第２章 トラキアへ ２４７

　『統領の言われること判りました。この辺り一帯の人口構成については、ただちに、他人に気づかれることがないように調査に当たります。山行きの件、喜んでご一緒します』
　『政りごとを行うと言うことは、難しいことだ。民族を率いていくと言うことは、あらゆる面に気を配らなければならない。イリオネス頼むぞ』
　二人は、とりでに帰りついた。
　アエネアスの砦『アエネーダナエ』の存在は、近隣の地域に広まっていた。
　アエネアスは、オロンテスを呼んで農作物の状況について詳しく訊ねた。
　『ところで、オロンテス、近いうちにトリタスの案内で付近の山と原野へ出向く、お前にも一緒に来てもらいたい。日時は、後日連絡する。都合はどうだ？』
　『それはいいことです。都合はいつでもつきます』
　彼は、傍らのイリオネスにも声をかけた。
　『二人ともしっかり聞いておいてくれ。もう、７月にはいっている。アーモンドの収穫時期が間近い。この砦を中心にオリーブとアーモンドの山野の自生状態を把握しておきたい。この山行きに同道するメンバーは、君たち二人とギアスだ。トリタスが案内してくれることになっている。山へ行く日は、まだ決まっていない、連絡が来ることになっている。武器の携行は、イリオネスとギアス、武器だとわからない様にして、持って行ってほしい。山野の獣についての備えだ』