胸をかきむしった。
 答に近づいている。あと一歩だ。あと一歩で暗雲を払うことが出来る。一歩、一歩、あと一歩、自分らしく踏み進んだ。暗雲が薄れていく、続いて、波を割る衝撃が来た。
 朝の光が目を射る。彼は、わだかまっている雲の切れ目からの光に気づいた。と同時に心の中の暗雲が吹き払われた。頭中、心中、胸中の暗雲は吹き払われたが、つぎは霧である。霧が沸いてきている。濃さを増していく。オキテスは、その霧と対峙した。
 彼は思った。霧は払わなくても晴れる。この思いには自信があった。霧が晴れれば、必ず、その向こうには、未来が見えると信じた。