『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  258

2010-07-20 07:34:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 草原に歩を踏み入れた。草はみごとに生い茂っている、草丈は胸にまで及んだ。潅木の茂みに比べると歩は進めやすそうではあるが、次の難儀が待っていた。身体の露出している部分が草の葉に触れて、ずたずたにかすり傷がついた。案内のキノンと荷役の二人は袖の長い着衣を身につけていた。アエネアスとトリタス、他の三人の露出部の擦り傷には血がにじんでいた。
 草原に入って小一時間ぐらいの地点からは、草丈も短くなり、擦り傷に悩むことはなくなってきた。一同の歩速は順調になってきた。
 見た目には丘陵は遠くはないが、歩いてみるとかなりの距離が感じられた。北東に向かっての草原の斜め横断である。約二時間くらい歩いて樹木の群生地のところに来た。
 キノンは、一行に少々休んでくれるように言いおいて、群生地の中に入っていった。
 突如、バサッ、バサッ、4、5回音がした。血しぶきがうっすらと風に舞うのが見えた。
 キノンが帰ってきた。手にぶら下げているのは、腕の太さの頭のない蛇2匹であり、切り口からは血が滴っていた。
 『皆さん、お待たせしました。あともう少しで丘陵のふもとです。そこには水の流れもあるはずです。まいりましょう』